釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

いよいよヘリコプター・マネーか

2017-10-25 19:17:46 | 経済
昨年6月27日、英国経済紙ファイナンシャル・タイムズ The Financial Times は「It’s time for investors to admit it: Abenomics has failed (アベノミクスは失敗である―投資家は、それを認めるべきときである)」と題する記事を載せた。「この3年間の企業収益増は、単に通貨安がもたらした結果に過ぎず、これから起こる逆流現象によって(すでにその兆候は出ているが)、さらに製造業を衰弱させて行くだろう。」と書いている。未だに輸出企業が日本の経済を支えていると考える政官財は円安こそが輸出企業の利益をもたらすと思っている。GDPに占める輸出企業の比率は20%にも満たないのにだ。円安はむしろ日本を売ることだ。大手大銀行やトヨタでさえ、今や実質株式の筆頭が外資となった。東京の不動産は中国に買い占められている。円安による安易な利益は企業モラルをも低下させることを加速させてもいる。モラル低下は東芝や神戸製鋼だけではない。さらに悪いことには日本銀行が福島第一原発事故を起こした東京電力や神戸製鋼の社債を買って支えている。日本の企業は責任を問われないだけでなく、社会への影響と称して、潰されない。まさに中国の国営企業と同じである。小選挙区制と言う基本的に憲法に違反した制度で勝利した首相はさらに「アベノミクス」を推し進めようとしている。昨年7月12日来日したベンジャミン・シャローム “ベン” バーナンキ Benjamin Shalom “Ben” Bernanke前FRB議長は安倍首相と対談している。バーナンキ前議長は「ヘリコプター・ベン」の異名をとる。思ったように回復しない経済を活性化するには空からヘリコプターで紙幣をばらまくように、社会に紙幣を大量に行き渡らせればいいとする。実態経済が期待した回復を見せず、物価目標2%も達成出来ない「アベノミクス」はいよいよヘリコプター・マネーに行き着くかも知れない。2015年 1月 5日のロイターReuters 通信はコラムで「日本は先進国初のヘリコプター・マネーを発動させるかも知れないJapan’s cash helicopter may be first to take off」と題する記事を載せている。国内とは違い、海外では「アベノミクス」への評価は低い。物価も実質賃金もGDPも低迷から脱せず、一部の不動産や株価などの資産価格だけが高騰している。究極のヘリコプター・マネーとは無利子の永久国債の発行となるかも知れない。現在はほぼ利子の限りなくゼロである国債となっているが、財政拡大を続ける首相にとって、先の金利上昇は懸念材料である。金利の1%上昇だけで消費税1%分の税収など吹き飛んでしまう(今年1月の財務省の発表では1%金利分は3.6兆円)。税収が増えなければ、政府の債務返済は困難であり、税収が増える経済の回復では金利も上昇する。要するに政府債務はすでに破綻状態になっている。それが顕在化するのを日本銀行が無理やり抑え込んでいるだけだ。日本の政府債務は今ICU(集中治療室)で人工心肺が取り付けられ、延命しているに過ぎない。ICUから出られる日は永久に来ない。政府債務の重症度があまりに高い。本来であれば2年前にすでに命を落としているはずであった。
稲架