釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「自然に容赦なく蹴飛ばされる」

2013-09-16 19:20:47 | 社会
台風18号のため朝から雨が降っていた。午後1時には釜石に土砂災害警戒情報が出された。次第に雨だけでなく、風も強まっては来たが、やはり、東北の台風は四国辺りの台風の経験を考えると、風が凄まじくはない。雨量は多くなっているだろうが、風による被害はあまりないだろう。出かけようと思えば出かけられる状態だった。しかし、あえて出かけることもないと思い、今日はほぼ一日家にいたが、近くの増水した川だけは少し見てみた。夕方には風も雨も治まって来て、久しぶりに西の空に夕焼けが見られた。嵐の後の夕焼けだ。 昨日、国内で唯一稼働中であった関西電力大飯原発4号機が定期検査のため運転を停止し、昨年7月以来、国内の商業用原発50基すべてが止まった。現在、北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力の12基の原発の再稼働申請が出ており、新規制基準による審査次第でまた稼働が認められる可能性がある。東京電力福島第一原発では未だに高濃度放射性物質を含んだ汚染水の漏出が続いており、その対策も目処が立っていない。付近の漁協は操業を停止している。地下水を介して海水も汚染されている。陸上の汚染についても福島第一原発事故直後から原発周辺の帰還困難区域で調査を続けている研究者たちがいる。残念ながら日本の研究者ではない。チェルノブイリ原発事故後、十数年にわたり同地域の放射線による生物への影響を調査して来たサウスカロライナ大学ティモシー・ムソー教授とパリ第11大学アンダース・メラー教授たちで、さらにフィンランドのユバスキラ大学タピオ・マッペス教授も加わっている。浪江町、双葉町、大熊町などの帰還困難区域では蝶や毛虫などの昆虫やネズミ、鳥が激減しており、ツバメにはチェルノブイリと同様の異変が羽毛や尾羽に見られている。ネズミなどは天敵である猫がいなくなっているため増えているはずなのが、逆に40カ所に仕掛けたワナに1匹もかかっていない。通常は10個の仕掛けに2~3匹はかかるものだと言う。また、ツバメも通常は50%の確率で元の同じ巣へ戻って来るはずが、帰還困難区域の3町では10%ほどにやはり激減してしまっていた。また、原発のある大熊町ではチェルノブイリも経験しているムソー教授でも経験したことのない高さの放射線が測定されたところがまだ残っていたりする。太平洋戦争中理化学研究所で陸軍の原爆開発研究「ニ号研究」を主導していた仁科芳雄を弟子に持つ長岡半太郎は同じく陸軍の科学雑誌で『原子核分裂を兵器に利用する批判』と言う記事を載せているが、彼は随筆で「自然に人情は露ほども無い。之に抗するものは容赦なく蹴飛ばされる。」と書いている。米国でさえ原発推進にブレーキをかけ始めている現在、日本は地震と津波によるあの原発事故を反省することなく、再稼働に向けて進み続けている。この怖さは神戸新聞が載せた福島第一原発の作業員のインタビュー記事を見ると歴然とする。この8月5日65歳で肺癌で亡くなった第三次下請けの電気設備技術者は、東北地方太平洋沖地震があった時、1号機にいた。稼働40年になる1号機は「重要器具は定期検査で交換するが、周辺の装置はそのまま。どんどん配管を増やし、防火剤を塗りつけるから、設備の重量は設計基準を大幅に超えていた」「建屋のコンクリートはずぶずぶでドライバーを当てると白い粉になった。鉄筋をモルタルで塗り固めるときも竹の棒で突っつくだけ。施工はひどいものだった」。そして、「地震発生時、老朽化が進んでいた無数の配管やトレーが天井からばさばさと落ちてきた。下敷きにならなかったのは奇跡。あれだけの破壊で『無事』なんてあり得ない」、「内部はすさまじい破壊ぶりだった」と語り、事故原因の電源喪失について東京電力が地震の影響はなかった、としたことを批判している。地震直後、1号機の冷却装置「非常用復水器」は作動せず、当直の社員は使い方を知らず、「すべてがメーカー任せだった」」とも述べている。この東京電力の状態は基本的に他の電力会社、他の原発でも今も変わっていない。この技術者は「同様の原発事故は今後も起きるだろう」と言っている。
釜石では今頃も桜草が咲く
我が国は 草も桜が 咲きにけり 小林一茶