人形と動物の文学論

人形表象による内面表現を切り口に、新しい文学論の構築を目指す。研究と日常、わんことの生活、そしてブックレビュー。

国立国会図書館採用試験「文学」平成22年独自問題について、その2。

2013-05-27 12:04:40 | 国語教育と文学
 つづきです。
 前の記事で書いたように、仮にⅠの終わりあたりから引用されていたとしたら、「内面」の「制度性」とは「言文一致」(の起源が忘却されること)です。ですが、設問には、具体的な作品事例に即して書け、とある。

 Ⅰのなかで分析されているのは、国木田独歩の『忘れえぬ人々』ですが、たぶんここで問われているのは、『日本近代文学の起源』を読んだことがあるか、ではない。かなり汎用性の高い理論ですので、どんな作品であれ、あてはめて考察することができるか、という能力が見られているように思います。ですから、何でも、卒論で扱う作品でも、あてはめて考えてみてください。こういう観点で「内面」の制度性に縛られている、という展開でもいいし、逆に、こういう観点から「内面」ではないと見られるが、それは研究者が「内面」の制度性に縛られているからだ、という展開でもいい。
 因みに国木田独歩と風景といえば、武蔵野の雑木林。道路計画のためになくなってしまうということで、最近小平市で住民投票が行われたことが想起されますね。解答に書くには難しいですが。

 論述の手順としては、引用文を200字程度で要約し、「内面」の制度制とは~と、ひとまず結論づけます。その上で自分が考察する対象について簡単に説明し、自分の意見を述べてください。

 私としては、こういう研究をやってたので、『源氏』のことを書くしかない!という感じですが。なかなかそこまでぴったりしたテーマのある人は少ないと思います。古典作品を対象とする場合、キーになるのは、かなの獲得(平安朝における一種の言文一致である)とか、風景の描かれ方。歌枕的なものと、柄谷の言う「描写」される対象、客観的な対象として見出された「風景」とがどう違うのかということ。それから近代的な遠近法との違い。などなど。
 近代文学を対象にしている場合は、そのまま当てはめて考察できると思います。
 ごくごく最近の、現代文学の場合は、また事情が違ってきてるかな。遠近法的な附置が変化してきてることに触れなきゃいけない。

 因みに、Ⅰのなかで漱石の文学論について取り上げられており、「風景画」についても言及されてますが、いま東京芸術大学大学美術館で、「夏目漱石の美術世界展」という特別展が開催されてますので、興味のある方は行って見てもいいと思います。
 

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