人形と動物の文学論

人形表象による内面表現を切り口に、新しい文学論の構築を目指す。研究と日常、わんことの生活、そしてブックレビュー。

シラバス案公開3:日本文学入門(授業構成案)

2015-01-29 20:45:21 | シラバス案
直前の記事で、これで就活用に作ったシラバス案は終わり!と書いたのですが、就活フォルダをいじっていたら「授業構成案」なるものが出てきました。
シラバスより簡単な様式で、詳しく書けるものではないので、あまり参考にはならないかもしれませんが。
せっかくなので公開しときます。

ちょっとイレギュラーな、全八回の授業。

――――――

【科目名】日本文学入門

【回のタイトル、回のキーワード】
第一回:(タイトル)日本文学とは何か
    (キーワード)日本文学 定義 レポートの書き方 剽窃  問いの立て方
第二回:(タイトル)論証方法
    (キーワード)レポートの書き方 先行研究 用例 『紫式部日記』
第三回:(タイトル)図書館を活用しよう
    (キーワード)レポートの書き方 図書館 さまざまな辞書  京極夏彦『鉄鼠の檻』
第四回:(タイトル)近代以前のジャンルと近代文学
    (キーワード)韻文 散文 フィクション ミメーシス
第五回:(タイトル)韻文と散文
    (キーワード)歩行 舞踏 『源氏物語』 尾崎翠『第七官界彷徨』 山尾悠子『夢の棲む街』
第六回:(タイトル)テクストと織物
    (キーワード)『源氏物語』 飛浩隆『グラン・ヴァカンス』  円城塔『道化師の蝶』
第七回:(タイトル)「内面」とは何か(1)
    (キーワード)内面 近代 遠近法 『源氏物語』 女三の宮
第八回:(タイトル)「内面」とは何か(2)
    (キーワード)描写 説明 『無名抄』 小説技法 最終レポート

――――――
こちらの大学からは、書類を発送して2~3日中に不採用のご連絡をいただきました(まだ締め切り日も来ていなかった)。
非常勤講師の公募だったのですけれども。
そんなに早くご連絡をいただいたので、もう決まってるのかな~?と思っていたら、締め切り日を過ぎてしばらくした段階で、再びまた同じ公募を出していたという…。
私、応募するときは採用されないものと思っておりますし、たいていのことには驚かないのですが、さすがにちょっとこれは失礼なんじゃないかと思いました。
ですので、まあ、失敗した就活書類として参考にしていただければと思います。

 * * *
おまけ:子犬ちゃん2匹&成犬1匹、まだ全然貰われていきそうにありません!


白い子犬:6月からいったん募集を終了しています。
ベージュの子犬:6月からいったん募集を終了しています。
白い子犬の母犬(手前):
母犬は7kg程度と小柄で大人しいです。顔も丸顔で幼い感じなので、子犬ちゃんたちより子犬みたいです。→2月3日に行方不明になり、2月5日に踏切事故で亡くなっていたことが、3月2日に分かりました。無念です。

シラバス案公開その2‐3:「日本古典文学講読」

2015-01-13 14:58:28 | シラバス案
こんにちは、少し時間がたってしまいましたが、むかし就活のために作成したシラバス案公開の続きです。
今年入ってからいろいろあって、ほんと空気読まない感じで申し訳ないのだけれども、いちおう全部公開しときます。
ちなみに「講読」と言う授業は、演習形式か講義形式かというカテゴリーではありません、とりあえず読んでいく、という意味合い。だから、「講読」という名前のついた授業、演習のこともあれば、講義のこともありますね。

――――――

■【授業科目名】「日本古典文学講読」

■【授業形態】講義(一部演習を含む)

■【到達目標及びテーマ】①平安時代に編纂された歌集である『紫式部集』と、大正・昭和初期の少女小説を重ね合わせて読むことで、古典に親しみを持つことができる。
②発表あるいはレポートにまとめることで、自分の意見をまとめてプレゼンテーションする能力を身につける。

■【内容】①『紫式部集』の研究史や特徴などを押さえた上で、担当者の読みを提示する。特に女友だちといることを好む感性に注目する。
②特定の和歌を取り上げ語釈や諸注釈の比較を行うことで、平安時代の和歌における表現技法や、基本的な研究の手法を学習する。
③希望者は授業中に発表し、それ以外の受講者は期末レポートを提出する。

■【成績評価方法と基準】出席及び授業態度:30%、
発表あるいは期末レポート:70%。
発表の評価基準(70点満点)
基礎点:35点
時間配分、プレゼンテーション技術(配点):15点
内容(配点):20点
期末レポートの評価基準(70点満点)
規定字数の6割以上書けている(基礎点):35点
文章表現及び構成(配点):10点
テーマ設定及び研究史の整理(配点):10点
新しい知見が見られる(加点):5~15点
*剽窃等が見つかった場合には、20~35点の減点となります。
**第一回目の授業において、詳しい評価基準を説明します。

■【テキスト】第一回目の授業において資料を配布する。
適宜ハンドアウトを使用する。

■【その他】受講者数等によって、授業日程が変更となる場合がある。

■【授業計画・学習内容と課題】
【第1回】(学習内容)ガイダンス(資料の配布、レポートの書き方及び評価基準、発表者の決定、担当部分及び発表順の調整、発表の方法、図書館及び検索システムの利用方法、索引類の利用方法)
(学習課題)(復習)資料を整理しておく。担当日程、担当部分を確認しておく。資料に目を通し、レポートで扱いたい歌を考える。
【第2回】(学習内容)紫式部の「エス」的感性 小演習:校異をとる(担当部分)
(学習課題)(予習)1番歌~20番歌まで目を通す。(復習)発表・レポートの準備を進める(~【第3回】)
【第3回】(学習内容)小演習:影印の翻刻、語釈、注釈整理(1番歌) 1番歌を例にとり発表のやり方を実際に示す
【第4回】(学習内容)2番歌、3番歌を例にとり発表のやり方を実際に示す小演習:影印を読む
(学習課題)(予習)担当部分の影印に目を通す(復習)授業中に終わらなかった部分を終わらせておく
【第5回】(学習内容)4番歌・5番歌の再解釈 小演習:語釈をする (発表する者は担当部分;以下同)
(学習課題)(予習)影印のコピーを読む。(復習)自分なりの意見を持つ。授業中に終わらなかった部分を終わらせる。(~【第8回】)
【第6回】(学習内容)6番歌・7番歌を読む。小演習:注釈整理をする
【第7回】(学習内容)8番歌・9番歌・10番歌を読む。小演習:問題点を見つける
【第8回】(学習内容)11番歌・12番歌を読む。小演習:問題点を検討する
【第9回】(学習内容)演習:13番歌・14番歌 各:発表時間:25分、質疑応答:15分
(学習課題)(予習)影印のコピーを読む。(復習)自分なりの意見を持つ。担当者は指摘された部分を修正し、レポートの準備をする。レポートを選択したものは、レポートのテーマを考える。(~【第14回】)
【第10回】(学習内容)演習:15番歌・16番歌
【第11回】(学習内容)演習:17番歌・18番歌・19番歌
【第12回】(学習内容)演習:20番歌・21番歌
【第13回】(学習内容)演習:22番歌・23番歌
【第14回】(学習内容)演習:24番歌・25番歌・26番歌
【第15回】(学習内容)まとめ。レポートについての最終確認
(学習課題)(復習)レポートを修正する。考えをまとめる。

――――――
これで就活用に作ったシラバス案は最後になります。
ちなみに、拙稿「『紫式部集』四番歌・五番歌の再解釈―女性同士のつながり」と関係のある内容になっています。
これからは、少しずつ実際に使えるようなシラバス案を作成し、ためていこうかな、と思っています。

今日が卒論、修論の提出日だった大学が多かったんですかね、提出された学生・院生の皆様、先生方、お疲れさまでした。
学部生、院生の皆様におかれましては、少しでも学問の楽しさを感じていただけたらと思います。これからの人生を生きる上での自信になるものであることを祈っております。

***
おまけ:里親募集中です

白い子犬:6月からいったん募集を終了しています。ベージュの子犬:6月からいったん募集を終了しています。
白い子犬の母犬(手前):
母犬は6.9kgと小柄で大人しいです。顔も丸顔で幼い感じなので、子犬ちゃんたちより子犬みたいです。→2月3日に行方不明になり、2月5日に踏切事故に遭っていたことが、3月2日に分かりました。とても残念です。




シラバス案公開その2‐2:「日本古典文学講義」

2015-01-02 13:51:09 | シラバス案
こんにちは。
数日前に公開したシラバス案(就活用にむかし作ったもの)公開の続きです。

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■【授業科目名】日本古典文学講義

■【到達目標及びテーマ】①『源氏物語』を中心とした日本古典文学と「内面」
「語るように書く」という理想が、書き手が内面をそのまま語ろうとする、と同時に読み手がそのまま感情移入しようとする欲望を生み出しながら、内面を作り出してきた過程に注目する。
②私たちの持っている感覚を当たり前のものと思わず疑問を持つ、学問的な発想を身につける。

■【内容】平安時代は遠く離れた昔だが、『源氏物語』の研究においては近代的な発想がみられ、ある程度そのような研究は有効である。それは『源氏物語』に近代的な発想と共通する要素があるからだろう。
そこで、①内面
②写実主義
③描写と説明
という観点から共通点を押さえた上で、なぜ、時代も状況も異なる文学作品において、同じような発想が見られるのかを考える。文字(かな文字=表音文字と漢字=表意文字の関係)や、書かれたものであることを意識した文章(漢字優位の文章)と語るように書く文章(かな文字優位の文章、言文一致)との関係という視点から、探っていきたい。

■【評価方法と基準】出席及び授業態度、コメントペーパー:30%
期末レポート:70%
希望者のみの特別レポート:加点25~50点(ただし、合計100点以上にはなりません。また、剽窃などが見つかった場合は、点数がなくなる場合もあります)

■【テキスト】(教科書)ハンドアウトを使用する。
(参考書)角川ソフィア文庫『源氏物語』1~10巻
秋山虔「若菜巻の始発について」(『源氏物語の世界 その方法と達成』東京大学出版会、1964年)、柄谷行人『日本近代文学の起源』(講談社学術文庫)、酒見賢一『語り手の事情』(文春文庫)、原克『書物の図像学―炎上する図書館・亀裂のはしる書き物机・空っぽのインク壷』(三元社、1993年)。

■【授業計画・学習内容と課題】
【第1回】(学習内容)ガイダンス(本講義の目的、レポートの書き方及び評価基準、課題、なぜ剽窃はいけないのか)
(学習課題)(復習)古典文学とは何か、文学とは何か、現代文学と古典文学は異なるのか(どう異なるのか)考える。
【第2回】(学習内容)近代口語文の成立 語り手とは何か? 夏目漱石の『猫』とホフマンの『猫』
(学習課題)(予習)夏目漱石『吾輩は猫である』の書き出し部分を読む。(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第3回】(学習内容)漢字かな混じり文の成立 『源氏物語』と写実主義 小レポート(1000字程度)①
(学習課題)(復習)自分なりの意見をまとめる。第2回あるいは第3回の内容で小レポートを書く。
【第4回】(学習内容)源氏物語』と「内面」① 研究史、内面に関わる語
(学習課題)(予習)「内面」という言葉を自分がどういう意味で用いているか考える。(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第5回】(学習内容)『源氏物語』と「内面」② 源氏と紫の上
(学習課題)(予習)『源氏物語』のあらすじを把握する。(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第6回】(学習内容)『源氏物語』と「内面」③ 女三宮
(学習課題)(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第7回】(学習内容)『源氏物語』と「内面」④ 宇治十帖の「内面」 小レポート②
(学習課題)(復習)自分なりの意見をまとめ、「内面」について小レポートを書く。
【第8回】(学習内容)『源氏物語』の「身を分く」「同じ身」「かはれる身」
(学習課題)(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第9回】(学習内容)心の中の部屋 森茉莉『甘い蜜の部屋』と『源氏物語』
(学習課題)(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第10回】(学習内容)後期物語と感情移入 国語教育・サプリメント小説やゲーム
(学習課題)(予習)自分が小説に感情移入するのはどのような場合か考える。(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第11回】(学習内容)描写と説明―鎌倉期の文学―
(学習課題)(復習)自分なりの意見をまとめる。
【第12回】(学習内容)パロディの文学 剽窃とは何か、小レポート③
(学習課題)(復習)自分なりの意見をまとめ、第8回~第12回のテーマの中から一つ選び、小レポートを書く。
【第13回】(学習内容)まとめ、和本の装丁
(学習課題)(復習)小レポートを整理する
【第14回】(学習内容)和本の装丁:各自の小レポートをまとめて冊子にする
(学習課題)(復習)冊子を完成させる。
【第15回】(学習内容)全体のまとめ、冊子を提出
(学習課題)(復習)自分の考えを整理する。

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このシラバス案では結構遊んでます。
むかし書いたものなので、少し情報が古い部分がありますね。
で、今思えばやっぱり詰め込み過ぎ。3回分くらいの内容をうすーくのばして15回でいい気がします。
小レポートも、小論文の感覚で1000字にしてみたのですが、200字くらいから始めて少しずつ伸ばしていった方がいいかも。
課題の出し方も、1テーマにつき一つずつ、というかたちじゃなくて、①問いを立てる、②先行研究を調べる、③文献リストを作る、④先行論文を引用するもの、注で触れるもの、あまり関係ないから引用しないものに分ける、⑤先行研究をまとめる…という風に段階を踏んでいった方がいいかな。
内容は、拙稿「女三宮のことば―『源氏物語』の時間と内面」、ブログ記事の「描写と説明について」と関係のあるものになっています。

シラバス案公開その2‐1:「日本古典文学演習」

2014-12-30 11:51:00 | シラバス案
前回の続きでむかし就活用に作成したシラバス案公開。
実際に非常勤講師などで授業をされている方の場合は、シラバスもたいてい公開されていて閲覧することができますが、一度も授業したことないと、こういうものをアピールする機会もないんですよね…
こちらも不採用でしたが、教育歴のない私を面接まで連れていってくれたシラバス案です。
こちらの大学は15回分ぜんぶ作成しなければならなかったので、一つの授業あたり1記事ずつ公開することにします。
表形式で「学習内容」と「学習課題(予習・復習)」を分けて書くかたちだったので、ブログ記事にすると非常に見にくい…。

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■【授業形態】演習

■【到達目標及びテーマ】『源氏物語』柏木巻、出産、生殖
①古典作品を読むときの基本的なスキルを身につける。
②発表を担当することで、プレゼンテーションの基本的なスキルを身につける。
③「常識」に対して疑問を持つ、学問的な発想を身につける。

■【内容】まず、『源氏物語』のあらすじ及び柏木巻の位置づけ、登場人物、主な問題点を整理し、出産・生殖を切り口とした担当者の読みを例に、文学研究の発想を学習する。
その上で、注釈と現代語訳、研究上のポイントのついたテキストを使用し丁寧に読んでゆく。
一人一段落程度を担当し、発表する(一回につき二人ずつ)。
発表内容①影印(コピー)の翻刻
②校異および校訂本文
③注釈整理
④現代語訳
⑤問題点

■【成績評価方法と基準】出席及び授業態度:30%
発表:35%(35点)
 基本的なフォーマットを守っている:10点
 時間配分、プレゼンテーション技術:10点
 内容:15点
レポート:35%(35点)
 字数、基本的なフォーマットを守っている:10点
 テーマ設定、研究史の整理:10点
 内容(面白さ、新しい知見など):15点
*剽窃などが見つかった場合は、20~35点の減点となります。
**詳しい評価基準は、第一回目の授業において説明します。

■【テキスト】(教科書)『源氏物語の鑑賞と基礎知識 柏木』至文堂、適宜資料を配布する。
(参考書)小嶋菜温子『源氏物語の性と生誕』有斐閣、2004年

■【その他】受講者数によって授業日程が変更となる可能性がある。

■【授業計画・学習内容と課題】
【第1回】(学習内容)ガイダンス(授業の目的、資料の配布、発表順の決定、発表の方法、レポート課題、レポートの書き方と評価基準)
(学習課題)(復習)資料を整理しておく。発表順と担当部分を確認し、各自で発表の準備を進めておく。
【第2回】(学習内容)発表の方法、柏木巻の位置づけと『源氏物語』のあらすじ
(学習課題)(復習)各自で発表の準備を進める。
【第3回】(学習内容)出産、生殖の歴史と『源氏物語』の出産嫌悪
(学習課題)(予習)『源氏物語』のあらすじを確認し、出産した人物を把握しておく。
(復習)自分なりに意見を持つ。
【第4回】(学習内容)現代文学の中の出産、生殖
(学習課題)(予習)現代において出産がどのように捉えられているか考える。(復習)自分なりの意見を持つ。
【第5回】(学習内容)演習①:柏木の贈歌
(予習)影印のコピー(該当部分)を読む。(復習)自分なりの意見を持つ。担当者は指摘された部分を修正し、レポートの準備をする。
【第6回】(学習内容)演習②:女三宮の返歌、柏木の返歌
(学習課題)第5回に同じ(~【第14回】まで)
【第7回】(学習内容)演習③:女三宮の出産
【第8回】(学習内容)演習④:女三宮の出産嫌悪と出家への思い
【第9回】(学習内容)演習⑤:出家の願いを口にする
【第10回】(学習内容)演習⑥:朱雀院下山
【第11回】(学習内容)演習⑦:女三宮出家①
【第12回】(学習内容)演習⑧:女三宮出家②
【第13回】(学習内容)演習⑨:女三宮出家③
【第14回】(学習内容)演習⑩:女三宮出家④
【第15回】(学習内容)まとめ、その後の展開、レポートに関する最終確認、質疑応答
(学習課題)(予習)レポートを書いていて分からないことをピックアップしておく。*作成中のレポートを持参すること。
(復習)レポートを修正する。

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今思うと盛り込み過ぎ(これで実際に授業するのは厳しいだろうな)だし、「剽窃などが見つかった場合は、20~35点の減点」って甘すぎるかも(笑)。
非常勤の仕事は来ないし、最近就活でもシラバス案書いてないけど、こういうものもちょっとずつバージョンアップしてかないといけないなあ…、と思いました。
私に授業させたいと思ってくださる方がおりますように!のんのん。

シラバス案公開その1:「古典への招待」「中古作品購読」

2014-12-30 11:13:59 | シラバス案
ふと思い立って、むかし就活用に作ったシラバス案を公開することにしました。
慌てて就活用に作ったものなので、今思うと日本語のおかしな部分や、乱暴な部分、ちょっと対象に合わないかな、と思う部分もありますが。参考までに。
結局不採用でしたが、教育歴のない私を面接まで連れていってくれたシラバス案なので、評価は悪くなかったんだと思います。
ブログのフォーマット上表などを張り付けられないため、ちょっと見にくいですが…

*この大学では全15回の授業のうち、4回目まで書くよう指定されていました。

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①授業計画 古典への招待(2年生配当)
■授業概要、方法等
一文一文品詞分解し、丁寧に逐語訳するのが高等学校における古典の授業であった。その結果、全体の流れが分からなくなってしまった人も多いと思う。しかし、文学作品を読むためには、全体の流れを把握しつつ部分に注目することが重要である。そのためには、問題意識を持ちながらテクストに臨む姿勢が大切である。本講義では、問題意識のひとつとして、妊娠・出産等生殖にかかわる意識をとりあげ、『源氏物語』を中心にいくつかの古典作品を読む。
 近年児童虐待が問題となっているが、バースコントロールが不十分であった時代には、子捨てや間引きが普通だった。身体的な苦痛や死亡率の高さを考えると、妊婦自身が出産を喜ばしいと思うことはむしろ不思議に思える。現在においても死の危険がある以上、個の生命よりも社会の存続を重んじる感覚がなければ肯定的に感じることはできない。女性史の分野においては、母性愛は近代になってつくりだされたものだと言われている。本講義では古典作品における妊娠や出産に対する否定的な感覚を中心に扱うが、現代社会における「母性愛」の問題にも敏感になることができる。
 授業は講義形式だが、適宜質疑応答を行う。                      
■到達目標 古文を楽しみながら大まかな流れをつかみ、自分なりの問題意識を見出すことができる。 

■教科書・参考文献
(教科書)授業中に資料を配布する。                        
(使用テキスト)角川ソフィア文庫『源氏物語』                     
(参考文献)小嶋菜温子『源氏物語の性と生誕―王朝文化史論』

■授業内容(第4回まで)
【第1回】ガイダンス、授業の進め方、レポートの書き方及び評価方法。
「古典」の定義。                                   
生殖に関わる歴史及び近現代文学における出産嫌悪について概観する。
【第2回】『源氏物語』以前。                            
『竹取物語』:かぐや姫が結婚せず昇天したこと、                            
『大和物語』155段:女君が妊娠中に入水したことに注目する。
【第3回】『源氏物語』① 
『源氏物語』における妊娠・出産の描写を概観し、女三宮が出産そのものをおぞましく感じ出産によって衰弱した「ついで」に死にたいと思うことに注目する。
【第4回『源氏物語』② 
女三宮と、子を産まないものの育てる紫の上、妊娠した時点では嫌悪するものの出産後子に対する「愛情」のようなものを抱く藤壺とを比較し、紫のゆかりと呼ばれる女君の問題として生殖を考える。

―――――

②中古作品購読(2年生配当)
■授業概要・方法等
『源氏物語』横笛、鈴虫巻を、注釈、現代語訳及び研究史のポイントが丁寧に説明されたテキストを使用し、購読する。これをとおし、物語の細部に着目しながら自分なりの読みを組み立てる力を身につける。
 具体的に読み進める前に、簡単なあらすじと研究史を学習し、自分なりの読みを展開するために、担当者の読みを参考にする。担当者は特に女三宮に注目してきた。研究史の中で、女三宮の登場が六条院世界(主人公である源氏や紫の上の世界。六条院は源氏が造った広大な邸宅)や物語のありようを変容させたと言われているが、女三宮は「内面」を語らない女君であると言われる。しかし、女三宮の心内語(心の中のことば)や心情に添った描写、会話文などは少なくない。それゆえ、なぜ女三宮のことばが「内面」と見られてこなかったのかを、源氏や紫の上のことばと比較しながら考える。 横笛巻、鈴虫巻に関しては、特に和歌表現(朱雀院と女三宮の贈答、源氏と女三宮の贈答)に着目する。
 授業は講義形式だが、適宜質疑応答を行う。
■到達目標 古文を解釈する能力を身につけるとともに、研究史を批判的に読む態度を身につける。一つ一つの表現に注意して文学作品を読むことができる。

■教科書・参考文献
(教科書)『源氏物語の鑑賞と基礎知識 横笛・鈴虫』至文堂
 適宜授業中に資料を配布する。

■授業内容(第4回まで)
【第1回】ガイダンス、授業の進め方、レポートの書き方、評価方法。
あらすじ、登場人物等の説明。『源氏物語』第二部の説明。
古典を「読む」ときの二つの立場。「内面」を切り口とした『源氏物語』の研究史。
【第2回】若菜巻。
柏木事件による変化に着目する。
結婚当初女三宮は思ったことを思ったまま口にしていたが、柏木事件によって「憂き身」の意識、源氏に知られることによって「われ」の意識が発生する。
【第3回】柏木巻。出家による変化に着目する。
出家場面および、女三宮が「もののあはれ知らぬ」ことに注目する。
【第4回】横笛巻①。教科書22~32頁2行
朱雀院から山菜が贈られてくる場面、女三宮と朱雀院の贈答を中心に読む。

――――――
ちなみに①の内容は拙稿「『源氏物語』の生殖嫌悪―女三宮の出産嫌悪を中心に」(『古代文学研究 第二次』第16号、2007年10月)、②の内容は「女三宮のことば―『源氏物語』の時間と内面」(『日本文学』2008年12月号)および「『源氏物語』女三宮の自己意識」(『日本文学』2009年9月号)と関わっています。