回覧板

ひとり考え続けていることを公開しています。また、文学的な作品もあります。

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6277-6280

2024年05月31日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6277
まず それがわからなくても
それをやっている
それで十分だということがあり



6278
それでも 〈それ〉をよくわかりたい
ということがあり
あれこれ思い悩むこともある



6279
〈それ〉がよくわかるなら
もっと気楽に 鼻歌でも歌いながら
それをやれるかもしれない



6280
あれこれそれの〈それ〉ではなく
〈それ〉そのものが
この手に手触りとともにしっかりつかめるなら


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6273-6276

2024年05月30日 | 詩『言葉の街から』
 詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6273
言葉のドアを押す
外国語みたいな
不明な音の流れがある



6274
〈よんがら もっから〉
意味はわからなくても
おぼろな像の気配がある



6275
「ブーバ・キキ効果」によれば
原初 言葉は
内臓感覚による語感があったものか



6276
赤ちゃんが言葉の通りを
よちよち歩き
あちこちなめ回しながらあーうー言っている


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6269-6272

2024年05月29日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6269
人通りで牛を見かけることはなくなった
信号機に従う車ばかり見かけるようになってしまった
それでも言葉通りには今でも牛が歩いている



6270
川で女たちがにぎやかに洗濯することはなくなった
今では洗濯機が黙々とこなしている
それでも言葉通りには今でも川で洗濯がある



6271
山で薪拾いもなくなった
今では新たな〈火〉に変わってしまった
それでも言葉通りでは今でも薪拾いがある



6272
今の人の手が届かない時にも
知らない何やかやがあり
言葉通りには時折不明の言葉が流れ着く


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6265-6268

2024年05月28日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6265
よく見知った人や仲間内以外では
そのひと言は難しい
言ってしまえば何かがグラリと変わる



6266
変わってしまった風景の中では
仲間内として
取り込まれてしまった私がいる



6267
人や組織に距離を置くこと
そうやって 目下は
批評や批判の自由を確保する



6268
もちろん会社などの現場では
上や下 指示に従う など
言うに言われぬ世界もあり


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6261-6264

2024年05月27日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6261
(キキキキキキー)と急ブレーキして
言葉通りから
いつもの言葉の顔を現すことがあり



6262
顔色のように言葉の表情も変わる
としても とにもかくにも
ひとりひとり言葉の顔を固守していることもあり



6263
遠慮したり気を使ったり
する必要のないところでは
言葉は解(ほど)けて気楽に振る舞っている



6264
タブーと自由気ままの間に
揺れながら歩いている
言葉たちもこの地に足留めされている


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6257-6260

2024年05月26日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6257
なかなか口にはしなかったけど
ぼくの若い頃の内心の口癖は
(どうでもいいや)だった



6258
生活する人以前の
靄(もや)に包まれた距離感から
正直にツッパッテいたか



6259
ところで生活する人の世界に下って
(どちらでも構わない)
ということが確かにある



6260
(アレさえ含んでいるなら)
(ソレが自由なら)
どちらでも構わない


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6253-6256

2024年05月25日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6253
(配慮はあっても
遠慮や打算はなく
秋空の空気の口調で言う) はい そうします



6254
(ブランド品か 高いか安いか・・・
どんな理由で選択してもいいけど
いい感じにフィットすること) これ ください



6255
(他人がどう評価しようと
ただ自分の目と手とフィリーングで
感じ分けてゆく) ああ みどりの風が流れている



6256
(強力な人工の論理の抗争に見える
海外の言葉と違って)
この島嶼(とうしょ)の葉裏のはにかみは なぜ?


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6249-6252

2024年05月24日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6249
生きものたちは自(みずか)ら問わない
風に溶けて
ある姿形自体を
黙々と生きている



6250
にんげんは そこから顔を出して
〈生きる意味とは何か〉とか
〈君たちはどう生きるか〉とか
何万年も考えてきた



6251
未だによくわからず
問答をくり返している
そうして ひとりひとり
時に手を休めて背中で無言の問答をする



6252
偶(たま)に問い詰めすぎて〈生きる意味はない〉
と世界を閉じてしまう者もいる
けれど 人が連綿と生きつづけてきたこと
自体がひとつの答えになっているように感じる


 詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6245-6248

2024年05月23日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6245
無心の生きものたちから
少しばかり外れてしまったにんげんは
自然に溶け込んだり自然の外に出たり忙しい



6246
たぶんそんな無意識と意識の橋を
知らぬ間に
行ったり来たりしている



6247
命の始まりも 人の始まりも
よくわからない
それでもわからない橋を今日も行き来する



6248
(あ 今ここで魚が跳ねた)
と気づいて
自然の外に立っているのである


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6241-6244

2024年05月22日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6241
時代の差し出すリズムに乗って
人はそれぞれの表情をして
日々黙々と出かけては帰ってくる



6242
そんな舞台では明るい照明の下
大多数は無心に
人形(ひとがた)に沿って感じ考え振る舞っている



6243
少し薄暗い舞台の袖には
フィシングメールの文案を
練っている者たちもいて



6244
人と人との関わり合いは
時に軋みも立てて泡立ち
叫びや事件として浮上してくる