[短歌味体 Ⅲ] らっしゃいシリーズ・続
204
ほんとうは作り元気かも
しれないが
飛び跳ねる魚の「らっしゃい」
205
無意味でも肌になじんで
ほのかにも
意味線上の「ラッスンゴレライ」
206
秋晴れの大気震わす
どんどん
どどんどんどん芯の言葉匂い立つ
[短歌味体 Ⅲ] らっしゃいシリーズ
201
抜けいくも言葉は生きる
時と場の
約束に守られ伸びゆく生命線(いのち)
202
ウォーターはワラァーでないと
圏外で
What do you meam ?返球来るらし
203
母ならば向かう子の言葉
受けとめて
あぶあぶ球に返球する
全体の註.「魚屋のらっしゃいの声好きで買う」(毎日新聞「万能川柳」2015.10.28)を読み、きっかけとして。
[短歌味体 Ⅲ] 微シリーズ
198
雨の中また小さな雨
降り始め
なじみの丘陵しっとり濡らす
199
朝早く〈アイムカミング!〉
と言いつつも
からだは秋の静かな日溜まりに
200
いつもならスルーする白線(せん)も
平均台
の上ならばゆらゆらゆらりん
[短歌味体 Ⅲ] なんにもない一日シリーズ
195
なんにも無い一日でも
何か有り
初めと終わりその道筋あり
196
ありありとイメージできない
場面でも
遠い静止も砂は流動する
197
なんにもない一日でも
時は流れ
みどり泡立ち消え積もりゆく
[短歌味体 Ⅲ]
192
どうせいは見極めにくい
動と静
芯の方から表情変わる
193
左足から進み出たのか
わからない
ささいなことのイメージ消失
194
何だっけあの名前は?
無数のない
の河原には砂の線ばかり
[短歌味体 Ⅲ] 音の根っこシリーズ・続
190
くる、くる止めようもなく
くるくるく
どこからともなくカムケイムカム
191
ダルだるまダルエスサラーム
ダルセーニョ
だるダルシマーどんダルベッコ
註.ぼんやりと電子辞書を引き眺めつつ。
[短歌味体 Ⅲ] 音の根っこシリーズ
186
りんりりん 燃える燐々
輪りん輪
鈴々走り風になびき凛
187
さわさわさわ 静かな沢に
揺れる渦
木々多々(さわさわ)沢ざわわん
189
暗やみの無色無音の
峠から
かすかな音色の下る?洞窟
[短歌味体 Ⅲ] 置き字シリーズ
181
各々の歳経る言葉の
年輪から( )
いろんな歩み方ふいと流れ出る
182
知りません(ね) 言葉の総量は
音に出ない
深い峡谷にまで及ぶ
183
(いいですよ)風に流れる
言葉ひとつ
ひとつ拾いながらまた風に流す
184
ええ。
(ああこれは 何度か通った
やわらかな
新茶を揉むみどり匂い立つ)
185
(私はやっていない
何と言い
何を掘り返そうとわたしはやっていない)
註.( )は、置き字。見るだけで読みません。
[短歌味体 Ⅲ] ナノシリーズ・続
178
ナノなので言葉の葉揺れ
瞬時に
揺れ伝わり新たな地に咲く
179
おぼろげな夢現の
境には
固まりゆく手前の言葉ナノ
180
どうナノ?こうナノ?そうナノ?
知らぬ間に
吹き寄せ絡む言葉の糸くず
註.ナノ(nano, 記号: n)は国際単位系 (SI) における接頭辞の一つで、以下のように、基礎となる単位の10-9倍(=十億分の一、0.000 000 001倍)の量であることを示す。
1ナノメートル = 0.000 000 001メートル
1ナノ秒 = 0.000 000 001秒(ウィキペディア「ナノ」より)
[短歌味体 Ⅲ] ナノシリーズ
175
人ひとり カラスの鳴いてる
聴こえてる
耳の内に響き下るナノ
176
ナノなので空耳かと
見上げれば
空渡る鳥 大空に耳
177
ナノなので空耳かと
ドア開ける
他人(ひと)の事務する顔の見える