回覧板

ひとり考え続けていることを公開しています。また、文学的な作品もあります。

短歌味体 Ⅲ 802-805 一粒のシリーズ

2016年04月30日 | 短歌味体Ⅲ

[短歌味体 Ⅲ] 一粒のシリーズ
 
 
802
一粒のすなの姿は
砂浜の
姿と違いひっそりとして
 
 
803
一粒のすなの滴は
干上がって
〈砂〉という乾いた言葉となる
 
 
804
一粒のそらまめも地に
下れば
芽吹き伸び上げ花結び実を付く
 
 
805
一粒は全体に繋(つな)がり
色褪(あ)せる
みどりくぐもる大いなる誤解


短歌味体Ⅲ 701-801

2016年04月29日 | 作品集

  短歌味体Ⅲ

短歌味体Ⅲ 701-703 感嘆詞シリーズ   2016年03月28日
短歌味体Ⅲ 704-706 言葉の表層からシリーズ  2016年03月29日 
短歌味体Ⅲ 707-710 言葉の表層からシリーズ・続 2016年03月30日 
短歌味体Ⅲ 711-714 言葉の中層からシリーズ 2016年03月31日
短歌味体Ⅲ 715-717 言葉の中層からシリーズ・続  2016年04月01日
短歌味体Ⅲ 718-720 言葉の深層からシリーズ 2016年04月02日 
短歌味体Ⅲ 721-723 言葉の深層からシリーズ・続  2016年04月03日  
短歌味体Ⅲ 724-726 はるシリーズ  2016年04月04日  
短歌味体Ⅲ 727-729 はるシリーズ・続   2016年04月05日  
短歌味体Ⅲ 730-731 はるシリーズ・続    2016年04月06日 
短歌味体Ⅲ 732-734 はるシリーズ・続 2016年04月07日 
短歌味体Ⅲ 735-737 はるシリーズ・続   2016年04月08日 
短歌味体Ⅲ 738-741 はるシリーズ・続  2016年04月09日
短歌味体Ⅲ 742-743 通り過ぎるシリーズ 2016年04月10日
短歌味体Ⅲ 744-745 通り過ぎるシリーズ・続  2016年04月11日
短歌味体Ⅲ 746-748 イメージ野シリーズ 2016年04月12日
短歌味体Ⅲ 749-751 イメージ野シリーズ・続  2016年04月13日 
短歌味体Ⅲ 752-753 2016年04月14日
短歌味体Ⅲ 754-757 ブーメランシリーズ 2016年04月15日 
短歌味体Ⅲ 758-760 ブレーメンの音楽隊シリーズ  2016年04月16日
短歌味体Ⅲ 761-763 ブレーメンの音楽隊シリーズ・続  2016年04月17日
短歌味体Ⅲ 764-766 ブレーメンの音楽隊シリーズ・続  2016年04月18日
短歌味体Ⅲ 767-769 イメージ論シリーズ・続  2016年04月19日
短歌味体Ⅲ 770-772 イメージ論シリーズ・続   2016年04月20日 
短歌味体Ⅲ 773-775 震災シリーズ 2016年04月21日
短歌味体Ⅲ 776-777  ほっと一息シリーズ・続 2016年04月22日 
短歌味体Ⅲ 778-780  重層シリーズ  2016年04月23日  
短歌味体Ⅲ 781-783  重層シリーズ・続   2016年04月24日  
短歌味体Ⅲ 784-788  重層シリーズ・続   2016年04月25日
短歌味体Ⅲ 789-792  農に出てシリーズ  2016年04月26日
短歌味体Ⅲ 793-796 張り合いシリーズ  2016年04月27日
短歌味体Ⅲ 797-799 一瞬シリーズ 2016年04月28日 
短歌味体Ⅲ 800-801 一瞬シリーズ・続  2016年04月29日 

 

 


  [短歌味体Ⅲ] 感嘆詞シリーズ


701
あっ 忘れてたと思い直して
気に留めても
しばらくすると晴天の空


702
あっ ととと 思い出して
しまったよ
できれば消し去りたい記憶


703
あらあら 困った風(ふう)でも
お腹には
柔らかな風流れ子を見る




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の表層からシリーズ


704
公人の乾いた言葉
春桜
灰ばかり舞い流れ寄せ来る

註.「花咲か爺」を思い浮かべつつ。


705
言葉に言葉積み重ね
徒労ばかり
汗滲み出し不毛の砂漠


706
はーいチーズ 呼び寄せられても
頑なに
表情を解かない春の




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の表層からシリーズ・続


707
表面を飾りに飾る
言葉たち
井戸は涸れても声はつややか


708
幻の読者をあてに
修辞
修辞修辞!かざりにかざる
 
 
709
舞い踊る修辞者たち
今もなお
俊成の桐の火桶の

 註.中世の歌人、藤原俊成は現実の姿としては冬、桐の火桶を抱きかかえるようにして苦吟したという。



710
肌寒い春の花びら
ひんやりと
乾いた井戸に降り積もりゆく




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の中層からシリーズ


711
いくらかは鏡ちらちら
見い見いし
用事顔にて言葉は歩む


712
鏡との静かな対話
くり返し
ぱたぱたするする装いもする


713
道々にふと湧き上がる
不安から
微妙に道ずれはずれゆくか


714
そんな印象言われても
身に覚え
ないと振り向く旅の途上




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の中層からシリーズ・続


715
不明でも不明のままに
下車せずに
桜咲く未明の駅を過ぐ


716
運ぶ荷ははっきりとは
わからない
駅を目指しているのはわかる


717
きみのはカッコいいなあ
身のふるい
立つはスモークの ダンスダンス!




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の深層からシリーズ


718
「山向かう」山にか山がか
もやの中
追いすがるは手肌の匂う


719
「山向かう」あいまい道を
進みゆく
もや立ち込むも手する感覚確か


720
たどられぬ言葉の岩肌
ひび割れて
下水(したみず)の方風匂い来る




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の深層からシリーズ・続


721
落ちて来て触れた感じに
湿り気の
膨らみつつ寄せ来る数波


722
井戸の底乾いていても
音もなく
後ろの気配で寄せ来るばかり

 註.井戸といえば、私の小さい頃は井戸を利用していた。ひんやり湿って冷蔵庫の役目も持っていた。村上春樹の作品に井戸の描写があったけど、彼は通りすがりではない井戸体験を持っているのだろうか。作品の描写は喩のようだったから井戸体験は不要かもしれないけど。



723
降って来るみどりの匂い
ほの明かり
背の方から自然と身よじる




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ


724
おだやかに花びら舞い
ゆらゆら
日のぬくもり放ち地に落つ


725
〈ああ〉〈うっ〉〈おお〉
寄せ来る
浸透する 流れ出す はる


726
言葉の圏外でも
はる
言葉に似た舟に打ち寄せ来る




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


727
おそらくは去年と今年
同じようで
少し違って咲き触れ触らる


728
遙か遙か はる以前があり
おそらくは
時間の果てに はる以後がある


729
べつに苦しくはない
今ここの
はるにまみれて ものみなすべて




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


730
暖かく膨らむ大気
あちこちに
芽吹きふくらむものたちあふれ


731
衣更えしてしまうように
自然に
背押し歩ます四月の風は




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


732
雨風に花も散るちる
ちるちるち
花が今散るちるちるちちる


733
花も人も散るは惜しまず
と上っても
見晴らす我に湧き流るるものの


734
目にすれば知らない扉
開いてて
うかれさわぎなみだのにじむ




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


735
あっぷっぷ はるというゆにつかる
どこがはるか
概念は言えぬただ肌を流れ下る


736
さあここぞと ちちんぷいぷい
はる真っ盛り
海が裂け風そよぐページへ変わらず


737
いちにーさん ダイブする はるは
ダンサーたち
引き連れ出迎えに来て居るか




  [短歌味体Ⅲ] はるシリーズ・続


738
初めて言葉の世界に
湧き立って
はる ハル ひゃる と舌転がる日


739
「春はあけぼの」 春ってそんなの?
こちらでは
ちょっと異国の匂いする


740
春 桜前線のように
列島中に
広まった日 いずれにしても春ですよ


741
大規模の気候変動に
暗黙の
春はどこか化粧顔の




  [短歌味体Ⅲ] 通り過ぎるシリーズ



742
側通る草々匂い
引かれる
おもい計量超えて みどる


743
春は発つ?(わかりやすいけど
違うような)
春 春は瞬時に舞台構成し 消失す




  [短歌味体Ⅲ] 通り過ぎるシリーズ・続



744
二度目には少し和らぐ
天候の
日差しのよう表情解けて見える


745
何度も眺めつつ行き来
していると
その木は (ここの木 ((そこの木 にもなってくる




  [短歌味体Ⅲ] イメージ野シリーズ



746
思いがけず知り合いに出合う
街角の
親しい記憶訪れて来る

註.「の」は、古語の(のように)の意味。


747
すべりそうに水底を歩む
水を切り
魚(うお)のぬるりに時々出合う


748
造花の川には入らなくなった
ふと湧き立つ
イメージの野は流れに揺れる




  [短歌味体Ⅲ] イメージ野シリーズ・続



749
木の葉がお金になるか
と世界を
脱皮して また信じ始める


750
木の葉揺れ小舟になって
すべり出す
星々を縫い突き進みゆく


751
「またこんどね」 言われた言葉
イメージ野
から消えずに時に明滅す




  [短歌味体Ⅲ] 


752
そうなんだ と身に染みて
ひとり
驚天動地裂けめくれゆく


753
師は逝きて (そうだったのか)
迫(せ)り出す
未知の風景に立つアーナンダ

註.「アーナンダ」は、シャカの弟子。




  [短歌味体Ⅲ] ブーメランシリーズ


754
クマさんのぬいぐるみと
仕舞われて
ずんずんずんと森の奥深く

 註.助詞「と」の用法は、「動作・状態などの結果を表す。『有罪―決定した』」。つまり、「となって」の意味。



755
森に「奥深く」があるのか
次々に
疑問符のブーメラン投げ放つばかり


756
急ぎ流れゆく雲の
合間には
クマさん再び夢に戻り来る


757
しんしんしん 深深深
夢の中
子どものようでも thin thin sin thin




  [短歌味体Ⅲ] ブレーメンの音楽隊シリーズ


758
ブレーメン 行ったことはないけど
ぼくもまた
ブレーメンの音楽隊さ


759
ブレーメン 修業して
つらい顔
沈めて歌う のではなくって


760
あそこでも彼方でもなく
(振り返る)
きみはいま・ここの ブレーメン




  [短歌味体Ⅲ] ブレーメンの音楽隊シリーズ・続


761
山高く上らないと
届かない
見晴らせない景色もあるが


762
手品でなくきみはわたしで
わたしは
きみだという共通の音 響く


763
奏でるは共通の音
と聴こえても
我が芯にふるえるビブラート




  [短歌味体Ⅲ] ブレーメンの音楽隊シリーズ・続


764
〈革命〉や〈かくめい〉と引き
絞り上り
詰める ことなくふんわりの着地?


765
しかしかし 大道無門
素人も
気ままに歩み気ままに演ず


766
何にもしてないやん!
と言われても
我は本流の流れに沿い抗う




  [短歌味体Ⅲ] イメージ論シリーズ・続


767
ああ そうか そうだよね 揺れる
バランス
絞り一気に小舟に乗る


768
小舟の乾いた板に
ぽつ ぽつ ぽ
つ滴の落ちて染み渡る


769
ひとりでに進んでゆく
小舟には
青い心の滴拍車を駆ける




  [短歌味体Ⅲ] イメージ論シリーズ・続


770
海進、海退 (きっと
世界の
終わり) に追われ 地を上り下る

 註.「海進、海退」
人の小さな生涯の時間を超えた、とても大きな時間のスケールでの環境の変動。縄文時代の海進とその後の海退。
「約9,000年前からの急激な海進と約6,000年前~5,500年前の最大海進期を経て現在に至っています。最終氷期極相期以後の海進を縄文海進といい、海が最も陸地内部まで侵入したのが約6,000年前~5,500年前の縄文時代(早期末~前期)であったことからそのように呼ばれています。」(「地震・防災関連用語集」http://www5d.biglobe.ne.jp/~kabataf/yougo/B_nendai/nendai_jyoumon_transgression.htm)



771
姿形は変わっても
イメージの
遙か深みからイメージ走らす


772
自然の挙動不審に
揺れ揺られ
嵐の中の小舟怒りぶつかりゆく

 註.
柳田国男が書き留めていたが、柿の木などがよく実を付けるように、実を付けないと傷つけるぞなどの呪文を唱えつつ木をちょっと傷つけたりする、そんな自然に対する太古の心性と似通っているか。この場合は、呪文ではなくどうしようもない理不尽さの思いからの怒り。





  [短歌味体Ⅲ] 震災シリーズ


773
くつろぎの椅子に座る
瞬間
予感染みだし黒々と揺れる


774
やわらかな椅子変じて
液状化
黒い砂となりからだの奥へ


775
ずんずんと揺さぶられても
雨濡れた
木の葉の揺らぎこころを下る




  [短歌味体Ⅲ] ほっと一息シリーズ・続



776
土払い手袋脱いで
椅子深く
腰しずめて静まる時の


777
ああ今日も一日の波
静かに
穏やかに退いていく夜




  [短歌味体Ⅲ] 重層シリーズ



778
はい はい。(小石の落ちて
波紋の
広がりゆく 見ている)ええ。


779
月出てる、とってもきれい。
そうだね。
(気がかりの影まんまる月にかかる)


780
階段を上っていく、
(今誰かの
視線触れ来た)夕暮れの街。




  [短歌味体Ⅲ] 重層シリーズ・続


781
自分のこと考えていても
他人が
重なってきてマジリアーニ

註.「マジリアーニ」は、画家モディリアーニとその絵を少し意識した。


782
こうするよと心積もり
していても
場面に立つときみは変貌す


783
作者・語り手・登場人物がいて
物語は
重層する色合い放つ




  [短歌味体Ⅲ] 重層シリーズ・続



784
今年も作る竹の子ごはん
一年ぶりの
思い昨年に重ねている


785
竹の子とこんにゃくと
鶏肉と
椎茸と小さく刻んで炒め合わせる


786
さとうしょうゆ酒入れて
具を作り
酢振りのごはんと混ぜ合わせ


787
それぞれ皿に注いだら
仕舞いに
金糸卵を振りかけ出来上がり


788
複雑になってしまっても
太古の
シンプルな料理に思い重ねる




  [短歌味体Ⅲ] 農に出てシリーズ



789
農に出て下ろし立ての
ステンレス鎌
スパン スパンと草刈り進む


790
何度もくり返してると
ビミョウに
切れ味がスパスパと曇りゆく


791
空(チュン チュン)雲(チュン チュン チュン)
風(ホーケキョ)
晴れ(チュン チュン(ゲコゲコ)チュン)


792
くたびれて家帰り着くと
充足の少し重たい
からだの流れ言葉のドアは閉じて




  [短歌味体Ⅲ] 張り合いシリーズ


793
手を見ても猫類ならば
闘志燃やす
目まんまるに燃え始めてる


794
我に没入 (jump) 飛びかかる
爪出てる
あぶないあぶない (おいおい)


795
人みたいに目合わせ細めたり
配慮して
爪を収めたりもするけれど


796
じっとして内向きに丸く
なっている
今きみはどんな世界に浸かっている?

註.NHK Eテレのねこのうた(言葉+音楽・歌+映像)を意識して。・・・ううん、負けてる?

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「あたし ねこ」の歌詞(NHK Eテレ「0655」)


あたし ねこ
あたし ねこ
ここ あたしんち
ここ あたしんち

これ いつものごはん
これ スペシャルごはん
それ 大好きおもちゃ
それ 落ち着く寝床

あたし ねこ
この人 飼い主
この人 ご飯をくれる
この人 遊んでくれる

あたし ねこだから
人の言葉わからない
あたし ねこだけど
この人の気持ちなぜかよくわかる

あたし ねこ
あたし ねこ
あたし ねこ
あたし ねこ

https://www.youtube.com/watch?v=X0Y8q0x_yjw





  [短歌味体Ⅲ] 一瞬シリーズ


797
一瞬の偶然と
必然の
哀しい出会い流れを切断す


798
一瞬は微分のようで
全ての
有り様の今として現前す


799
一瞬の表情には
歩み出た
自己と引きこもる自己と混じり合い




  [短歌味体Ⅲ] 一瞬シリーズ・続


800
宇宙から見て一瞬
と言っても
かげろうも人もその内を生きる


801
樹齢数千年も
宇宙から
見ると一瞬 時間の木の香の匂う


 


覚書2016.4.29―芸術から

2016年04月29日 | 覚書

 覚書2016.4.29―芸術から


 大きな時間の流れの中、芸術というものが、その始まりの太古からその本質をくり返しながら姿形を変えて複雑になって、現在の迷路のような芸術の姿があると見なして考えてみる。


 現在では芸術は、美術、音楽、舞踊、演劇、映画、文学など各分野に分かれ、さらにそれぞれの中でも、例えば文学の中に大別して詩と小説があり、その中でもさらに詩には短歌・俳句・自由詩などがあるというように、限りなく細分化の道を歩いてきている。(これは芸術以外の全ての分野にも当てはまる)したがって、わたしたちは深く関心を持っていない分野に関しては、入りこんで簡単に論評してみるというわけにはいかない。


 したがって、現在の芸術の渦中から見渡せば、世界はそれぞれに専門化された近寄りがたい迷路のような構築物に見える。しかし、始まりの芸術は、太古の壁画や太古から受け継がれたような音楽・舞踊などを見たりすると、おそらく各分野に分かれることなく融合的であったはずである。


 それに、人類の生み出し積み重ね来た本流の底流に流れているのは、割とシンプルな欲求や願望として取り出すことができそうに思う。それが時代時代によって神話に向かい神を呼び寄せたりする意識や世界に対する祈りや信や願望など様々に姿形を変えてきていたとしてもである。


 その底流に流れる、芸術の起源の太古から現在まで通して言える芸術の本質は、この短い生涯という時間としても限られた世界で、個や他人との関係的な世界でよりよく生きようという意志の表現だと思う。現在の言葉で言えば、それは少し概念的すぎるけど自由(美)と言えるかもしれない。このように、わたしたちは芸術なら芸術の本質としてはだれでも取り上げ、論じることができると思われる。


 現在は芸術でも迷路の果てまで来ているように見えるけれど、人間は大きな歴史の段階で考えれば、ある方向に突き進んでは内省し、また包括的に本質を捉え返すというようなことをくり返してきているのかもしれない。そうして、現在はその捉え返しの時期に当たっているように見える。このことは、芸術に限らず政治や経済でもそうであり、あらゆる分野について言えることだと思う。


 ところで、芸術に関して補足すれば、芸術の表現でこれでもかというほど登場人物の悪(業)が描かれるということがある。先に述べた「自由(美)」ということには当てはまらないように見えるが、作品の表現がその深みにおいて志向するのは、意識的あるいは無意識的な自由への欲求と見なせるだろう。つまり、人間の負性を徹底的に追究する過程には自由への欲求が潜在していると見なせるように思う。


 また、太古から現在の方へ、生活意識として個の意識が先鋭化してきている(一方に、公が大事という復古イデオロギーも存在するが、わかりやすく言えば、それは自分中心ということ)のと呼応するように、芸術は個の意識が中心を占めるように変貌してきた。芸術表現は現在では個の内面世界に終始するようになって、そこでの解放感の獲得ということが大きな動機に見える。しかし、作者たちもまたわたしたちが生きるこの社会と無縁であるわけではない。社会の方に引き寄せてみれば、芸術表現の作者たちは、生き呼吸するこの社会をその秩序意識のようなものとして感受し、意識的あるいは無意識的にそれらへの親和や異和を作品中に散りばめているはずである。おそらくは生き難さの孤独な表現を通して、ひそかな結合手をわたしたち読者(観客)の方に伸ばしていると言えるかもしれない。

  (ツイッターのツイートに少し加筆訂正しています)


短歌味体Ⅲ 602-700

2016年04月28日 | 作品集
  短歌味体 Ⅲ   日付
短歌味体Ⅲ 602-604 グローバルシリーズ   2016年02月25日
短歌味体Ⅲ 605-608 春シリーズ   2016年02月26日
短歌味体Ⅲ 609-611 言葉の渡世シリーズ・続   2016年02月27日
短歌味体Ⅲ 612-614 ほっと一息シリーズ・続    2016年02月28日
短歌味体Ⅲ 615-618 百人シリーズ  2016年02月29日
短歌味体Ⅲ 619-621 音遊びシリーズ 2016年03月01日 
短歌味体Ⅲ 622-624 百人シリーズ・続  2016年03月02日 
短歌味体Ⅲ 625-627 わかれ目シリーズ  2016年03月03日
短歌味体Ⅲ 628-630 わかれ目シリーズ・続  2016年03月04日
短歌味体Ⅲ 631-633 物語論 シリーズ・続 2016年03月05日
短歌味体Ⅲ 634-636 見てるだけシリーズ 2016年03月06日
短歌味体Ⅲ 637-640 即興シリーズ 2016年03月07日
短歌味体Ⅲ 641-643 ずれシリーズ 2016年03月08日
短歌味体Ⅲ 644-647 どうしたものかシリーズ   2016年03月09日
短歌味体Ⅲ 648-650 どうしたものかシリーズ・続  2016年03月10日
短歌味体Ⅲ 651-653 即興シリーズ・続  2016年03月11日
短歌味体Ⅲ 654-656 即興シリーズ・続   2016年03月12日
短歌味体Ⅲ 657-659 即興シリーズ・続   2016年03月13日 
短歌味体Ⅲ 660-662  シミュレーションシリーズ  2016年03月14日
短歌味体Ⅲ 663-665  シミュレーションシリーズ・続  2016年03月15日
短歌味体Ⅲ 666-668 即興シリーズ・続  2016年03月16日 
短歌味体Ⅲ 669-671 即興シリーズ・続   2016年03月17日
短歌味体Ⅲ 672-673 物語シリーズ   2016年03月18日
短歌味体Ⅲ 674-675   2016年03月19日
短歌味体Ⅲ 676-678 言の葉シリーズ  2016年03月20日
短歌味体Ⅲ 679-681 言の葉シリーズ・続   2016年03月21日 
短歌味体Ⅲ 682-684 入口シリーズ  2016年03月22日 
短歌味体Ⅲ 685-687 グローバルシリーズ・続   2016年03月23日 
短歌味体Ⅲ 688-690 入口シリーズ・続  2016年03月24日 
短歌味体Ⅲ 691-693 世界視線シリーズ  2016年03月25日 
短歌味体Ⅲ 694-696 誰にでも通じるかなシリーズ   2016年03月26日  
短歌味体Ⅲ 697-700  2016年03月27日

 

  [短歌味体Ⅲ] グローバルシリーズ


602
風吹き来るブローブリュー
ブロウン
世界中を巡りに巡り


603
方々の土は言葉の
花開き
夜は岩盤の同一夢を見る


604
手を出してネコと遊ぶ
つもりが
思わぬ所(赤)ズキズキズッキン

註.(赤)は、置き字で読みません。




  [短歌味体Ⅲ] 春シリーズ


605
生き物はみな感知する
崩れ出し
押し寄せ来る柔らかな春波


606
なみなみと注(つ)がれてなくても
下水(したみず)の
ようようと染み渡る春波


607
春波寄せものみなすべて
肌ふるる
耳目より速く染み匂い立つ


608
つっぱる根がはる芽がはる
手がはる
ふくよかにはる春の岸辺




  [短歌味体Ⅲ] 言葉の渡世シリーズ・続


609
言葉にムチ当てなくても
自然に溶け
響き合い眠る静かな部屋がある


610
走り出しギャロップになっても
手綱締め
〈あい〉が〈愛〉に急変はしない


611
歩み出す ぶんぶんぶん
歩みは続き
〈ぶんぶんぶん〉言葉の路に入る




  [短歌味体Ⅲ] ほっと一息シリーズ・続


612
実際に穴掘っていたら
あ、横道も
あるじゃん、ふいと道が開ける


613
自転車に初めて乗る
知らなかった
こんなにも柔らかな風の


614
人の世はあくせくあくせき
自力の走法
宇宙では他力の人間(ひと)よ




  [短歌味体Ⅲ] 百人シリーズ


615
〈あっ 火の鳥だ〉と耳捉えても
ひとりは
後ろへ駆けゆきひとりは盆栽に


616
〈みんな知ってるよ〉と耳にしても
百人
みんなが知ってるとはかぎらない


617
〈避難せよ〉と警報出て
でんぱする
ひとりは山へひとりは川へ


618
ひゃくにんの濃度及ぶよ
島々に
等質の宇宙巡るように
 
註.「世論調査」というものをちらり思い浮かべて。




  [短歌味体Ⅲ] 音遊びシリーズ


619
いちごにごさんご量り越え
日差し赤
赤夕日の海に沈みゆく


620
ぷるぷるとあまえび淡く
照り映えて
ふれる視線はあまく折れ曲がる


621
かまくらの灯り見てると
くらくらと
おもいは飛ぶよ「北の国から」




  [短歌味体Ⅲ] 百人シリーズ・続


622
百人の匂い立つ色
一色(ひといろ)も
千差万別(いろいろ)あり千変万化(めまぐるしい)よ


623
色々と色決めかねて
とりあえず
揺れ揺られつつ苦海に舟出す


624
街路には服も色々
咲き出して
百人町も華やぐ春は




  [短歌味体Ⅲ] わかれ目シリーズ


625
なべの中だいこんやにんじん
しゃべってる
とってもふしぎとは思わなかった

註.小学校低学年の頃、図書室での映写の授業だったと思う。まだ幻灯機と言ってたか。


626
いつの間にかサンタクロースは
ベール溶け
三太苦労す物語の始まる


627
あの一縫い余分なかったら
はるうらら
さらさらさらと歩み過ぎたのに




  [短歌味体Ⅲ] わかれ目シリーズ・続


628
人はみな生まれ出るより
わかれ目の
峠を越えこえを限りに内向す


629
越えゆけば後振り返る
わかれ目は
際だってイメージばかり細る


630
大人になり小学校に踏み入って
座ってみた
椅子の異和感例えようもなく




  [短歌味体Ⅲ] 物語論シリーズ・続


631
幻の時空を自在に
飛翔する
と見えて主の引く手に付き添う


632
造花でも滴したたる
花のように
幻の朝が降りて来る


633
深みからふかいふかい殻
ふるえる
突き抜け来る無意識の叫び




  [短歌味体Ⅲ] 見てるだけシリーズ


634
見てるだけナノなのにざわ
ざわざわわ
目の差し伸べるじれったいぞ〈手〉


635
見てるだけと言ってもずん
ずんちゃちゃ
奥深い部屋でステップを踏んでいる


636
見てるだけでさざ波立ち
草なびき
涙に滲(にじ)む丘陵(おか)に静かに立っている




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ


637
ほんとはかんたんなこと
なのぬねに
始まり遙か糸糸糸の


638
一言が道案内の
面倒さ
に入り込んで前前右……


639
一言が道案内の
面倒さ
迷い込んでメドゥーサ!


640
閉じていく「異議はないですか」
吸い込む
風圧に黙って踏み耐えている




  [短歌味体Ⅲ] ずれシリーズ


641
普通に声も言葉も
出ているが
ふと気づけば手足そろって歩いてる


642
銀行員じゃないんだから
十円
ぐらいちゃちゃちゃのちゃ鼻歌歌う


643
銀行員になったつもりで
アジアの
軍隊の行進を観てしまった




  [短歌味体Ⅲ] どうしたものかシリーズ


644
今年は40個だけの
まばらな
夏みかんどうしたものか

 註.
父の遺した果樹のひとつである一株の夏みかんの。何年か放っていたが、ここ五六年収穫して夏みかんジャムを作っている。例年は100個ほど夏みかんがなっている。



645
夕暮れにどうしたものか
カーナビ
なしの手作業に霧中(むちゅう) あっ月。

註.農作業していて。


646
飢饉がイナゴの大群のように
伝播する
救荒作物(あれ)でいつまで……どうしたものか

註.遠い時代を思いつつ。


647
プリクラでつるつるつるんと
写っても (しょぼ)
まだまだまだだどうしたものか




  [短歌味体Ⅲ] どうしたものかシリーズ・続


648
歯が痛む世界は一色
赤々と
安らぐ椅子を奪い続ける


649
知らぬ間にトゲトゲ波は
暗転し
痛みの記憶夢に溶けてる


650
約束の日にちまでには
そこに立つ
加速加加速減中加速




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


651
鼻歌のしらずしらずの
角曲がり
あらあ こんなとこにこんなものが


652
ええっとね ミーちゃんはね
マーちゃん
ミーちゃんのね マーちゃんミー


653
庭に来る鳥のしぐさの
今日はまだ
みかんがないねと言ってるような




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


654
ああ そおか そおだったねえ
見上げれば
寒空遥か鳥の飛びゆく


655
椅子からふっとずり落ちた
心は今
はない柱時計(とけい)の振り子と揺れる


656
シーソーのガッツンする
ことのない
揺れ揺らる朝は春の微風の




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


657
外見にはなんてことない
カップでも
共に山越え小皺もある


658
訪れる他人(ひと)には圏外
見え聞こえ
の向こうにはなだらかな丘陵地(おか)の


659
岩ないと伝わらぬ水
があり岩
なくてもあっても伝わる水の




  [短歌味体Ⅲ] シミュレーションシリーズ


660
本番のずっと前から
セリフに入り
しぼんだ風船と成り果て休む


661
ヒコーキに乗ってる積もりが
シームレス
危うい岩肌通り抜け出る


662
紙を次々に折り畳む
だんだんと
苦しさ増すよ 山登り詰む




  [短歌味体Ⅲ] シミュレーションシリーズ・続


663
小さい子がママゴトしてる
ぶつぶつと
何か唱えつつ手足動かす


664
ええっと…司会が言って
次の次
まずは「おめでとう」……そんでそんで


665
知りません十年後(さき)のことなんか
保険の
確率分布の滲んだ手の伸び来る




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


666
おお寒は記憶の方へ
退いて
春の花びら舞い落ち始む


667
衣更え近くなりなりて
蟻さんの
手こする音の聞こゆるような


668
蟻さんの不明の高度
よじ上り
幻の世界線を拡張す




  [短歌味体Ⅲ] 即興シリーズ・続


669
スピードを上げても伝う
漂い
流る朝の気配に「おざーす」


670
異国語は知らず知らずに
「しゃらっぷ」
こちらの軒下重力下


671
じゅげむの魂の地形
たどり来て
ゆっくり腰上げ「彼は」と語り出す




  [短歌味体Ⅲ] 物語シリーズ


672
明け方に鶏鳴く声は
消え果てて
失意の内に幻聴する者ある

 註.新聞の事件の記事を読みながら、聖書のイエスの予言思い浮かべつつ、不可避の悪ということを思う。



673
ひとつ道へ羊のように
促されるも
心の地面にはただ異邦の文字の

 註.「私の胸の奥の白絹に、なにやらこまかい文字が」(「父」太宰治)を思い浮かべつつ。





  [短歌味体Ⅲ] 


674
お腹の深みの方から
声は出さない
朝 曇り 今日もまた舟を出す


675
やわらかな雨に濡れる木々
や草花の
ゆったりと飲む朝のコーヒー




  [短歌味体Ⅲ] 言の葉シリーズ


676
ぐるぐると巡りに巡り
ふいと踏む
ふいごの音に春溶け匂う


677
さわさわと幹揺すっても
落ちてくる
ものはなく深、静まり返る


678
葉脈のみどりの道を
たどるとき
言の葉揺れて影差して来る




  [短歌味体Ⅲ] 言の葉シリーズ・続


679
言葉へと喜怒哀楽の
葉となって
音楽のように鳴り響きうねる


680
言葉たち手品みたいに
瞬時に
変身する 鳥・舟・水・火


681
どこからか言葉舞い上がり
どこかへ
落ちていく感情線を通り




  [短歌味体Ⅲ] 入口シリーズ


682
入口では遙か太古と
同(おんな)じに
こんにちわなど言い掛け通さる


683
入口がホームグランド
でないならば
周囲の気配に触手伸ばしてる


684
入口では白、手ぶらでも
日々巡り
日差しに焼けてゆったりと出て来る




  [短歌味体Ⅲ] グローバルシリーズ・続


685
グローバル政経巻きこみ
我らにも
津波のように大地を寄せ来る


686
硝煙染み込んでいても
われらは
ラフな普段着でグローバルに出会う


687
肌色や言葉風俗
違っても
遙か遙かのアフリカの同一夢(ゆめ)




  [短歌味体Ⅲ] 入口シリーズ・続


688
入るのはとても簡単
足抜けは
干潟抜け行くに似て 集団の


689
入るも去るも大道無門
と言ってても
去り際に互いの水の重く濁る


690
感情は個々の出入り口
とは言っても
太古からおんぶお化けのように



 


  [短歌味体Ⅲ] 世界視線シリーズ


691
バンジーの視線ゆらゆら
迫り来る
ピカソの風景掻き分け流る


692
見渡して衛星の高度から
のぞき込む
目くるめく(遙か太古からの)時間の深み


693
ホラホラ、これが世界視線
突き抜けて
死後の表情までもが見える

 註.「世界視線」

「ランドサット映像が世界視線としてあらわれたことの意味は、わたしたちがじぶんたちの生活空間や、そのなかでの営みをまったく無化して、人工地質にしてしまうような視線を、じぶんたちの手で産みだしたことを意味している。この視点はけっして、地図の縮尺度があまりに大きいために細部を省略しなくてはならなかったとか、さしあたり不必要だから記載されなかったということではない。ランドサット映像の視線が、かつて鳥類の視線とか航空機上の体験とかのように、生物体験としての母胎イメージを、まったくつくれないような未知のところからの視線だということに、本質的な根拠をもっている。いわば、どうしても人間や他の生物の存在も、生活空間も、映像の向う側にかくしてしまう視線なのだ。」(『ハイ・イメージ論Ⅰ』「地図論」P155 吉本隆明 ちくま学芸文庫)





  [短歌味体Ⅲ] 誰にでも通じるかなシリーズ


694
頃合い超えて立ち合えば
いくつもの
ザボンはや落ちて草に埋もるる


695
椅子取りのゲームでさえも
はぐれた子
言葉を超えて佇む峠


696
「八時だね」「うん八時だよ」
暗転の朝
八時の駅は見知らぬ人ばかり




  [短歌味体Ⅲ] 


697
例えば買ったばかりの
靴履いて
約束の地へ足早に行く


698
新しい靴にふれふる
肌合いの
気に懸かりつつ橋を渡る


699
初めての店に入る時
幻の
バリアフリーをふと思い浮かぶ


700
よそ行きはふだんぎ着てても
よそ行きの
心模様の絞り染めつつ


短歌味体 Ⅲ 793-796 張り合いシリーズ

2016年04月27日 | 短歌味体Ⅲ
[短歌味体 Ⅲ] 張り合いシリーズ
 

793
手を見ても猫類ならば
闘志燃やす
目まんまるに燃え始めてる


794
我に没入 (jump) 飛びかかる
爪出てる
あぶないあぶない (おいおい)


795
人みたいに目合わせ細めたり
配慮して
爪を収めたりもするけれど


796
じっとして内向きに丸く
なっている
今きみはどんな世界に浸かっている?

註.NHK Eテレのねこのうた(言葉+音楽・歌+映像)を意識して。・・・ううん、負けてる?

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「あたし ねこ」の歌詞(NHK Eテレ「0655」)

あたし ねこ
あたし ねこ
ここ あたしんち
ここ あたしんち

これ いつものごはん
これ スペシャルごはん
それ 大好きおもちゃ
それ 落ち着く寝床

あたし ねこ
この人 飼い主
この人 ご飯をくれる
この人 遊んでくれる

あたし ねこだから
人の言葉わからない
あたし ねこだけど
この人の気持ちなぜかよくわかる

あたし ねこ
あたし ねこ
あたし ねこ
あたし ねこ

https://www.youtube.com/watch?v=X0Y8q0x_yjw

 


短歌味体 Ⅲ 789-792 農に出てシリーズ

2016年04月27日 | 短歌味体Ⅲ

[短歌味体 Ⅲ] 農に出てシリーズ


789
農に出て下ろし立ての
ステンレス鎌
スパン スパンと草刈り進む


790
何度もくり返してると
ビミョウに
切れ味がスパスパと曇りゆく


791
空(チュン チュン)雲(チュン チュン チュン)
風(ホーケキョ)
晴れ(チュン チュン(ゲコゲコ)チュン)


792
くたびれて家帰り着くと
充足の少し重たい
からだの流れ言葉のドアは閉じて


短歌味体 Ⅲ 784-788 重層シリーズ・続

2016年04月25日 | 短歌味体Ⅲ

[短歌味体 Ⅲ] 重層シリーズ・続
 
 

784
今年も作る竹の子ごはん
一年ぶりの
思い昨年に重ねている
 
 
785
竹の子とこんにゃくと
鶏肉と
椎茸と小さく刻んで炒め合わせる
 
 
786
さとうしょうゆ酒入れて
具を作り
酢振りのごはんと混ぜ合わせ


787
それぞれ皿に注いだら
仕舞いに
金糸卵を振りかけ出来上がり
 
 
788
複雑になってしまっても
太古の
シンプルな料理に思い重ねる


短歌味体 Ⅲ 781-783 重層シリーズ・続

2016年04月24日 | 短歌味体Ⅲ

[短歌味体 Ⅲ] 重層シリーズ・続
 
 
781
自分のこと考えていても
他人が
重なってきてマジリアーニ
 
註.「マジリアーニ」は、画家モディリアーニとその絵を少し意識した。
 
 
782
こうするよと心積もり
していても
場面に立つときみは変貌す
 
 
783
作者・語り手・登場人物がいて
物語は
重層する色合い放つ