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覚書2024.5.4 ― 〈科学〉はいつの時代も途上

2024年05月04日 | 覚書
 覚書2024.5.4 ― 〈科学〉はいつの時代も途上


 前にも触れたことがあるが、江戸時代、天然痘を予防するために種痘をすると牛になると信じた人がいたという。これに関しては、それを信じた人の割合はどれくらいだったのだろう。そして、人々の内心の感じ方や種痘の受けとめ方の主流はどうだったんだろうか、とまた思い直してみた。
 
 先進の〈科学〉に触れたごくわずかの医療者を除けば、人々は種痘をすると牛になると信じなくても未知のものに対する不安でいっぱいだったのではないか。また、地震は大ナマズが地中にいて暴れるから起こる(地中での何らかの振る舞いが原因ということでは現在と同一の把握)、と信じられていたという。現在の私たちからは笑い話や迷妄にしか感じられないが、本当は、もっとていねいに当時の世界に降り下て行かなくてはならないという気がする。そうでないと、未来からの視線でわたしたちの現在を見渡した場合、同様の笑い話や迷妄に見えてしまうことになる。
 
 ものの見方(〈科学〉)には時代性の壁のようなものがある。現在の普通人の一般的な〈科学〉では、ワクチンは副作用があるが病気に有効であると見なされている。江戸期の普通人の一般的な〈科学〉では、例えば地震は地中のことで見えないわからないから大ナマズによるものだと即物的に捉えているのと同様に、種痘に関しても即物的に牛由来の種痘をすると牛になると考えそうだ。そんな割と即物的な捉え方の世界に人々はいたと思われる。しかし、そんな不安を抱えながらも、病の現実と医療者の事実による説得によって、新しい種痘というものを徐々に受け入れていったのだろうと思う。
 
 現在、NHKの大河ドラマは平安時代が舞台の「光る君へ」を放送中だ。このドラマに、実在した人物である陰陽師の安倍晴明(あべのはるあきら)が登場する。NHKのそのドラマの説明に拠れば、「陰陽師(おんみょうじ)。陰陽寮に属する天文博士。並外れた占いの才能を持ち、常人にはない力があると畏怖される存在。天皇や貴族の生活はもちろん、政局にも大きな影響を及ぼす。」とある。陰陽師は、中国由来の陰陽五行思想に基づいた陰陽道によって、世界や世界に起こるものごとを判断したり、対処したり、占ったりする者である。また現在からは迷信にしか見えない当時の風習に、陰陽道から来た物忌や方違えというものもある。天皇家や貴族層は、そうした先進中国由来の物の見方を有り難がって受け入れていたのだろう。一方、普通の庶民は、先進中国由来のものも少しは下りてきたであろうが、従来からの人が自然に溶け込んだような世界観の中に生きていたのだろう。

 このように、平安時代を取っても、また江戸時代や現在とは違った、時代性の壁を持ったものの見方(〈科学〉)の中に生きていたはずである。そして、現在のわたしたちの物の見方の重量感と同じように、平安時代も江戸時代もそれぞれの時代のものの見方が信じられていたはずである。
 
 ところで、現在のコロナワクチンを万能のように言う医療者もネットで見かけてきたが、副作用(「副反応」)がなにがしかの割合であり得ること、今回のは新たな段階のワクチンであり従来のものと違うということ、そして十分に調査検討する余裕がない中で実際に使い始めたこと、などは当然のこととして彼らの頭の中にも入っているはずである。ワクチンの使用がやむを得ない緊急の対策ということは理解できるとしても、一部の医療者や政府などはあまりにコロナワクチンを万能のように語り過ぎたような印象をわたしは持っている。
 
 自然の一部に過ぎないわたしたち人間にとって、自然は大きく深い。だから、わたしたち人間が自然を完全に捉え尽くすということは不可能に思える。したがって、物の見方(〈科学〉)にはいつの時代にも時代性の壁のようなものがあり、〈科学〉はいつも途上にあるほかない。
 
 最近になってやっと、コロナワクチン副作用(「副反応」)や関連死の問題がマスコミでも取り上げられ始めている。途上の〈科学〉の中にいるわたしたち(特に、医療、行政)が心がけなくてはならないのは、ものごとにはプラス面もマイナス面もありうるから、ものごとをオープンにすること、そして、問題があれば秘匿せずに公開して、きちんと対処することであるのは自明のはずである。

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 6168-6171

2024年05月04日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



6168
日々の生活の流れがあり
めったにないけど
ふと 深呼吸してみることがある



6169
ちょっと新しい
小さな風が
流れ出す



6170
そうしてまたフタをして
いつもの流れ
に入って行く



6171
誰にもそれぞれの
小さなみどりの流れ
ちょっとした息詰まりを解(と)かす