シロ猫ピッピの「おいら物語」

生死をさまようガン闘病中に人間の言葉がわかるようになったシロ猫ピッピの物語。ニュージーランドからお送りしています!

Vol.0263■タビ物語-ハリネズミともう1匹

2007-07-04 | 猫の海外暮らし
ドアに黒いタビの影が映ってる。連れ合いがドアを開けて言う。
「トラベルくんかね?なんの御用かね?」
トラベル?
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前にも話したけど、色の濃いトラ猫のアニキやもっと濃いクロ猫のタビは、おいらよりずっと暑がりだった。色のせいですぐに暑くなっちまうんだと。だから、夏の間は昼間でも薄暗い家の下に入りこんだりする。暑がりじゃないおいらは行かなかった。
他にも涼しいとこはいっぱいある。なにもあんなとこに行かなくても、って思うけど。

その頃は涼しくなってきてた。子どもの学校もとっくに始まってて、いつもの毎日だった。
そんなある日、あいつらや子どもがワイワイガヤガヤ言いながら、突然家の下に入りこんだんだ。ビックリしたぜ、そんなこたぁ、この家に来て初めてのことだったから。
なにかと思ったら、家の下にあったものを引っ張り出して、外に捨てたのさ。古いクルマまで出てきたんだぜ。この話は前にもしたから、コッチを読んでくれよな。

1日かかってきれいにした後、アイツはいつも開けっ放しにしていたドアを閉めた。
そのドアが閉まってたことは1度もなかったから、引越してきて初めて閉めたんだ。
そして、ずっと閉めとくことにしたみたいで、
ドアは2度と開かなくなった。

(階段の下の二本足がやっと通れるくらいの小さいドアさ→)

家の下には二本足がハリネズミって呼んでる、もさもさした生き物がいた。
もちろんおいらもアニキも知ってた。やつらときたら物みたいに動かないか、動いても目が見えないのか、ホントにもさもさしてるだけ。最初に見たときはビックリしたけど、あとは気にならなくなった。それに家の下から出てこないから、家の下に行かないおいらには関係なかった。

アイツが捕まえて、連れ合いが近くの公園に持ってた。本当はもう1匹いたんだけど、アイツらは気がつかなかった。

夜になって、仲間がいなくなったもう1匹はドアとは違う小さな隙間から出て行った。1匹で家の下にずっといるのは、いくらハリネズミでも嫌なんだろう。庭を横切って出て行くのを連れ合いが見つけた。散歩してたおいらも見た。
「夫婦だったのかしら?かわいそうなことしちゃったわ!!」
アイツは大騒ぎだったけど、もう遅い。うちにはハリネズミがいなくなった。

その後、アイツがどっかから金網を持ってきて小さな隙間に立てかけた。
「これで家の下に入れる場所はなくなったからね。」
と連れ合いとウレシそうに話してる。またハリネズミ来ないように、ってことなんだろう。あんなに動かないやつ、居ても居なくてもかわんないと思うけどね。

アニキはドアが閉まったときと同じように、今までなかった金網をチェックし出した。
金網と隙間の間にはちょっと間があって、入ろうと思えばまだ家の下に入れたけど、アニキは入らなかった。そこまで見回りする気はなかったんだろう。おいらなんて、そんな気ぜんぜんなし。

「もしかしたら、まだ中にハリネズミがいるかもしれないから、出られるように少し開けておいたの。」
「その間に新しいのが入ったらどうするんだ?」
「そうよね、ビミョーよね。どうしようかしら?」

けっきょく金網はずっとずらしたまま置いてあった。もうハリネズミはいなくなってたし、おいらたちも入らないから誰も困るこたぁない。でも、1匹を除いて。(つづく)