シロ猫ピッピの「おいら物語」

生死をさまようガン闘病中に人間の言葉がわかるようになったシロ猫ピッピの物語。ニュージーランドからお送りしています!

Vol.0326■カンガルー抱っこ

2007-09-25 | 最後のメッセージ
アニキ、おいら、もうそろそろ行かなきゃいけない。
アニキ、またくっついて一緒に寝たかったよ。
今度目が覚めても、おいらは1匹だ。
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9月17日、最後の夜。
おいらはとうとう「カミサマの水」にも口を開かなかった。もう飲めない。
飲んだもんがおいらのからだを出てくことは、もうない。
おいらがわかってたように、アイツもわかってた。もうわからない振りはしなかった。

「カミサマの水」が入ったままのスポイトを机に置くと、アイツは泣き出した。
あのスポイトで流動食を始めたとき、それはいつかおいらが自分で喰い始めるためだった。でも、そうはならなかった。こんな風にスポイトを置く日がくるなんて。
アイツは辛かった。なにかおいらにしたかった。
でも、もうそんなにすることはなかったんだ。

アイツは暗いところに置いたバナナの箱の「ハウス」においらを寝かせた。
四つ足の最期らしく1匹にしてあげようと思ったんだ。
だけど、おいら、それはとっくにあきらめてた。こんなに長く二本足といて、四つ足らしく誰にも気づかれずに逝くのはもうムリだった。

「それだったら・・・・」
と、箱の中で横になりながら、アイツの背中を見てた。アイツは、
「こんなときにまで仕事してるなんて・・・」
と泣きながら、パソコンの前でカタカタやってた。
「ピッピ、待ってて。ママ、すぐに仕事を片付けちゃうから。もうちょっとだから。そうしたら、ずっとずっと一緒にいるから。」
って言いながら・・・。

だけど、ハッとして振り向いた。
おいらが見てるのに気が付いたんだ。そして、おいらの考えてることにも。それはアイツも考えてたことだった。
わかったわ。ガンガルー抱っこにしましょう。カタカタうるさいけどすぐに終わるからがまんして。」

「カンガルー抱っこ」―――
アイツがおいらを服の中に抱っこしながら、仕事をすることなんだ。

(この最後の写真はカンガルー抱っこから出して撮ったんだ。この後またアイツのお腹に戻った。この服はおいらのからだを包んだまま土に埋まってるよ)

前にも何回かやったことがある。まだ、元気だったころにね。
「やぁね~、赤ちゃんみたいじゃない。」
って笑われながら。スゴくあったかかったけど、そんなに長くはしなかったかな。なんか、おいらもアイツも照れくさい感じがしたんだ。

アイツは自分の服においらをくるみ、その服の袖を結んで首からかけた。その上からデカいフリースを着てチャックを半分閉めた。これなら両手でパソコンをやっててもおいらは落っこちない。お互い顔も見える。おいらは、ぴったりアイツのお腹にくっついた。
「ホントに、赤ちゃんみたいね、大きさといい重さといい、妊娠したみたいだわ。」
アイツは泣きながらニッコリして、またカタカタやり出した。
(たぶん、つづく)


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