アニキ、おいら、もうそろそろ行かなきゃいけない。
アニキ、またくっついて一緒に寝たかったよ。
今度目が覚めても、おいらは1匹だ。
==============================
9月17日、最後の夜。
おいらはとうとう「カミサマの水」にも口を開かなかった。もう飲めない。
飲んだもんがおいらのからだを出てくことは、もうない。
おいらがわかってたように、アイツもわかってた。もうわからない振りはしなかった。
「カミサマの水」が入ったままのスポイトを机に置くと、アイツは泣き出した。
あのスポイトで流動食を始めたとき、それはいつかおいらが自分で喰い始めるためだった。でも、そうはならなかった。こんな風にスポイトを置く日がくるなんて。
アイツは辛かった。なにかおいらにしたかった。
でも、もうそんなにすることはなかったんだ。
アイツは暗いところに置いたバナナの箱の「ハウス」においらを寝かせた。
四つ足の最期らしく1匹にしてあげようと思ったんだ。
だけど、おいら、それはとっくにあきらめてた。こんなに長く二本足といて、四つ足らしく誰にも気づかれずに逝くのはもうムリだった。
「それだったら・・・・」
と、箱の中で横になりながら、アイツの背中を見てた。アイツは、
「こんなときにまで仕事してるなんて・・・」
と泣きながら、パソコンの前でカタカタやってた。
「ピッピ、待ってて。ママ、すぐに仕事を片付けちゃうから。もうちょっとだから。そうしたら、ずっとずっと一緒にいるから。」
って言いながら・・・。
だけど、ハッとして振り向いた。
おいらが見てるのに気が付いたんだ。そして、おいらの考えてることにも。それはアイツも考えてたことだった。
「わかったわ。ガンガルー抱っこにしましょう。カタカタうるさいけどすぐに終わるからがまんして。」
「カンガルー抱っこ」―――
アイツがおいらを服の中に抱っこしながら、仕事をすることなんだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/f7/ca78c59edcab9537f3915b992f231cac.jpg)
(この最後の写真はカンガルー抱っこから出して撮ったんだ。この後またアイツのお腹に戻った。この服はおいらのからだを包んだまま土に埋まってるよ)
前にも何回かやったことがある。まだ、元気だったころにね。
「やぁね~、赤ちゃんみたいじゃない。」
って笑われながら。スゴくあったかかったけど、そんなに長くはしなかったかな。なんか、おいらもアイツも照れくさい感じがしたんだ。
アイツは自分の服においらをくるみ、その服の袖を結んで首からかけた。その上からデカいフリースを着てチャックを半分閉めた。これなら両手でパソコンをやっててもおいらは落っこちない。お互い顔も見える。おいらは、ぴったりアイツのお腹にくっついた。
「ホントに、赤ちゃんみたいね、大きさといい重さといい、妊娠したみたいだわ。」
アイツは泣きながらニッコリして、またカタカタやり出した。
(たぶん、つづく)
アニキ、またくっついて一緒に寝たかったよ。
今度目が覚めても、おいらは1匹だ。
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9月17日、最後の夜。
おいらはとうとう「カミサマの水」にも口を開かなかった。もう飲めない。
飲んだもんがおいらのからだを出てくことは、もうない。
おいらがわかってたように、アイツもわかってた。もうわからない振りはしなかった。
「カミサマの水」が入ったままのスポイトを机に置くと、アイツは泣き出した。
あのスポイトで流動食を始めたとき、それはいつかおいらが自分で喰い始めるためだった。でも、そうはならなかった。こんな風にスポイトを置く日がくるなんて。
アイツは辛かった。なにかおいらにしたかった。
でも、もうそんなにすることはなかったんだ。
アイツは暗いところに置いたバナナの箱の「ハウス」においらを寝かせた。
四つ足の最期らしく1匹にしてあげようと思ったんだ。
だけど、おいら、それはとっくにあきらめてた。こんなに長く二本足といて、四つ足らしく誰にも気づかれずに逝くのはもうムリだった。
「それだったら・・・・」
と、箱の中で横になりながら、アイツの背中を見てた。アイツは、
「こんなときにまで仕事してるなんて・・・」
と泣きながら、パソコンの前でカタカタやってた。
「ピッピ、待ってて。ママ、すぐに仕事を片付けちゃうから。もうちょっとだから。そうしたら、ずっとずっと一緒にいるから。」
って言いながら・・・。
だけど、ハッとして振り向いた。
おいらが見てるのに気が付いたんだ。そして、おいらの考えてることにも。それはアイツも考えてたことだった。
「わかったわ。ガンガルー抱っこにしましょう。カタカタうるさいけどすぐに終わるからがまんして。」
「カンガルー抱っこ」―――
アイツがおいらを服の中に抱っこしながら、仕事をすることなんだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/f7/ca78c59edcab9537f3915b992f231cac.jpg)
(この最後の写真はカンガルー抱っこから出して撮ったんだ。この後またアイツのお腹に戻った。この服はおいらのからだを包んだまま土に埋まってるよ)
前にも何回かやったことがある。まだ、元気だったころにね。
「やぁね~、赤ちゃんみたいじゃない。」
って笑われながら。スゴくあったかかったけど、そんなに長くはしなかったかな。なんか、おいらもアイツも照れくさい感じがしたんだ。
アイツは自分の服においらをくるみ、その服の袖を結んで首からかけた。その上からデカいフリースを着てチャックを半分閉めた。これなら両手でパソコンをやっててもおいらは落っこちない。お互い顔も見える。おいらは、ぴったりアイツのお腹にくっついた。
「ホントに、赤ちゃんみたいね、大きさといい重さといい、妊娠したみたいだわ。」
アイツは泣きながらニッコリして、またカタカタやり出した。
(たぶん、つづく)