シロ猫ピッピの「おいら物語」

生死をさまようガン闘病中に人間の言葉がわかるようになったシロ猫ピッピの物語。ニュージーランドからお送りしています!

Vol.0256■タビ物語-贈り物はゴミ箱へ

2007-05-26 | 近所の猫
早くタビの話を終わんないと、おいらのブログなのにおいらの話ができないぞ。
まっ、元気にしてるよ。アニキはときどきケットウチが下がるけど元気だ。
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玄関にネズミが置いてあったのは、魚をあげたタビがお礼に持ってきたからだと信じるアイツは、その日からタビにネコ缶を出すようになった。そりゃ、本物の魚の方がカリカリよりうまいさ。タビはスゴい勢いで平らげた。

(もちろん、うまい方から喰うさ。タビは魚が好きだった→)


「こんな調子でネコ缶開けてったら、あっという間になくなるな。1日何缶要るんだ?」
「2、3缶かな?燃えないゴミの箱があっという間にいっぱいになるわね。」
「こりゃ、大変だぞ。ネコのせいで家計は火の車だ。」
「今に始まったことじゃないわ。ネコのせいにして!ネコ缶分ぐらい働くわよ。」
「この缶1個で食パン1斤買えるんだぞ。ネコはみんなパン喰ってくんないかな?パンを。
からだにも良さそうだし。ご飯でもいいぞ。ネコまんまっていうじゃないか。」
ゲラゲラゲラゲラゲラ・・・・
二本足は暢気だ。喰うかよ、パンなんか。トリじゃあるまいし。

タビだけでおいらとアニキの分を合わせたより喰うから、そりゃネコ缶がどんどん開くだろう。カリカリだってあっという間になくなってたしね。でも、ネズミをもらってウレシかったアイツはとことん喰わせるつもりだった。
「こんなに食べるのはお腹に赤ちゃんがいるからかも・・・」
って、思ってたし。

次の日、アイツは朝から出かけていなかった。1人で留守番をしてた連れ合いは、庭に出ようと玄関を出たところで、またネズミを見つけた。しばらく見てたけど、死んだネズミは動かない。アイツもいない。しょうがないと思ったのか、拾ってゴミ箱に捨てた。

「え~!ゴミ箱に捨てたの?生き物よ!」
「死んでたよ。」
「死んでても生き物じゃない。それにタビちゃんの贈り物かもしれないのに。」
「じゃ、どうすればいいんだよ?」
「土に返してあげるの。」
「自分でやれば。まだゴミ箱の中にあるからさ。」

連れ合いはうんざりだった。これから毎日毎日ネズミが届いたらどうしようと思ってた。
「明日も置いてあるんじゃないか?ごちそうさまって。いっそ、ネコ缶やめてみるか。そうすればお礼もないんじゃないか?」
とも言った。そんなの聞いちゃいないアイツはてんこ盛りにしたネコ缶を出した。
「タビちゃん、ありがとう。」

「どういたしまして。」

アイツにはわかんなかっただろうけど、タビはちゃんと返事をしてたぜ。
(つづく)

Vol.0255■タビ物語-タビの妊娠?!

2007-05-24 | 近所の猫
ホントにいつまでもあったかい。ときどき寒くなるときもあるけど、そんなときはアイツらのベッドにもぐりこんじゃう。いいよな、自分たちばっかりベッドがあって。おいらもほしいぜ。
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きれいね。ちょっと前まで生きてたんでしょう。なんだか動き出しそうよ。
血もほとんど出てないし、苦しまなかったかな?怖かったかもしれないけど、ありがとうね。タビちゃんの贈り物になってくれて。土に返って天国に行ってね。そして、この木も元気になりますように。」

アイツは手袋をはめた手にネズミを載せて話した。離れていてもおいらにはアイツの頭のテレビが見えるから、これぐらいのことはわかるのさ。アイツはネズミの目を閉めようとしたけど、ダメだった。ネズミはアイツをジッと見たまま土の中に眠った。

おいらにもわかったぐらいだから、道の向こうにいたタビにだってわかっただろう。
もちろん、家の中でウトウトしてたアニキにも。タビが家に来るようになったのは夏の初め。今はまだ暑いけど、だんだん夏が終わりかけてた。夜になると虫がいっぱい鳴くようになって、草も濡れてる。ずい分、時間が経ったてことだ。

アイツは穴を掘った道具を片付け、家に入ろうとしたとき、
「タビちゃん!」
別の木の下にいるタビに気が付いた。いつの間にか庭に入ってきてたんだ。

「タビちゃんなの?ネズミを持ってきてくれたのは?」
「・・・・・・・・」

「どうもありがとうね。」
「・・・・・・・・」

「あなた、おうちがないの?どしていつもここにいるの?」
「・・・・・・・・」

「おうちがあるなら帰った方がいいと思うけど。ここには年をとった病気のネコが2匹もいるから、一緒には住めないわ。わかる?でも、ご飯ならあげられるわ。お腹が空いたらおいでね。」
「・・・・・・・・」

アイツは手を伸ばしてタビの頭をなでた。タビは首を引っ込めながらもなでられてた。
アイツの言ったことは全部わかっただろう。でもアイツは、タビの思ってたことはなんにもわかんなかった。

「タビちゃんて、妊娠してるんじゃない?」
「はぁ~、オスじゃないのか?あんなにデカいんだぜ。」
「からだは大きいけど大人しそうだし。なんとなく女の子のような気がする。とにかくよく食べるでしょ?おうちでも食べてるんだろうけど、足りないからここでも食べてくんじゃない?」
「オスだよ、タビくんだよ、絶対。」
アイツらは2人でボソボソ。

ほらね、やっぱりアイツはタビの思ってることなんか、これっぽっちもわかっちゃない。
(つづく)

Vol.0254■タビ物語-贈り物

2007-05-22 | 近所の猫
ときどきアイツは朝までパソコンをカタカタやってる。他のやつらは寝てるのに。
そういうのは仕事っていうんだって。おいらにはみんなパソコンをカタカタやってるように見えるから、どれが仕事でどれが仕事じゃないか、わかんないんだけどね。
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朝、いつものように外に出て驚いた。
「こんなとこに、こんなもんが・・・」
どうりで妙なにおいがしたと思ったんだ。先を行ったアニキも絶対気が付いてるはずだ。
おいらはグルッと回り道をして庭に出た。
いい気持ちじゃなかった。でもしょうがない。

その日は朝から知らない二本足が来た。
アイツらも出てきて3人で外でワイワイ話してた。ガレージの周りを回ったり、紐みたいなもんを地面に置いて紙になにか書いたり写真を撮ったり。
ガレージをどうかするらしい。物がゴチャゴチャ置いてあって面白そうな場所だけど、おいらたちは入れさせてもらえないから、どうなっても関係ないんだけど。

3人ともおいらが見つけたものには気が付いてなかった。すぐ近くにあったんだけど。
二本足は鼻もワルいけど、目もそんなによくないのか?
しばらくして知らない二本足が玄関でアイツらに紙を渡して帰っていこうとした。そのとき、足元にあったものに気が付いた。もう少しで踏むとこだったんだ。
そいつが踏まないようにヘンなかっこで歩いたもんだら、アイツも気が付いた。

すぐに外に飛び出し、
「大変、大変、大変~~~!」
といつもの大騒ぎで連れ合いを呼びに来た。
「外にネズミが死んでる!!!!」

「タビちゃんよね、きっと。」
「どうしてわかる?」
「だって、ピッピとチャッチャなんか虫1匹殺せないじゃない。」
「ネズミなんか見たら、逃げ出すよな、確かに。」
アイツらは死んだネズミを見下ろしながら腕を組んで話しこんでる。ワルかったな、おいらたちが虫も殺せなくて。でもそんなもん、家に持ってきてほしいのか?

「それに・・・」
「それに?」
「きのう、初めてお魚をあげてみたの。いつもカリカリあげてたじゃない?食べるかな~と思って。そうしたらペロっと食べたのよ。」
「で、ありがとニャンってことか?」
「多分ね。ネコってこうやってお礼するって聞いたことがあるわ。」

「ピッピとチャッチャなんかなんにも捕まえてきたことないぞ。」
「そりゃしょうがないわよ。ずっと家の中にしかいなかったんだから。」
「感謝が足りないんじゃないか?もっとウマいもん出せとか?」
ゲラゲラゲラゲラゲラ・・・・

アイツは木の下に穴を掘ってネズミを埋めることにした。その木がこの庭で一番弱ってるからなんだと。おいらはサンデッキから、タビは道の向こうから、穴を掘るアイツを見てた。
(つづく)

Vol.0253■タビ物語-家の下

2007-05-20 | 近所の猫
連れ合い「ピッピくんにチャッチャくん、最近どーかね、調子は?長生きだニャン。」
おいらとアニキ「・・・・・・・・・」
連れ合い「長生きもほどほどにニャン。」
おいらとアニキ「・・・・・・・・・」
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舐められてピカピカになった空のボールを見て、アイツは大笑いだった。
「ありがとう、タビちゃん。ここまできれいに食べてくれて。このボール、洗わなくてもいいくらい。ピッピとチャッチャは上の方が乾くと食べなくなっちゃうけど、あなたはエラいわね、全部食べて。また、いらっしゃい。」

タビは食後のみだしなみで、盛んに口の周りを舐めてるとこだった。もっと喰いたそうにも見える。魚には慣れてるのか、ただただ腹を空かせてるのか?おいらたちが喰わない、上の方が乾いたネコ缶は捨てるっきゃないから、アイツはタビが片付けてくれて本当にうれしそうだった。

タビにはそれがわかったんだろう。
頭のいいやつだから。

理由はよくわかんなくても、アイツが喜んでるのはわかったはずだ。タビもうれしかった。
でも、アイツにはそこまではわかりゃしない。気持ちよく喰ってくれたんで、気持ちよかっただけだ。

「これから毎日来るだろうな。」
おいらとアニキはそう思った。その頃のおいらたちはさすがに慣れてきてた。いくら追っ払ってもタビは毎日のように来て、庭の隅にいる。おいらたちのご飯がなくなるわけじゃなければ、やつがここで喰ってっても、まぁいっか、ってとこだった。

それにおいらたちは玄関よりもサンデッキから出入りすることが多かったから、玄関にタビのにおいがいっぱいつくのも、まぁいっか、ってとこだ。タビもそのへんがわかってて、デッキには上がってこなかった。隣のシィンはしょっちゅうあがって来ちゃ、家に入ろうとするのに。

でも、デッキの下にはよく出入りしてた。
アイツらは気がついてなかったけど、さすがにおいらとアニキは知ってさ。デッキの下には家の下に入れる小さいドアがあって、そのドアはいつも開けっ放しだった。ドアを通れば、いつでも家の下に入れた。

アニキはときどき入って見回りしてたけど、おいらはあんまり好きじゃなかった。でも、暑い日には涼しくて、蚊やノミも少なくて、暑いのが苦手だったらいいかもな。埃っぽくて毛が汚れるのが気にならなければね。
(つづく)

Vol.0252■タビ物語-初めての魚

2007-05-18 | 近所の猫
夜はおいらとアニキ、湯たんぽ争奪戦だ。
「昔、あったよね?ゲートボール殺人事件っていうのが。やめてくれニャン、ジジイのケンカは。」
アイツはゲラゲラゲラゲラ・・・・・。なんの話だ?
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子どもたちがまた学校に行くようになった。
でも、まだまだ暑い日が続いてて、四つ足も前ほど外に出てこなくなった。
おいらたちも家の中にいるほうが長かった。外で長々と昼寝してると、
「皮膚がんになるわよ。」
って、アイツが連れにくるぐらいだった。特にシロ猫は危ないんだと。

トラ猫のアニキは色が濃いから、おいらほど長く外にいられないんだってさ。なんでそんなことを二本足のアイツらが知ってるのかは知らないけど、確かにそうだった。アニキはちゃんと日陰を選んで寝てるんだ。

だったら、もっと色の濃いタビなんか外で昼寝は無理だろう。どうりで一番暑い頃はあんまり見なかったわけだ。でも、夕方になるとよく庭に来てた。ときどきアイツにカリカリをもらってることもあった。でも前ほど腹を空かしてるわけじゃなさそうだった。まっ、暑いときはおいらたちもそんなに喰わないけどね。太るともっと暑いから、夏の四つ足はげっそり痩せるのさ。

それでもタビはデカかった。
「タビちゃん、冬になったらどれだけ大きくなるのかしらね?」
アイツはそう言いながら、丸々太ったタビを思い浮かべて1人でゲラゲラ笑ってた。
ホントにアニキの倍くらいの大きさになりそうだぜ。

ある日、タビがまた玄関に来て鳴いた。あの夏の初めの頃みたいに。庭をウロウロしてても、玄関で鳴くのは久しぶりだった。
「あらタビちゃん、いらっしゃい。お腹すいたの?ちょっと涼しくなってきたものね。これ食べてみる?お魚よ、食べられる?
アイツは廊下に出てたおいらたちのネコ缶の上にカリカリを載せて、逆カリカリ丼にして出してみた。(カリカリの上にネコ缶がホントのカリカリ丼

ニュージーランドの四つ足は肉を喰ってて、魚を喰わないやつが多い。
前の家の隣に住んでたオブリも今の家の隣のシィンもそうだ。オブリは口に魚味のカリカリを入れては吐き出し、入れては吐き出ししてたっけ?シィンは喰いもしないし、においもかがない。

でも、タビは喰った。スゴい勢いで。
空になったボールはきれいに舐められてピカピカになった。

(「いいよな~、チャッチャもタビちゃんみたいに自分で喰ってくれないかニャン?」とブツブツ言いながらマニュアル喰いさせてる連れ合い→)
(つづく)

Vol.0251■タビ物語-夏の外飼い猫

2007-05-13 | 近所の猫
暑いころの話をしてるけど、最近、夜はけっこう寒くなってきた。
ガンのとき使ってた湯たんぽが出てきたぞ。なんだ、まだ家にあったのか。
もっと使ってくれよな。
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「タビちゃんって、もしかしたら夏だけ外飼いのネコなんじゃないかしら?」
「夏だけ外飼い?」
「そう。子どもたちが言ってたけど、夏はノミがつくからネコを家に入れない飼い主もいるんですって。家に入れなければノミ対策もいらないじゃない?」
「なるほどね。薬代も安くないからな~。いい考えだな。うちもそうするか?」

アイツと連れ合いがまたゲラゲラ笑いながら話してる。
外飼い?
うちもそうする?
なんの話だ?
タビが外で暮らしてるってことか?
そうだろうな。ホントによく見るようになったから。

まっ、夏はおいらたちもよくウロウロしてる。
大きな木の下は涼しくて気持ちいい。あんまり暑いときは家に入っちゃうけど、邪魔さえ入らなけりゃ、外の昼寝もワルくない。蚊に刺されるのはちょっと、なんだけど。ノミに比べりゃ、どうってことない。

そのうち、子どもたちが学校に行かないで毎日家にいるようになった。
ある日、連れ合いと子どもはクルマにいろんなものを山のように積んで、キャンプとかいうとこに行っちまった。夜になっても帰って来なかった。

1人ぼっちになったアイツはおいらやアニキ相手に話しだした。
それどころか、シィンやタビにまでしゃがみこんで話したり、ナデナデしたり。やつらは大喜び。アイツが庭に出てくると右と左から現れた。そんなやつらをアイツは、家に二本足がいない、
ホリデー猫
って呼び出した。

その頃は近所の二本足がみんなどっかに行ってたんだ。それがホリデーってもんらしい。夜になっても電気のつかない家がいっぱいあった。昼間っから庭をウロウロしてるのは、本当にアイツくらいで、シィンの家の二本足もとっくに帰ってこなくなってた。

タビはアイツからちょっと離れたところに腹ばいになってることが多くなった。ネコ正座よりゆっくりしてるってことだ。ときどきそばに寄ってはアイツの足をかすって歩いたりもする。慣れてきたもんだ。そのうち、庭のすみで昼寝までしだした。
おいおい、そこまでくつろぐなよな。

でも、タビにやりあう気がぜんぜんないから、ケンカにはならなかった。
アニキがハーって怒ると、やつはすぐに姿を消した。

(←タビは玄関からしか来なかった。気にして見張ってるアニキ。エラいよな。)
(つづく)

Vol.0250■タビ物語-ナデナデ 

2007-05-11 | 近所の猫
おいらの「おいら物語」、250号なんだって。
ネコ屋敷とブログとがちょうど半分ずつになったらしい。
これからもブログでいくよ。よろしくニャン。
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タビはよく庭に来るようになった。
前はたまに通り過ぎてくだけだったのに、隣の家との間の大きな木の下でじっとしてたり、アイツが庭に出るとどこからか出てくるようになった。

アニキはイライラして、やつを見つけるたびに庭から追い出した。
それでもタビは戻って来た。おいらだって、勝手に入って来られるのはもちろんヤさ。だけどアニキみたいに一生けんめい追い出しもしなかった。面倒くさいからね。その辺はアニキにお任せだ。

(←さすが「防人ネコ」だよな。倍ぐらいあるタビに向かってく。おいら?見てるだけ。アニキがんばれ!)

それに、タビにはぜんぜんやる気がなかった。
ここがおいらたちの家だってことがよくわかってて、大きな顔はしなかった。
隣の子ネコのシィンとは大違いだ。やつはなんにもわかっちゃない。どこでも好きに勝手に歩き回るし、ドアが開いてりゃ部屋にだって入ってくる。あちこちマーキングもしてくし、アイツを見るとスっ飛んでくる。

でもタビは違った。
初めは庭にいるアイツとシィンを遠くから見てた。おいらたちが出てくると、さっといなくなったり、外の道まで下がって見てたりした。最初からぜんぜんやる気がなかった。

それがだんだん変わってきた。
おいらたちが庭にいないと、タビはアイツの近くまで来るようになった。でも、アイツが触ろうとすると後ずさりした。アイツが頭をナデナデするようになるのはすぐだった。
のどを鳴らしはしなかったけど、ナデナデは気に入ったんだろう。そ~っと首だけ伸ばしてナデられてた。そりゃ、四つ足だからね。

タビはいつもさかんに階段の端っこに頭をこすりつけてた。
確かにナデナデの代わりにはなるけど、そりゃホントのナデナデのほうがいいさ。
でもね、誰もしてくれるやつがいなけりゃ、自分で適当なところにこすりつけるしかないのさ。

もうかなり暑くなってた。おいらたちはノミが来ないように背中に薬を塗られてた。
においはヤだけど、ノミが来ないのは助かるんだ。特においらはノミ・アレルギーで、噛まれると周りがものすごく赤くなっていつまでもかゆい。薬がないとお腹は真っ赤かさ。

タビは盛んに頭をこすりつけてたから、薬を塗ってなかったんだろう。
ノミが出ると四つ足だけじゃなくて、一緒に住んでる二本足も噛まれるから大騒ぎになるんだ。
(つづく)

Vol.0249■タビ物語-次のペット

2007-05-09 | 近所の猫
「寒くなるからあったかくして寝なさ~い」
って子どもに言うアイツ。
「寒くなるからしっかり食べて太っときなさ~い」
っておいらたちに言うアイツ。
でも、ぜんぜん寒くなんないんだけど。
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連れ合いが帰ってきて何日かした頃、
「来て来て!玄関にタビちゃんが来てるわ。」
アイツがデカい声で連れ合いを呼んだ。

「キミがタビくんかぁ。困るなぁ、うちを飯屋代わりにしてもらっちゃ。」
ニャーニャー
「わかったかい?今度からは昼間おいで。夜中は困るよ、夜中は。」
ニャーニャー

「わかったみたいだな。わかればいいんだ。わかれば。しかし、デカいネコだなぁ。野良猫なのか?」
「じゃないでしょう。こんなに毛艶もいいし、人にも慣れてるから飼い猫じゃない?こんなに近くにいてもぜんぜん逃げないでしょ?」
「そうだな。なんで人んちでそんなに喰ってくんだろう?」
「魚が気に入ったとか?」
「肉ばっか喰ってそうだもんな、この体型。」

アイツがカリカリを出すと、タビはもちろん喰い始めた。いつも腹を空かせてる。
「スゴい喰いっぷりだな。チャッチャに見習ってほしいよ。」
いつも糖尿病のアニキがインシュリンの注射を打ったあと、あんまり喰ってくれないんで苦労してる連れ合いとアイツは、苦笑いしながらタビを見下ろしてた。

ニャー
喰い終わったタビはきちんとネコ正座をして一声鳴いた。
「もう全部食べたのか?ごちそうさまかい?」
「礼儀正しいわよね。玄関からしか来ないし。」
「もっと出せって言ってるんじゃないか?それとも、またよろしく、か?」
2人はゲラゲラ笑ってる。タビは黙って2人を見上げてる。

「よしっ!次のペットは決まったな!」
突然、連れ合いが言い出した。アイツは大笑い。
「次の、ってどういう意味?」
「次だから、次さ。ピッピとチャッチャの次、さ。」

おいらたちの次って?
(つづく)

Vol.0248■タビ物語-盗み見

2007-05-06 | 近所の猫
今年はいつまでもあったかくていいよ。昼間なんか夏みたいだぜ。
アイツは出たり入ったり、泣いたり笑ったり忙しそうだけど、またタビの話に戻るとするか。
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タビは頭のいいやつだった。
でも、アイツはそうじゃない。普通の二本足だ。だから、タビが一生懸命交信してもアイツには通じない。タビもわかったみたいだった。

姿を見せなくても、タビはずっとこっちの様子をうかがってた。

連れ合いが1人で旅行に行ったのもどっかで見てたんだろう。アイツしかいないのがわかって、
あの夜にやってきたんだ。どうしてもアイツと、このあたりじゃ一番四つ足が好きそうで、いつも家にいるヒマそうなアイツと、話をつけようとやって来たんだ。

でも、アイツには通じなかった。カリカリを出されただけだった。
腹も空いてたから、とにかく喰った。喰ってからも話をつけようとドアに体当たりしながら鳴いてみた。でも、アイツは2度とドアを開けなかった。
「鳴けばご飯がもらえると思われちゃ困る。」
と思ってたんだ。

タビにはそれがわかった。本当に頭のいいやつだ。
だから2日目の晩は連れ合いがいないのに戻ってこなかった。腹も空いてたし、のども渇いてたけど、丸くなって眠ることにしたのさ。

その辺まではおいらにもわかった。四つ足だからね。
でも、それ以上のことはよくわかんなかった。タビの頭のテレビにはおいらの知らない二本足や知らない部屋が映ったり消えたり。それが今のことなのか、前のことなのか、誰なのか、どこなのか、そんなこたぁわかりゃしない。

そうでなけりゃ、草の伸びた庭をよく歩いてるみたいだった。ああいう庭は歩きにくいんだ。顔に草がぶつかるし、先がよく見えないし。ガサガサいって、音もよく聞こえない。いきなり他の四つ足にバッタリってこともある。でも、タビは気にしてないみたいだった。

しょうがないさ。いくら四つ足が好きでも、アイツは二本足。
14年も一緒にいるおいらたちともほとんど交信できないんだから、夜中に突然来ても無理さ。
木陰でぼんやりしながら、おいらはそんなことを考えてた。
「わかった。」
突然、タビから交信があった。ハッとして起き上がったけど、周りにはいない。
そうか、おいらの頭の中のテレビを見てたんだな。
(つづく)