いつも(つづく)だったのにな。
長い間ありがとニャン。
いっぱいウレシいことがあった。忘れないよ。
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「カンガルー抱っこ」でアイツのお腹にぴったりくっついたおいらは、眠れそうだった。
もう何日もまともに寝てなかったから、ウレシかった。
「やっと眠れる。」
それが夜の10時過ぎだったんじゃないかな。
眠ってるのか起きてるのかはっきりしないうちに、今まで見たこともないほどたくさんの白い光に包まれた。あったかい。アイツのお腹もあったかいけど、それよりもっともっとあったかいなにか。
レイキだ。
スゴいぞ、こんなにいっぱいなのは初めてだ。ちょうどその頃、あきこさんと最後の交信をしてたんだと思う。おいらはホントに深く深く潜るように眠った。
途中でちょっと目が覚めそうになった。
アイツのお腹から出て写真を撮られてたらしい。デッカい手。連れ合いに抱っこされてるんだな。
でもおいらは白い光に包まれたままで、はっきりとは起きなかった。
「キレイよね。ほんとうに真っ白で輝くような毛。黄疸が消えてるわ。あんなに黄ばんでたのに。」
「脱水症状もないなぁ。毛がフサフサしてるよな。」
アイツらの声が遠くなったり近くなったり。
また、カンガルー抱っこに戻された。ずっとアイツの手が上向きに寝たおいらの背中を持ってた。
アイツが息を吸ったり吐いたりするたびに、アイツの手とお腹が揺れる。
生きてるってあったかいな。
おいらも息を吸って吐いてる。ほんのちょっとだけど、アイツの手だって揺れてた。
「終わった!終わったわ、終わったぁぁぁ!!!」
アイツの声がした。仕事が終わったんだ。よかったな。アイツがホッとしてるのが、おいらとくっついてるところから伝わってきた。もう18日になってた。
「よかった、ピッピ。あとはずーっとずーっと抱っこしててあげるからね。」
そう言うとアイツはひとつの手でおいらの背中を持ったまま、もうひとつの手をお腹に置いた。
ふたつの手の間でおいらは小さく息をしてた。光に包まれながら、たくさん夢を見た。
寝てても明るいんだ。それでも夢が見える。アイツらの声も聞こえる。アイツの手も感じる。掌があったかい。
なんていい気持ちなんだ。
そのうち、息を吐くより吸うほうが少なくなってきた。
お腹も背中もそれに合わせてだんだん揺れなくなってきた。
何回かそれが続いて、おいらは停まった。
「ピッピ?」
アイツはすぐに気が付いた。
「ピッピ?」
今度はもうちょっと大きい声でおいらを呼んだ。何千回、何万回って聞いた声だ。
息が入ってこなくなったからだは、カクッカクッカクッと3回揺れた。
「ピッピ?」
「ピッピ?」
アイツと連れ合いがおいらをのぞき込んでる。デカい顔がふたつ並んでる。何千回、何万回、いいや数え切れないくらい見てきた顔だ。
「ピッピ?」
「ピッピ?」
おいらは目を見開いた。今見えるすべてを覚えていたかった。忘れないよ。
そして、もうなんにも吸えないし、鳴けないけど口を開いた。
「ピッピ?」
「ピッピ?」
「見てるよ、オレたちのこと、見てるよ。ピッピ、ピッピ!パパとママが見えるか?」
「なんて可愛いの。まるで笑ってるみたい。ピッピ、ピッピィィィィィ!!!」
こうやっておいらは自分のからだを出たんだ。
あったかく、眠ったまま、抱っこされて、アイツらに見守られながら、ぜんぜん四つ足らしくなく、
からだを出た。最後の最後まで、痛くも苦しくもなかった。
残ったのはあたたかさと、あふれてくるようなウレシい気持ち。
そして、「ありがとう」だ。
「みんなありがとう。みんなが近くにいてくれてうれしい。」
これがおいらの最後の言葉さ。あきこさんが、みんなに伝えてくれてよかったよ。
これで、おいらの物語は終わりだ。
長い間、ありがとニャン。四つ足の言うことをホントに読んでくれる二本足がいるってのはウレシかった。
じゃ、おいら、行くよ。
またな。
長い間ありがとニャン。
いっぱいウレシいことがあった。忘れないよ。
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「カンガルー抱っこ」でアイツのお腹にぴったりくっついたおいらは、眠れそうだった。
もう何日もまともに寝てなかったから、ウレシかった。
「やっと眠れる。」
それが夜の10時過ぎだったんじゃないかな。
眠ってるのか起きてるのかはっきりしないうちに、今まで見たこともないほどたくさんの白い光に包まれた。あったかい。アイツのお腹もあったかいけど、それよりもっともっとあったかいなにか。
レイキだ。
スゴいぞ、こんなにいっぱいなのは初めてだ。ちょうどその頃、あきこさんと最後の交信をしてたんだと思う。おいらはホントに深く深く潜るように眠った。
途中でちょっと目が覚めそうになった。
アイツのお腹から出て写真を撮られてたらしい。デッカい手。連れ合いに抱っこされてるんだな。
でもおいらは白い光に包まれたままで、はっきりとは起きなかった。
「キレイよね。ほんとうに真っ白で輝くような毛。黄疸が消えてるわ。あんなに黄ばんでたのに。」
「脱水症状もないなぁ。毛がフサフサしてるよな。」
アイツらの声が遠くなったり近くなったり。
また、カンガルー抱っこに戻された。ずっとアイツの手が上向きに寝たおいらの背中を持ってた。
アイツが息を吸ったり吐いたりするたびに、アイツの手とお腹が揺れる。
生きてるってあったかいな。
おいらも息を吸って吐いてる。ほんのちょっとだけど、アイツの手だって揺れてた。
「終わった!終わったわ、終わったぁぁぁ!!!」
アイツの声がした。仕事が終わったんだ。よかったな。アイツがホッとしてるのが、おいらとくっついてるところから伝わってきた。もう18日になってた。
「よかった、ピッピ。あとはずーっとずーっと抱っこしててあげるからね。」
そう言うとアイツはひとつの手でおいらの背中を持ったまま、もうひとつの手をお腹に置いた。
ふたつの手の間でおいらは小さく息をしてた。光に包まれながら、たくさん夢を見た。
寝てても明るいんだ。それでも夢が見える。アイツらの声も聞こえる。アイツの手も感じる。掌があったかい。
なんていい気持ちなんだ。
そのうち、息を吐くより吸うほうが少なくなってきた。
お腹も背中もそれに合わせてだんだん揺れなくなってきた。
何回かそれが続いて、おいらは停まった。
「ピッピ?」
アイツはすぐに気が付いた。
「ピッピ?」
今度はもうちょっと大きい声でおいらを呼んだ。何千回、何万回って聞いた声だ。
息が入ってこなくなったからだは、カクッカクッカクッと3回揺れた。
「ピッピ?」
「ピッピ?」
アイツと連れ合いがおいらをのぞき込んでる。デカい顔がふたつ並んでる。何千回、何万回、いいや数え切れないくらい見てきた顔だ。
「ピッピ?」
「ピッピ?」
おいらは目を見開いた。今見えるすべてを覚えていたかった。忘れないよ。
そして、もうなんにも吸えないし、鳴けないけど口を開いた。
「ピッピ?」
「ピッピ?」
「見てるよ、オレたちのこと、見てるよ。ピッピ、ピッピ!パパとママが見えるか?」
「なんて可愛いの。まるで笑ってるみたい。ピッピ、ピッピィィィィィ!!!」
こうやっておいらは自分のからだを出たんだ。
あったかく、眠ったまま、抱っこされて、アイツらに見守られながら、ぜんぜん四つ足らしくなく、
からだを出た。最後の最後まで、痛くも苦しくもなかった。
残ったのはあたたかさと、あふれてくるようなウレシい気持ち。
そして、「ありがとう」だ。
「みんなありがとう。みんなが近くにいてくれてうれしい。」
これがおいらの最後の言葉さ。あきこさんが、みんなに伝えてくれてよかったよ。
これで、おいらの物語は終わりだ。
長い間、ありがとニャン。四つ足の言うことをホントに読んでくれる二本足がいるってのはウレシかった。
じゃ、おいら、行くよ。
またな。