シロ猫ピッピの「おいら物語」

生死をさまようガン闘病中に人間の言葉がわかるようになったシロ猫ピッピの物語。ニュージーランドからお送りしています!

Vol.0181■アニキの失踪 Ⅳ

2006-07-31 | アニキ物語
今日は雨。外から帰ったら、
「やっだ~。汚い足で入って来ないで~」
っておこられた。帰って来なくて困るのはそっちだろ?
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「チャッチャ、お外で寝るのかな~?」
小さい子がフレンチドアに頭をくっつけて外を見てる。おいらは前足にあごをのっけてソファーで丸くなった。交信してみた。交信してアニキが見てるもの、してることを見るんだ。昼間はアニキが周りに集中しすぎててほとんど見れなかった。今ならちょっとは見える。

暗い。外にいる。
ときどき明かりがチラチラする。窓の下を歩くときだけ、ちょっと明るい。どっかの庭だ。どこかはわかんない。歩いてるのは芝に上。でも、この家じゃない。それはわかる。

けっこう木がある庭だ。木の下には芝がなくて今度は落ち葉の上を歩いてる。木と木の間を抜けると、二本足が庭のはじに立てる細い棒がいっぱい並んだ物も見える。二本足はこの棒の間を通れないけど、おいらたちは通れるからなんの意味もない。アニキはそこを通り抜けた。

別の庭に出た。
今度は階段が見える。アニキは見上げてちょっと止まった。上の方は電気で明るい。上った。1段、2段・・・ゆっくりと。椅子やテーブルの足が見える。上がったところはサンデッキ。階段よりももっと明るい。

おいらはさっき小さい子が立ってたフレンチドアの前に行った。夜の窓は遠くから見ると真っ黒なのに、近くに行くとけっこう外が見える。おいらはドアの前に座った。

「あれ?ピッピ?」
家の中でボールを転がしてた小さい子がやってきた。

「ママー!チャッチャ!!チャッチャが帰ってきたよー!」
気がついた。
「どこどこ?」
キッチンにいたアイツが走ってきた。
「ほら、そこ。デッキにいるよ。」
「きゃー!!!チャッチャ、おかえり~!」
アイツはワーワー言いながらフレンチドアを開けた。

「やったー!ボクが見つけたんだよ!」
と小さい子は大いばり。
違うぜ。見つけたのはおいらだ。
アニキがこの家の庭に入って階段を上ってくるのがわかったんだ。

「大冒険だったわね~、チャッチャ。5時間以上も外にいたのよ。さぁ、お水飲んでご飯食べて。」
「フレンチドアにピッピが映ってるのかと思ったら、チャッチャだったんだ。すごーい、ボク!」
「寒かったでしょう?どこ行ってたの?迷子になってたの?」
「パパー、ボクね、チャッチャ見つけたんだよー。」
(やっぱりアニキの尻枕がいいニャン→)

2人は勝手なことを言いながら、家の中をドタバタドタバタ。
アニキは黙って水。そして飯だ。
こうやって引越して最初の夜になった。
(つづく)

Vol.0180■アニキの失踪 Ⅲ 

2006-07-26 | アニキ物語
今の家に来てからいっぱい寝ていっぱい起きていっぱい喰った。
これを二本足は2週間って言うんだと。
何日経っても寝て起きて喰っては一緒なんだけどね。
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「チャッチャー、チャッチャー」
外からアイツの声がする。いなくなったアニキを探してんだ。もう外は真っ暗だ。二本足じゃなにも見えないだろう。
「チャッチャー、チャッチャー。寒いから帰ってらっしゃい。」

(←昼はあったかいけど夜は寒いぜ)

玄関のドアが開いてる。いろんなにおいと一緒に冷たい空気が入ってくる。おいらはドアの前に座って迷った。外に出ようかどうしようか。
昼間この新しい家に連れて来られたときはキャビネットから出られなかったけど、もう家の中なら歩いてる。アニキがいないとおいらも落ち着かないんだ。
どうしよう。出るか、待つか。

「チャッチャー、チャッチャー。ご飯よー。あら?ピッピ。出てきたの?一緒に探してくれない。チャッチャがどこにいるかわかる?」
「ニャー」
なんとなくなんか言ったほうがいいような気がして、おいらは鳴いた。
「お庭を回ってみよっか?どっかに隠れてるかもよ。」

アイツはおいらを抱き、アニキを呼びながら、玄関から花がある前庭、階段のある家の横を通って木がある裏庭に回った。そしてまた玄関へ。おいらも何回か鳴きながらアイツの腕の中で家を一周した。自分で歩いてみないとよくわかんないけど、とにかくグルッと回って来れるってことはわかった。

「いないわね。なんとなくお庭にはいない気がするの。遊びに行っちゃったのかしら?迷子になってないといいけど。」
ここにはアニキはいない。においは残ってるけど、どっかに行ってる。そこまではわかるけど交信してもどの庭かはわかんない。

「あっ、ママ。」
突然、大きい子どもが現れた。
「見つかった?前の家まで見てきたけどいなかったよ。」
「ありがとう。やっぱりそんな遠くまではいけないわよね。」
「こんなに寒くて外で寝たら死んじゃう?」
小さい子どもも家から出てきて聞いてる。

「大丈夫よ。これだけみんなで大きい声出して明かりもつけてるから、ここがお家だってわかってるでしょう。そのうち帰ってくるわよ。さっ、寒いから中に入りましょう。」
おいらも抱っこのまんま、家に入った。
(つづく)

Vol.0179■アニキの失踪 Ⅱ

2006-07-22 | アニキ物語
ずっと更新サボってたらしいから、がんばるニャン。
ホントは四つ足はがんばらないんだけど、二本足は好きなんだろ?
がんばるヤツが、さ。
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「ねぇ、チャッチャ遅くない?遠くまで行っちゃったのかしら?」
キッチンでガサゴソやってたアイツが子どもに聞いてる。
「迷子になったのかな?」
「冒険に行ったんじゃない?」
「前のお家に帰っちゃったとか!」
みんなで好き勝手なこと言ってる。

実はおいらもキャビネットから出てきて、ウロウロしてた。こんな知らない場所でアニキの姿が見えないのはさすがに不安だ。一生けんめい交信してみるけど、暗いところでじっとしているアニキか、おいらの知らない庭を歩いているアニキしか映らない。返事もない。

そんなに遠くじゃなさそうだけど、どこにいるのかわからない。おいらは鳴いた。さっきよりもっと大きく、腹の底から絞り出す声で鳴いた。アニキには聞こえただろう。でも、返事の交信はなかった。きっと初めての場所に気持ちが集中してるんだ。いろんなにおいを覚え、道を探してるんだ。

「ねぇ、2人でお庭の周り見てきてくれない?」
「いいよ。」
子どもは灯りが出る短い棒のようなものを持って出て行った。呆れた。二本足だとこの明るさでもよく見えないのか?

「チャッチャー、チャッチャー。どこ?帰っといで。」
「お家はこっちだよー。もう引越しちゃったんだよー。」
2人の声が庭から聞こえてきた。サンデッキへ見に行くと、丸い灯りをあちこちやりながら、探してるような遊んでるような。(アニキ、どこだ?→)

「いないよ。」
すぐに帰ってきた。
家の庭にはいない。それだけはわかった。でも、どこにいるだ?
「ニャー」
おいらは二本足がビックリするくらい大きい声で鳴いた。
(つづく)

Vol.0178■アニキの失踪

2006-07-21 | アニキ物語
新しい家ね~。
はっきり言って慣れたよ。
けっこう柔軟なんだ、おいらたち。
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おいらたちが引越してきたのは、まだ明るい時間だった。
「いいじゃない、明るくて。」
とアイツが喜んでたからな。おいらたちはそれどころじゃない。明るくても暗くてもどうでもいい。
ニャー (前の家に帰してくれ!)」
と腹の底から鳴き続けた。

でも、通じるわけない。通じたところで、おいらたちの言うことをきくわけない。いつも四つ足が二本足の言うことをきいて、その逆はないんだ。あんまり鳴いてさすがに疲れた。歩き回るのも恐ろしい。おいらはそのへんの開いてるキャビネットに入った。

そこにはデカいバッグが入ってて隠れられた。二本足が全然見えないところに行きたいわけでもない。こんな知らないところで、アイツらまで見えなくなったら、それはそれでもっと大変だ。でも、とにかく隠れられるところにいたかった。ソファーにゴロンとする気になんか全然なれない。

「やっだー!見てよ、ピッピ。これこそ頭隠して尻隠さずね!」
と通りかかったアイツが笑う。頭がどうしたって?
「それでも目いっぱい隠れてるつもりなんじゃないか。顔だけあっち向けてさ!」
と連れ合いも出てきた。2人とも楽しそうな声だ。ほっといてくれよ!

アニキは家の中をひととおり見終わってから、ソファーの上でじっとしていた。物がゴチャゴチャしている間にアニキの好きな毛布が置いてあった。アイツがアニキをそこに連れて行くと、そのまま座り込んだ。やっぱりアニキはネコがいい。

二本足は大人も子どももみんなでガタガタやってた。聞きなれない音もおいらにはイヤだった。ホントになんでこんなところに来ちまったんだ? どうして前の家じゃいけないんだ? そのとき小さい子が、
「外行ってきまーす!」
と言って、サンデッキに出るドアを開けようとした。
(←なんでこんなとこに連れて来たんだよー)

「チャッチャも出る?」
とアニキに話しかけてる声がする。
「ママー、チャッチャお外に出してもいいの?」
と聞いてる。

「大丈夫かしら?迷子にならないかな?」
と言いながらも、アイツの頭の中のテレビには、
「庭からは出ないでしょう。そんなに遠くには行かないだろうし・・・」
と映ってた。アニキにもわかったはずだ。

「あっ、出ちゃった。」
小さい子が言った。アニキはデッキのにおいを確認してから階段をゆっくり降りていき、その後、何かを見つけたのか急に走り出して、おいらの交信がよく届かないところに行っちまったんだ。
(つづく)

Vol.0177■9回目の引越し

2006-07-19 | 猫の海外暮らし
あーあ。この1週間さんざんだったよ。
話の途中だったのに更新も止まって、ゴメンだニャン。
まだ怒ってるぜ、おいら。
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やられたよ。
また引越したんだ、おいらたち。

ニュージーランドに連れてこられたとき、
「もう2度と引越さなくていいから。」
ってアイツが言ってたからその気でいたら、
「もう2度と飛行機に乗らなくていいから。」
っていう意味だったんだって。
なんだよ~、いまさら。

なんかヘンだと思ったんだ。家の中にどんどん箱がたまってくし、ずっと病気で寝てたアイツが朝からドタバタやってるし。おいらが荷物に隠れてせっせとビニール舐めてても気がつかないし。

2本足は普通、恐ろしく耳がワルい。なのにアイツはおいらがビニールを舐める音だけはすぐ聞きつける。いつもだったらコワい顔してすっ飛んできては、
「またガンになるわよ!いいの?」
って言いながら、さっさとビニールを片付けちまうのに。

ちぇ。もうヤケクソだ、どんどん舐めてやる!
ペロペロペロペロ・・・・
ホントに舐めまくってたら何回も吐いちまった。白い泡がいっぱい出るんだ。それだってアイツは気がついたり気がつかなかったり。

これでおいらたちの引越しは9回目なんだぜ。
シンガポールで2回、香港で5回、ニュージーランドで2回。
なにが楽しくてこんなに住むとこを変えんだ? おいらたちはその間に獣医のとこだの、おいらたちを飛行機に乗せた連中のとこだの、検疫所だの、いろんなとこに預けられたから、それも全部合わせると何回寝場所が変わったことか。

2本足は検疫所がないんだろ?一度入ってみろよ!
どんなに寒くて、どんなに薬くさくて、どんなに犬が嫌で、どんなに早く出たいとこかよくわかるぜ。
今度は検疫所がなかったけど、やっぱりヤだよ、違う家なんて。

どこに寝たらいいかよくわかんないし、同じソファーでもなんか違うんだ。
庭に出れば頭がクラクラするくらい知らないヤツのにおいがするし、おいらとアニキは大混乱。
もう二度と引越しなんかすんなよな!
(つづく)

Vol.0176■食い逃げ犯

2006-07-07 | 猫の海外暮らし
今日はタナバタなんだと。また、妙な木が出てきた。
アニキはこの葉っぱを喰うのが大好き。でも喰うと必ず吐く。
おいらも喰ったことあるけどギザギザしてて、すぐ吐きたくなる。
アイツらはアニキの届かないとこに木を掛けるのに必死。
そのたんびに紙がヒラヒラ落ちてくる。毎年やってんだぜ、こんなこと。
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サンデッキのピクニックって、アイツがちょっとやったことがあったんだ。でも、問題があってすぐに止めた。そんなことはぜんぜん知らない連れ合いは、得意になってる。

問題っていうのは、おいらたちが残した分を近所の四つ足が喰いにくることなんだ。
あいつは最初、面白がってそのまま喰わせてた。キッチンのドアはガラスだから、喰ってるやつらが良く見える。
(←これはアニキじゃない。いつの間にかこんなにデカくなったジャックなんだ。アイツが後で写真撮ってても必死で喰ってる)

「やっだ~。慌てて食べて逃げてくから、逃げた後にカリカリがポトポト落ちてて、どっちに逃げていったかすぐわかるわ。」
なーんて、ゲラゲラ笑って見てた。
(←いちおう周りに注意してんだけど、後だっては後・・・)
おいらたちも喰い終わって腹がいっぱいのときだから、見て見ぬふりさ。

さすがに追いかけ回して庭から追い出すほど身軽じゃない。
やっぱり、食後の一休みは必要さ・・・。

それをいいことに、若くていっつも腹を空かせてるジャックや黒トラ、けっこうたらふく喰ってるくせにヒマなんで見に来るオブリなんかも、ハフハフ喰っていった。オブリなんか魚なんか喰ったことないから、カリカリを口に入れるたびに脇から吐き出し、また喰っちゃ吐き出し・・・なんて、完全に遊んでんだぜ!おいらたちが肉を喰わないのと反対だよな。やっぱりヘンなヤツだ。

そこまでは、まぁよかった。ボールやカリカリに他の四つ足のにおいがつくのはウレシくないけど、全部平らげてくヤツもいたから、アイツがボールを洗っちゃえばOKだったのさ。

ところが、味をしめた黒トラは家の中まで入って来るようになっちまったんだ!
ガラスドアのこっちにはもっといろんなもんが並んでるのを知って、ドアの隙間からサッと入ってはガッと喰う。夏とかこのドアは開いてることが多いから簡単だった。

ある日、ヤツがハフハフやってるときにアイツがキッチンに戻ってきた。それだけでもビックリだったのに、いきなり電話が鳴ってヤツは大パニック。開いてたドアから風のように逃げてった。残されたアイツは口あんぐり。
あーあ、とうとう気がついた。どうするんだ、これから?
(つづく)

Vol.0175■サンデッキでピクニック

2006-07-04 | アニキ物語
子どもが学校へ行かない。ふたりとも元気になったみたいだから、また休みになったんだろう。
これでまた昼間ベッドで寝られなくなる。最近、外があったかいから今のうちはいいけど。
雨になったらちゃんと寝かせろよな。
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「チャッチャを1人で食べさせる方法が見つかったんだ!」
ボーっとしながら部屋から出てきたアイツに、連れ合いがウレシそうに言った。アイツはここんとこ病気でちっとも部屋から出てこなかったから、おいらたちの世話は連れ合いがしてた。

相変わらずお手々まんまなんか絶対やりたくない連れ合いが考え出した、アニキの食べさせ方とは!
ピクニックだ。
そ、外で食べること。

最近ずっと天気がいいから、おいらたちはけっこうサンデッキにいる。コンコンやってる誰かとベッドで寝てるより、ずっと静かなんだ。あったかいしね。冬の外は捨てたもんじゃないぜ。
そこに目をつけた連れ合い、アニキの目の前に混合削り節たっぷりのネコ缶を置いてみた。

「喰うじゃないか。」
おいらでもそう思ったくらいだから、連れ合いが喜ばないわけない。
「いいぞー、チャッチャ。もっと喰うか?」
と、どんどん出してくる。おいおい、おいらの順番は?

「で、朝からボール3杯も喰ってんだぜ。インシュリンの注射なんかとっくに終わったよ。」
と、ウレシそうに言う連れ合い。お手々まんましないで喰わせたことが、よっぽど自慢みたいだ。
「勝った!」
と思ってるんだろうな。

なんでアニキが喰う気になったのかは、なんで喰わないのかと同じくらいナゾ。
まっ、気持ちいいのはわかるけど。
喰い終わったら、そのままその辺にゴロ~ンでもかまわないしね。

でも、アイツがいつもみたいに起きてくるようになると、また元通り。
アニキは廊下やアイツらの部屋や、とにかくカーペットの敷いてあるところで、
ニャ~
そのたびにアイツがテンヤモンをデマエしてる。
(なんで廊下?かね~→)
ときどきサンデッキにデマエして、ピクニックもしてるけど。

このピクニック、実は前にもアイツがちょっとやってたことがあったんだ。でも問題があって止めたんだ。
そんなことはぜんぜん知らない連れ合い。その問題って・・・(つづく)