去る4月24日(金)、INAX大阪ショールームにて行われた春の新商品発表会とあわせて企画されたイベント「綿業会館見学会」にお邪魔してきました。
綿業会館といえば、大阪のみならず、日本を代表する近代名建築として有名です。もちろん国指定重要文化財で、2007年には近代化産業遺産に認定されており、建築・インテリア業界関係者の間では幾度となく見学会が開催されています。私も以前から耳にする機会はありましたが、会員制のクラブで普段はなかなか入ることの出来ない施設である為、実際に訪れる機会には恵まれませんでした。
ついに、足を踏み入れる日がやって来たかぁ!!!・・・という感じです。
さて、綿業会館は、昭和6(1931)年12月、日本綿業倶楽部の建物として竣工し、翌年1月1日に開館しました。その建築費用は、東洋紡績の専務取締役・岡常夫氏の遺産100万円と、綿業関係者からの寄付金50万円を合わせて150万円。現在の貨幣価値に換算すると約75億円!!!立派なのも頷けます。ちなみに、同時期に大阪城天守閣が大阪市民の寄付金で再建されていますが、この建築費用が47万円(=約24億円)。つまり綿業会館は大阪城天守閣の3倍以上の費用がかけられているというわけです。
設計は渡辺節氏(=建築家。残念ながら2007年2月28日に閉店した近鉄百貨店京都店の設計もされています)、ヘッドドラフトマン(ドラフトマン=基本設計をまとめる設計者と区別し、図面引き作業が専門で、おもに基本設計以降の各種詳細図などを書く人のことをいう)には、当時渡辺氏の事務所に居た村野藤吾氏(関西大学、甲南女子大学の他数々の名立たる建築物を世に送り出した日本を代表する建築家の一人)が参画しました。各部屋のスタイルを変えたのは、世界各国の来賓や会員の好みに応じて、好きな部屋を選んでもらいたいという渡辺氏ならではの配慮によるものだそうです。
それではその素晴らしい建築をご紹介しましょう。
まずは玄関ホールから。
こちらは、イタリア ルネサンス式。
次に本館3Fにある「談話室」。
こちらは、イギリス ルネサンス初期のジャコビアン・スタイルで吹き抜けの天井となっており、綿業会館の中でも最も豪華絢爛で素晴らしいと評される部屋です。映画やドラマの撮影などにも良く使われます。そういえば、見覚えのある風景ですよね。
とくに目を惹いたのが、壁面にあるタイルタペストリー。これは京都・泉涌寺の窯場で焼かれた約1,000枚の清水焼窯変タイルなのだそうです。なんでも、助手を使わずに渡辺氏ひとりでこつこつと仕上げたそうです。
タイルに近づくとこんな感じ。
空間全体を眺めると、実にしっくりとおさまっています。
同じく本館3F「特別室」。
こちらは、こじんまりとした空間。戦前は皇室ご用達の部屋だったそうで、別名「貴賓室」とも呼ばれています。長いあいだ「開かずの間」とされていたそうで、貴重な体験をさせて頂きました。
窓や壁が直線的なのに対して、天井・家具などは曲線で組み合わせるというクイーン・アン・スタイルです。
当時から使われているカーペットは、現在も深く美しい赤い色が印象的でした。
こちらと隣接する通称「鏡の間」の「会議室」は、対面する壁面に鏡を配し、どこまでも空間が続いているような印象を与えます。
洋式はフランス アンピールスタイル。
ドアまわりには木目調の大理石を利用したり、床材にアンモナイト化石の入った天然石を利用するなど、どの部分も手を抜かない仕上げです。
綿業会館は、洋式ばかりではありません。
①将来の本格的な冷暖房の普及を予想してダクト径を太くして建物に内蔵させたこと。②当時からすでに井戸水による冷風送気を行い、地下室に冷暖房設備のスペースを残したことなど、機能面での工夫も見られます。
また、外壁は熱に強いタイルを、各部屋の窓にはフランス製の鋼鉄ワイヤー入り耐火ガラスを使用していたため、戦火をまぬがれることができました。
この建物が現在も多くの人に愛され、見る人の心を動かすのは、①見た目=設計デザインの美しさ②来賓や会員、利用者への配慮③機能面の充実④建物自体の安全性の確立など、どの面からも抜けのない配慮と建物自体が生きた歴史がより一層の奥深さと美しさを生み出しているからではないでしょうか。
京町家に心を奪われる感覚と似ているのかも知れませんね。
建築に携わる者としても、人としても、歴史を重ねた建物から学ぶものがたくさんあることを、改めて感じる一日となりました。
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綿業会館といえば、大阪のみならず、日本を代表する近代名建築として有名です。もちろん国指定重要文化財で、2007年には近代化産業遺産に認定されており、建築・インテリア業界関係者の間では幾度となく見学会が開催されています。私も以前から耳にする機会はありましたが、会員制のクラブで普段はなかなか入ることの出来ない施設である為、実際に訪れる機会には恵まれませんでした。
ついに、足を踏み入れる日がやって来たかぁ!!!・・・という感じです。
さて、綿業会館は、昭和6(1931)年12月、日本綿業倶楽部の建物として竣工し、翌年1月1日に開館しました。その建築費用は、東洋紡績の専務取締役・岡常夫氏の遺産100万円と、綿業関係者からの寄付金50万円を合わせて150万円。現在の貨幣価値に換算すると約75億円!!!立派なのも頷けます。ちなみに、同時期に大阪城天守閣が大阪市民の寄付金で再建されていますが、この建築費用が47万円(=約24億円)。つまり綿業会館は大阪城天守閣の3倍以上の費用がかけられているというわけです。
設計は渡辺節氏(=建築家。残念ながら2007年2月28日に閉店した近鉄百貨店京都店の設計もされています)、ヘッドドラフトマン(ドラフトマン=基本設計をまとめる設計者と区別し、図面引き作業が専門で、おもに基本設計以降の各種詳細図などを書く人のことをいう)には、当時渡辺氏の事務所に居た村野藤吾氏(関西大学、甲南女子大学の他数々の名立たる建築物を世に送り出した日本を代表する建築家の一人)が参画しました。各部屋のスタイルを変えたのは、世界各国の来賓や会員の好みに応じて、好きな部屋を選んでもらいたいという渡辺氏ならではの配慮によるものだそうです。
それではその素晴らしい建築をご紹介しましょう。
まずは玄関ホールから。
こちらは、イタリア ルネサンス式。
次に本館3Fにある「談話室」。
こちらは、イギリス ルネサンス初期のジャコビアン・スタイルで吹き抜けの天井となっており、綿業会館の中でも最も豪華絢爛で素晴らしいと評される部屋です。映画やドラマの撮影などにも良く使われます。そういえば、見覚えのある風景ですよね。
とくに目を惹いたのが、壁面にあるタイルタペストリー。これは京都・泉涌寺の窯場で焼かれた約1,000枚の清水焼窯変タイルなのだそうです。なんでも、助手を使わずに渡辺氏ひとりでこつこつと仕上げたそうです。
タイルに近づくとこんな感じ。
空間全体を眺めると、実にしっくりとおさまっています。
同じく本館3F「特別室」。
こちらは、こじんまりとした空間。戦前は皇室ご用達の部屋だったそうで、別名「貴賓室」とも呼ばれています。長いあいだ「開かずの間」とされていたそうで、貴重な体験をさせて頂きました。
窓や壁が直線的なのに対して、天井・家具などは曲線で組み合わせるというクイーン・アン・スタイルです。
当時から使われているカーペットは、現在も深く美しい赤い色が印象的でした。
こちらと隣接する通称「鏡の間」の「会議室」は、対面する壁面に鏡を配し、どこまでも空間が続いているような印象を与えます。
洋式はフランス アンピールスタイル。
ドアまわりには木目調の大理石を利用したり、床材にアンモナイト化石の入った天然石を利用するなど、どの部分も手を抜かない仕上げです。
綿業会館は、洋式ばかりではありません。
①将来の本格的な冷暖房の普及を予想してダクト径を太くして建物に内蔵させたこと。②当時からすでに井戸水による冷風送気を行い、地下室に冷暖房設備のスペースを残したことなど、機能面での工夫も見られます。
また、外壁は熱に強いタイルを、各部屋の窓にはフランス製の鋼鉄ワイヤー入り耐火ガラスを使用していたため、戦火をまぬがれることができました。
この建物が現在も多くの人に愛され、見る人の心を動かすのは、①見た目=設計デザインの美しさ②来賓や会員、利用者への配慮③機能面の充実④建物自体の安全性の確立など、どの面からも抜けのない配慮と建物自体が生きた歴史がより一層の奥深さと美しさを生み出しているからではないでしょうか。
京町家に心を奪われる感覚と似ているのかも知れませんね。
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