水沢司法書士・行政書士事務所

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所有者は認知症

2012年05月29日 | Weblog
不動産の所有者が高齢で、認知症なんですが私に名義変更できますか・・・・・
度々こういう状況に出くわします。

まあ、結論から先に言えば、まず何もできません。贈与も売買も抵当権設定も。
単発のご依頼であれば、どの司法書士もそう言うはずです。

しかし、すでに信頼関係のできあがっている不動産屋・金融機関からの問い合わせの場合は、何かと頭の痛い問題です。

司法書士としてやるべきことは、まず所有者ご本人に会わなければなりません。
簡単な日常会話から、何をどうしたいのかを確認しなきゃいけません。
しかし、この手の場合、その場に同席する親族がすかさずフォローする、という。

我々は認知症の専門家じゃありませんから、こういう場合、まず医師の診断書を要求します。
その結果、自己の財産を処分・管理するには、援助が必要な場合がある。
とか、常に援助が必要である。
なんてことになれば、その贈与・売買・抵当権設定は、まずできません。

そうなると、「じゃあどうすればいいんだ!」と語気鋭く申し向ける方もおられます。「数千万円の相続税をどう払うんだ!あんたが払ってくれるのか!」などなど。

登記手続上の点からいえば、
所有者の意思確認ができないなら、後見人を就けるしかないでしょうが、そんなことをついうっかり口を滑らそうものなら、

後見人を就ければ、贈与・売買・抵当権設定ができる!?

それはどうすればいいのか!?自分でも後見人になれるのか!?という話になります。

いやいや最後まで良く聞いて下さい。そんなことあるわきゃないですよ。

後見人が就き、贈与・売買・抵当権設定に同意し、裁判所もそれに許可を与えたら、登記はできますよ、という話です。

まず後見人が処分に同意することはないでしょうし、裁判所がその許可を出すなんてことはないでしょう。

要するに、認知症にかかった所有者の名義を変更したり、相続税対策のために抵当権を設定することはまず不可能、という結論で宜しいかと。

・・・・まず、というのは、実は私が関わった件で、1件だけ裁判所の許可が下りた事案があります。

私が成年後見監督人となっていた件で、被後見人を債務者とする数億円の根抵当権設定が裁判所に認められたのです。

非常に特異なケースです。

被後見人は、従来からアパート経営で生計を立てており、認知症と診断されるまでにすでに数棟のアパートを建てている。今回被後見人名義で金融機関から資金を借り入れ、被後見人名義の新しいアパートを建てることは、被後見人の古くからの意向なんですよ!等という話を不動産屋さん、ハウスメーカーさん、推定相続人からお聞きし、んじゃあやるだけやってみましょうと、その旨方々に報告書を書いてもらい、いや~こういう状況だったってことは報告書のとおり確認できますし、監督人としては処分に同意しちゃってもいいかなぁと思うんですけどぉ~~どうですか~?、と裁判所に上申したところ、なんと裁判所に認めてもらえたのです。

まあ、推定相続人が1人しかいない、という点が大きかったとは思います。

要するに、事案によっては、そんなことができる場合がなくはないかもしれない、という限りなく0に近いものです。

それはある意味、後見人・後見監督人がどう裁判所を納得させるのか、という腕の見せ所、といってもいい?かも知れません。


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