水沢司法書士・行政書士事務所

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成年後見の話

2005年07月22日 | Weblog
 私は今、二名の成年後見人として就任しています。
 一人は平成15年から、もう一人は平成16年からのお付き合いです。平成15年からの方を仮にAさんとします。

 Aさんはまだ56歳の女性なのですが、様々な事情からアルコール依存に陥ってしまい、平成14年頃から何度か救急車に運ばれるようになり、やがて平成15年になるとアルコール依存症から来る認知症を発症し、それ以来自宅に帰ることもなく、都内の精神病院を転々として来ています。
 症状としては、わずか数時間前の記憶すら残せない状態なのですが、昔の記憶(約10年前くらいまでの記憶)はほぼ鮮明に覚えていらっしゃいます。日常的な言動も何もおかしい所はなく、突然暴れ出すという症状もなく、ただ単に新しい記憶が作れないのです。

 私は、これまで10数回面会に行っているのですが、私のことはまったく覚えておらず、毎回「初めまして」から始まり、私が何者なのかを説明しています。
 昨日久しぶりに面会に行って来たところ、Aさんは私のことをこれまで以上に不審そうに凝視し、何度も名前を聞き、近づいてこようとしません。私は、自分が司法書士で、家庭裁判所からAさんの財産管理をするよう選任された者だと伝えると、「何かお仕事を頼んでいたのでしたっけ?」という回答が返ってきました。数年前に離婚されたご主人がやはり資格を持って独立開業されていた方だったので、「ああ、主人の関係の方ですね?」という具合でした。少しずつ症状は進んでいるようです。

 Aさんには、上は23歳、下は19歳の3人のお子さんがいます。
 しかし、Aさんがまだ元気な頃から子供達とは折り合いが悪かったようで、平成15年に入院して以来、子供達はまだ一回も面会に来ていません。しかし、私が面会に行くたびに、Aさんは「子供達に会いたい」「会える方法はありませんか?」と聞いてきます。当初私も連絡の付くお子さん達に、お母さんがとても会いたがっているから、と伝え、子供達も必ず行きます、というやりとりがあったのですが、お子さん達はまだ1回も面会に行ってないのです。
 仕方がないので、面会に行くたびに、私が把握しているお子さん達の現住所を書いたメモをAさんに渡し、お子さん達に手紙を書くようにいうのですが、Aさんは手紙を書いてないのか、書いたことを覚えていないのか、書いたが子供達に無視されているのかは分かりません、毎回同じことを私に言い、同じことを私は繰り返しています。

 今回、Aさんの荷物を整理しているときに出てきた、お子さん達の小さい頃の写真を持っていきました。どんなにうれしがるだろうと思っていましたが、Aさんは、「比較的新しい写真ですね?」と言いました。私は、「これは91年の写真です。今は何年ですか?」と聞くと、「何年ですか?」と聞いてきます。「今は05年です。もう14年も前の写真です。懐かしいですか?最近のことのようですか?」と聞くと、「その間の記憶がないので、懐かしいという感じではない」という答えが返ってきました。
 
 14年間の記憶が何もなければ、14年前の記憶は懐かしいとは思えないのでしょうか?

 この回答は、私にはとてもショックなものでした。

 15年、16年と1年に1人ずつ成年後見の話が来ます。そう考えるとぼちぼち新たな成年後見の話が来そうだな、と予感していたところ、仲間の横浜の司法書士から、任意後見監督人になってくれないかとの話が来ました。この件については、進行状況を見ておいおい報告するとして。ちょっとブルーなお話でした。