あの車両を訪ねて

全国の保存・放置車両を訪ねています。

東武鉄道デハ27/伊香保温泉 峠の公園

2017-09-06 | 群馬県


群馬県は渋川市の山中に広がる一大温泉街、伊香保。県内では草津温泉と並んで有名な温泉街であり、365段の石段の両脇に土産屋が連なる光景は有名です。
そんな伊香保温泉、公共交通機関を使って来るならばバスしかありませんが、60年程前までは路面電車が走っていました。「東武鉄道伊香保線」と呼ばれたその路線は、国鉄渋川駅から伊香保温泉の間を最急勾配57.1‰、87箇所の急カーブを乗り越えながら毎日上り下りしていたのです。
廃止から60年以上が経った今、温泉街にその面影を感じることは出来ません。ですが2014年、その存在を後世に残すべく、当時活躍した電車が伊香保温泉の入り口となる交差点付近に設置されました。この車両が、今回ご紹介するデハ27です。



さすがに古いので来歴は省略しますが、車両自体は創業時のものを更新したものの様です。もっとも、部品流用の新造らしいですが。
このデハ27は、引退後渋川市内の眼科にて車体のみの姿で大切に保存されていたそうです。移設する際、取り払われていた床下機器を豊橋鉄道モハ301や横浜市電のものを流用して再設置し、2014年にお披露目となりました。



車体には車両として最低限のものが設置されている…って感じですね。というか、前面に灯具類が設置されていませんが、夜とかどうしてたんでしょうね。



さて、現在デハ27が設置されている場所ですが、手前に線路が敷かれています。これ、何かと言うと、実際の線路跡に再敷設したものだそうで。当時はそのまま道路を横断していたそうです。ここだけ見てもすごい勾配でびっくり。

当時の痕跡が殆ど消失している今、伊香保に鉄道が通っていたことを伝える貴重な遺産となったデハ27。気持ちの良い温泉につかるついでに、かつての面影を辿りに行ってみるのもいいかもしれません。

〈物件データ〉
設置場所:群馬県渋川市 峠の公園
公開時間:常時(外見のみ)

撮影データ:2015年8月2日16時頃