新川工場の駐車場には屋根がずらりと並んでいます。
屋根というものは普通は駐車場に並ぶものではありませんが、大道具の屋根は並んでしまうんですね。
写真ではわかりづらいですが貫板で形を作りそれに布を張っています。
ここには、
浅草歌舞伎“金閣寺”の屋根と、
新橋演舞場「雷神不動北山櫻」“朱雀門”の屋根が並んでいます。
国宝でも世界遺産でも何でも作っちゃいます。
大道具の中でもこれらの屋根を作れるようになるにはかなりの熟練を必要とします。
これは“金閣寺”の屋根裏というか、二階部分の天井。
縦横に打ってある黒いものは“たる木”と呼ばれるもの。
本来は屋根の頂点のむな木から勾配に並べて板などを乗せ、屋根を形作る大事な構造なのですが、大道具の場合は見せかけです。客席から見えるところだけくっつけています。
「そんなのいんちきじゃないか」という声も聞こえそうですが、ここでは「ほう、そういう知恵があるのですか」という声だけ受け付けることにしたいと思います。
上のほうの左右に斜めに打ってあるのが“すみ木”
これも同じく見せかけです。
「そんなの手抜きじゃないか」という声も聞こえそうですが、ここでは「ほう、とても見せかけには見えませんよ」という声だけ受け付けることにしたいと思います。
たる木とすみ木の内側の部分は、二階の天井裏になります。
ここは客席からはほとんど見えない部分です。
この二階屋根裏を舞台で是非観てみたいという方は、夜の部最前列の予約をお願いします。
しかも見えるのは一瞬です。
芝居の後半、御幕が開いて慶寿院尼が登場したときだけチラッと見えます。
コックリしているとすぐに見えなくなってしまうので注意してください。
この一瞬のために金紙を貼り付け、雲の絵が描いてあります。
ここは手抜きなしです。