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[講演会の模様]

4/10 大阪で聖書協会が、現在進行中の聖書改訂について講演会を開催した。私は所属教会末日聖徒イエス・キリスト教会で参加希望を出したところ、整理券が届いたので梅田スカイビルへ出かけた。講師は新約翻訳担当の津村春英氏(大阪夕陽丘学園短大学長)で、大変有意義な学ぶ機会となった。110名が参加した。

この度の新しい翻訳について、日本聖書協会(JBS)は新しいと言っても口語訳や新共同訳を中心に過去の翻訳の労苦や業績の上に立った集大成と言えるものと言う。新共同訳がナイダの動的等価説の影響を受けて、解り易さを目指したもので冗長な所も多いとされるので、より引き締まった、格調の高い美しい日本語を生み出そうとしている。

また、1 新共同訳後30年が経過しようとして日本語が変化している、2 ギリシア語新約聖書ネストレ・アーラント改訂28版が出版されたのを反映する、3 ここ数十年の神学の成果を取り入れる、4 礼拝(朗読、聞く)に適応した翻訳を出版する、という目標を掲げている。

この日講演した津村氏は、新約聖書のギリシア語本文(ネストレ=アーラント版)に詳しく、2012年に28版が出て、公同書簡だけでも34箇所本文の変更が見られ、そのことからも改訂が必要であることを訴えていた。例えば、I ヨハネ5:18 「アウトン」(彼を)はシナイ写本などをもとに「へアウトン」(自分自身を)とするよう改訂されたので、「神から生まれた者は自分自身を守り、それで悪しき者が彼に触れることはないであろう」という訳になるだろう、と話された。また、ヨハネ第一の手紙は極めて技巧的で、交差対句法(キアスムス)を含むヘブライ語の修辞法が多用されているので、翻訳に反映されるものと思われる。

ほかに本文批評の面から改訂される例として、ヨハネ1:3,4 で従来「この言に命があった」と訳されていたのは、「言にあって生じたものは、命であった」と訳すのが正しいと言う。また、訳語の面で理工系であった氏は、「真鍮」は「青銅」と訳すのが適切であるという指摘もされた(黙18:12)。

この度の新しい翻訳は、脚注に別の写本の読みや直訳を参考に付記するようになる。

今回の改訂は、前述のように礼拝に適した訳をという側面もあり、翻訳プロセスに朗読チェックが入り聞いて分かる日本語を目指す。例えば、文脈から分かる不要な代名詞の繰り返し(「彼は彼の・・」など)を避けるなど。講演ではそのほか、時間の許す範囲で改善すべき箇所、問題となる箇所を解説された。

氏の講演は久しぶりに歯切れの良い大学レベルの講義を聴く思いがし、楽しかった。津村師は牧師を務める傍ら、同志社で修士、聖学院で博士課程を終えたというエネルギーにあふれた人で、日本の神学界を率いていく次世代の学者であると感じた。なお、翻訳進行中の新しい聖書は2018年完成の予定である。


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