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2012年7月米誌によるモルモン教会財政状況

2013-04-15 22:24:18 | モルモン教関連
モルモン教会(末日聖徒イエス・キリスト教会)の財政状況はたびたび注目されるテーマである。なるべく最近の状況について情報を掲載しておこうと思ったので、1年以上前になるがビジネスウィーク2012/7/18付の記事「モルモン教会はどのように資金を得ているか」から要約したい。

冒頭に2011年3月モルモン教会が完成した巨大なモール「シティクリークセンター」に触れ、これは新しい財源として見ているのではなく、ソルトレークシティの都市としての荒廃を防ぐためであるという、キース・B・マクマリンの言葉を引いている。マクマリンは37年間管理監督会にいた人物である。神殿の向かい側にあるこのモールは3年間20億ドルかけて完成し、百軒近い店舗、レストランなどをテナントとしている。

巨大なモール「シティクリークセンター」

このモールを管轄する「デゼレト管理法人」(Deseret Management Corp. 略してDMC)は6つの傘下企業から推定12億ドルの年収がある。その企業は新聞社、ラジオ、TV局、出版社、デジタルメディア社、保険会社で、総資産33億ドルに達する。ほかに農牧畜部門があって米、英、加、豪、中南米に広大な農地・牧場を持って操業しており、また不動産部門も運営している。モール、駐車場、事務所ビル、住宅などを所有、開発、運営している。例、ハワイ、ユタに大規模な企業を所有している。以上はいずれも営利企業である。上記DMCは2千人から3千人雇用しており、年間収入は12億ドルになると言う。

よく知られたハワイのポリネシア文化センターは、生きた博物館、教育関連施設として非営利団体として所有しいている。2010年、売上2千3百万ドル、寄付3千6百万ドル、純資産7千万ドルと見られている。

LDS教会の財政と事業(諸企業活動)について執筆中のD.マイケル・クインは、「モルモン神学では伝統的キリスト教やユダヤ教と違って霊的側面と物質的側面を区分しない。・・・モルモン教の指導者の世界観では貧者に施すのも百万ドル利益を得るのも同様に霊的な働きなのである」と解説している。

ここで教会の資産保有機構を英文のまま引用する。

中段左から2つ目がDMC

次に注目しなければならないのは、教会が投資機関を通して収入を得ていることである。「エンサイン頂上顧問」(Ensign Peak Advisors)と呼ばれる企業が国際株式、現金、投資基金の扱いに通じた資産運用のプロを雇用している。彼らは相互に醸成された信頼に基づいて多くの取引相手と毎日何十億ドルもの額を取引していると伝えられる。

米国の法律によれば、宗教は帳簿を公開する義務がなく、LDS教会は1960年代初め、財政の報告をやめた。それでメディアが推測値を記事に組むようになった。1997年タイム誌は、LDS教会の総資産価値を300億ドルと推定し、毎年50億ドルの什分の一収入がある、そして少なくとも60億ドルの株式・債券を所有していると報じた。そして最近ロイターとタンパ大学のクレーガン(Ryan Cragun)教授は、(2011年の)教会の資産価値を400億ドル、什分の一収入を80億ドルと見ている。二つの記事から14, 15年で資産、什分の一収入面の急速な増加が読み取れる。なお、1991年アリゾナ・リパブリック紙は会員から43億ドル、企業群から4億ドルの収入があると試算していた。

教会傘下の企業群は収入の十分の一を教会基金に納める。しかし、時に反対の方向にお金が流れることもある、とマクマリンは言う。マクマリンは教会員の納める什分の一は1ドルたりとも営利企業に行くことはないと言うが、そのことについて教会員は知りようがない(英文記事執筆者)。教徒の文化人類学者デイモン・M・スミスは什分の一納入の用紙に、「献金は指定された枠で使用されるよう努力が払われるが、献金は全て教会の所有となり、使途は教会の使命を果たすよう教会の判断に委ねられる」とあることを指摘している。(この断りは現在日本では振り込み用紙に記載されていない。)

なお、LDS教会が人道支援に費やす金額について、私はその額に驚いていた。しかし、1985-2010年の25年間に178カ国・地域以上に13億ドル支援してきた額は年間5千2百万ドルに相当し、教会の年間収入の0.7%に当たる。その率は連合メソジスト教会の29%を大きく下回るとクレーガン(Cragun)その他の推定をあげている。

情報源
Businessweek 2012/07/18 (online), “How the Mormons Make Money” by Caroline Winter. http://www.businessweek.com/articles/2012-07-10/how-the-mormons-make-money#p1

参考
本ブログ 2012.02.22 モルモン教会の財政[資料]


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4 コメント

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お金の問題 (onuma)
2013-04-16 16:36:39
毎回刺激的な情報を提供いただけて感謝しています。今回のテーマは教会を外形的に支える「お金」の問題ですので、ある意味では話したくない気分になるテーマかもしれません。「天に宝を積み上げる」意味での献金実行者においては、その先がどうなったのか?一旦手元から離したお金の行く末を気にするのは「いかがなものか??」みたいな気分が教会員の大部分の感慨でしょう。
執筆中のD.マイケル・クインは、「モルモン神学では伝統的キリスト教やユダヤ教と違って霊的側面と物質的側面を区分しない。・・・モルモン教の指導者の世界観では貧者に施すのも百万ドル利益を得るのも同様に霊的な働きなのである」と解説している。
これには気になる点があります。ユダヤ教の側面においては「物質的と霊的との二分法を持たない」ことこそキリスト教との大きな違いであるはずです。これは飛ばして。
「天に宝を積む」ことにおける、我々のこの世における地上での何となく卑しき世界観を植えつけられるのはまた問題でしょう。「天の宝」は、この地上でしか得ることのできない「こころの変化」でしかあり得ないからです。ですので、「献金」がこの地上では、「こころの変化」をもたらすような壮大な仕掛け「教育」にこそ注がれるべきです。こころが動くのはこの地上での生活と体験とかですので。果たして、1400万人のうちの300万人を超えてるだろう「活発なメンバー」にこの壮大な仕掛けがどこまで影響を持っているのか?これが前回私が提言した「我々の成果とは何か??」に結びつくはずです。従って、上記の「百万ドル利益を稼ぐのも霊的な行為だ!」でばなくて、そのお金で「何を皆に提供しているか!」が霊的な活動のはずです。

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常に問われる (numano)
2013-04-16 22:51:42
ありがとうございます。鋭いご指摘です。絶えず問われる重要な質問であると思います。

最近、ある求道者が神殿の写真を見せられて、そのような豪奢な建物にお金を費やすより貧しい人たちを助けるために使って欲しい、と言ったと聞いています。率直な感想で案外当たっている、外部からの見方かもしれません。
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この世に宝を蓄える ()
2013-04-24 11:02:46
同じ宗教界で、高野山の真言宗で30億円の投資が行われていたと言うことが問題になっている。

http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201304210430.html

このようなことが問題になるのは、真言宗の「信仰的良心」が機能しているからだと思う。

モルモンでは、それが機能していないので、問題にもならない。

宗教法人が、利殖による利益を求めるのは、悪いことだと断言する気は無いが、少なくとも、日本では、宗教法人であるがゆえに、非課税とされているのだから、世間が納得行くお金の使い方が求められるのは当然だと思う。

逆に言うと、宗教法人にも課税すべきでです。
投資や資金運用は明らかに営利行為ですからね。

ま、多くの政治家は、少なからず、宗教票をあてにしているので、国会で議決される事は無いと思いますが。


ただ信仰によりマナを得て神の道を歩むのが真の宗教者かとおもいます。

宗教者の信仰と気概がなくなったんでしょうね・・・。
神に頼らず金に頼る様になたらおしまいです。

幹部自ら偶像礼拝を行っているって事ですね。
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これはどちらに対して? (沼野治郎)
2013-04-26 22:41:15
先ず、明らかにしておかなければならないのは、lds教会の財政について、それは営利活動と非営利活動に分けられて、当然営利活動は課税されているということです。

二番目に、異議、疑義が出始めているにせよ、lds教会には米国社会で孤立し、存続をはかるために独自の経済感覚が生まれ、富をも重要視し活用する伝統が受け継がれているという背景です。これについてクインも理解し、詳述するものと思われます。

裁く(上記コメント最後の行。これはそれとも高野山の真言宗のこと?そして6行目)前に情報をきっちり得て、控えめで紳士的な記述を願いたいものです。


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