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イザヤ書理解を深めてくれた参考文献10点 [ 1 ]

(時系列、初めの5点は米著者、後の5点は邦人が著者)


[Donald Parry, John Welch, 'Isaiah in the BofM' 1997]

I アメリカの著者(2~5末日聖徒、いずれもBofMとの関連において)

  1 Walter.E. Rast (ラスト)、樋口進訳「旧約聖書と伝承史」1987年(原書は1972年)。

第二イザヤに焦点。「封じられた」(8:16)というのは、預言者の言葉が全ての人々に自由になる時が来るまで弟子たちに託され、彼らの間に封じられたことを意味する、と言う。救済の託宣は歎願の調子から確信へ変わっている、と観察する。原題: Tradition History and the Old Testament.

 

 2 George D. Smith, Jr.  ‘Isaiah Updated,’ Dialogue Vol. 16, No. 2 (Summer 1983)

普遍的なメッセージは後世にも適用できるが、先ず第一にイザヤが当時意図した意味に焦点を当てるべきである。イザヤ48, 49, 50-52, 55章がモルモン書に引用されているのは、時代錯誤の引用である(ニーファイの出立が約600B.C., 上のイザヤ書部分は586B.C.以後に書かれた)。執筆当時までの末日聖徒のイザヤ書解釈を批判的に俯瞰している。

 

 3 David P. Wright, ‘Joseph Smith’s Interpretation of Isaiah in the Book of Mormon,’ Dialogue, Winter 1998. 26頁にわたるブランデイズ大ヘブライ語聖書担当教授による分析。JSはNTの例に似てイザヤの言葉を自分の時代に当てた預言と見ている。またJSは学問や研究成果を無視し、霊感で聖書の意味を提示していると考える。イザヤ書が難解に感じられるのは神託が導入説明なく詩的に表現されていることにもある、と指摘する。

 

 4 Grant Hardy, ‘Understanding The Book of Mormon, A Reader’s Guide,’ OUP, 2010.

イザヤを引用したニーファイは、残されたイスラエルを回復し地の四隅に救いをもたらす光となるように導く使命を託された、そのために記録を残したと見る。それでニーファイのイザヤ書引用、ニーファイ自身の預言、ヨセフに関する預言が結びつけられ、統合されたのだと説明する。引用に矛盾があっても、BofMはIsaiahについてmidrash的作業をしたと考えるか、 歴史(古今)の隔たりを超越する視点が提示されているのではないかと書く。

 

 5 David Bokovoy, “The Truthfulness of Deutero-Isaiah: A Response to Kent Jackson” 2016. BofMにイザヤ書40章以降から引用されていることについて、読者はBofMがジョセフ・スミスを通して啓示によってもたらされた宗教書であることを認め、イザヤ書40-66章を含めて預言者がミドラシュ*的な取り組みを行なったと理解すればよいのではないか、と見る。(*ミドラシュはユダヤ教ラビが聖書などを注釈すること )。

 

  • - - - - -   - - -

 上に見られるように末日聖徒の中にも研究者から始めて、イザヤ書が40章以降別の預言者によって書かれたことを認める人が出始めている。そしてBofMの引用に矛盾が生じてくるのは、一種ミドラシュ的文書と見ればよいのではないかという提案がなされている(G. Hardy, D. Bokovoy)
 
 [註] ミドラシュは紀元1世紀ユダヤのラビが行なった聖句解釈の方法で、意味を探り出そうと努め、聖句の間隙を埋めようと想像力を用いた。自分たちが置かれた環境・文脈に適応するように聖典を引き寄せて(update して)解釈した。G. Hardy, p. 69)。

 

 



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コメント
 
 
 
イザヤ書もミドラシュ的 (オムナイ)
2021-09-01 12:38:54
>後の5点は邦人が著者

紹介していただけるのをお待ちしてます。

多くの末日聖徒の研究者や学生が第二・第三イザヤを認め始めているとか。

護教的、批判を含むさまざま情報を自分なりにまとめてみます。

イザヤ書を含む旧約聖書は申命記史家的な集団が編集したものであって、それ自体がブラッシュアップされた宗教書なのでしょうね。

モルモン書のイザヤ書の抜粋は2章からはじまりす。
それは1章は後年挿入された文書かもしれないとのこと。

JSが事前に情報を入手していてそうしたのかもしれないし、
真鍮版は2章の情報から始まっていたのかもしれませんが。

初期のオリジナルイザヤ書があって、おそらくイザヤの弟子たちであった第二・第三イザヤの作者は、
オリジラルのイザヤ書をミドラシュ的に解釈した文書を作成した。

その文書を申命記史家的な集団が1-66章のヘブライ語イザヤ書に纏めた。と考えるのが自然な感じがします。

コンピューター解析によってイザヤ書全体は単独の著者の可能性が高いらしいですね。

申命記史家的な集団が全体を編集したと考えれば不都合はないかも。
 
 
 
手に余る ()
2021-09-01 13:20:27
>多くの末日聖徒の研究者や学生が第二・第三イザヤを認め始めているとか。


たぶんオムナイさんが数を数えるときは、指を折りながら、一、二、三、四、五、・・・って指が足りなくなると、沢山になるんでしょうね?


NJさんはこう書いてる。

>上に見られるように末日聖徒の中にも研究者から始めて、イザヤ書が40章以降別の預言者によって書かれたことを認める人が出始めている。

5人ぐらいで「多くの研究者・・」って事は、末日聖徒の研究者は10人も居ないって事ですかね?


私はNJさんの書いたのを読んで、「イザヤ書が40章以降別の預言者によって書かれたことを認める人は、まだほとんど居ない」って解釈したんですけど。

丸い玉子も切様で四角、物も言い様で角が立つ・・・

あ!角立てたかも?
 
 
 
Re;手に余る (オムナイ)
2021-09-01 20:26:52
>5人ぐらいで「多くの研究者・・」って事は、末日聖徒の研究者は10人も居ないって事ですかね?

いや、そちらではなく、こちら。

>護教的、批判を含むさまざま情報を自分なりにまとめてみます。

fairlatterdaysaints.org/answers/Book_of_Mormon/Anachronisms/Biblical/Deutero-Isaiah#Question:_How_do_we_explain_multiple_.22Isaiahs.22_and_the_Book_of_Mormon.3F

多くの末日聖徒の学者や学生は、イザヤ書の一部が複数の著者に
よって異なる時期に書かれたことを示唆する主流の聖書学者に同意するようになりました。
ーーー
あ、とうとうfairmormonがfairlatterdaysaintsに。。。
外人さん言いにくくないのかな。

>コンピューター解析によってイザヤ書全体は単独の著者の可能性が高いらしいですね。

ちなみにこれはここから。

「単一のイザヤ」とモルモン書の理論
保守的な見方をしてイザヤの一致を主張する人もいます。
これは、複数の著者に関する理論が正しくないことを示唆しています。
ーーー
単一イザヤ論と複数イザヤ論。
融合可能かも。
 
 
 
死海文書に2人目の書き手 (オムナイ)
2021-09-02 20:23:56
興味深いニュースがあります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7e3994ae9599d5f44c2fd929368b1f3838cf8d72

AIを用いた解析により、これまで一人の書き手による文書だと考えられてきた死海文書の巻物に、もう一人の筆記者の存在が浮かび上がった
・・
■ 7メートルに及ぶ貴重なイザヤ書を分析した
ーーーー

これは古代にも旧約聖書編集委員会みたいな団体があって、
構成や写本の作成も緻密に計算されたことを示すのでしょうね。
 
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