きつねの戯言

銀狐です。不定期で趣味の小説・楽描きイラストなど描いています。日常垢「次郎丸かなみの有味湿潤な日常生活」ではエッセイも。

銀狐通信

2013-10-17 22:19:42 | 日記
時空城へようこそ。

この迷宮の案内人・銀狐です。

不定期連載小説「Punishment―疑わしきは罰せよ―(8)罪と罰」完成・投稿しました。

まるでB級映画のような体裁を取っていますが、それはあくまでも精神世界の主題を効果的に表現するための演出であり、茶番劇にしかならなかったのはいかんせん哀しいかなきつねめの筆力の乏しさ故で、忸怩たる思いです。

しかし、いつかは書こうと思いながらも機が熟さず今までは書けずじまいだったテーマで曲がりなりにも作品として完成したのは至上の喜びであります。

私事で恐縮ですが、最初に小説を書き始めた頃は、創作は自分探しの一環でした。この1年半の間に現実世界でもいろいろな出会いや別れ、そして再会を通じて少しは成長できたかなと思います。

その中で今まで自分の中でどうしても解決できないいくつかの過去のトラウマがあったのが、解決は出来ないまでも幾分はほぐれ、きちんとした答えまでは出せないものの、何となくあまりこだわらずに済むようになってきたのは、物語の形にすることで俯瞰できるようになり、近視眼的なものの見方に固執しなくなって来れたおかげだと思います。

自分が気に病み続けてきたものは単に自分が忘れ去ってしまうことに対する罪悪感からの執着に過ぎず、他人は例えその時の当事者であってもそれほど気にしている訳ではないと気付かされました。

事実は何年何十年たとうと消えたり変わったりすることはないけれど、良かれ悪しかれ事実の記憶はあってもその当時の感情はいつしか薄れ、風化して行くものだと言うことです。

日々生きて暮らしていく中でいつまでも過去に囚われていてはやっていけません。

どんなに強い怒りや憎しみも深い悲しみもいつしか薄らいでいくものなのです。

しかし、言葉は悪いですが、いわゆる被害者的な立場なら忘れて水に流してもいいけれども自分がいわゆる加害者的な立場であった場合、忘れてしまうことには罪悪感が付きまといます。

忘れたからと言って事実がなかったことになる訳ではないのだけれど、何か後ろめたくて無意識に忘れてはいけないと反芻する。

そんな精神のメカニズムによってトラウマは形成されるのです。

今回は自分の中では最大の未解決のトラウマについて整理しようと思いこの物語を書きました。

今までのトラウマと同じように解決はしないまでも、何とか消化できないかと試みてみた訳です。

今はまだその手ごたえを感じるには至りませんが、少々心が晴れた気がします。

やっと肩の荷が下りたというか…。

お喋りが過ぎたようです。最後に少々解説を。

既にお気づきの方も多いと思いますが、主要な登場人物のネーミングは「不思議の国のアリス・鏡の国のアリス」がモチーフです。

ラビット=白ウサギ、ハッター=イカレ帽子屋、マウス=眠りネズミ、プス=チェシャ猫、ドルダム&ドルディもそうです。

女性キャラのセリア、エシラ、レイカは全てALICEのアナグラムです。

他はカルマ=ドイツ語の「業」、ロード=英語の「主」、クラモチ=きつねめの実名の姓とよく似た音なので電話などで聞き間違えられることがある姓です。

今後のことについては少々思うところもあるのですが、今のところは言及せずにおきます。

よろしければまた時空城へお越し下さい。

心よりお待ち申し上げております。

Punishment―疑わしきは罰せよ―(8)

2013-10-17 21:26:09 | 日記
(この物語はフィクションであり、実在の個人・団体・地域・時代とは一切関係なく、現実の制度・法律・科学的事象とは異なります。)

【ここまでのあらすじ】致死的伝染病原因ウイルスと、人をモンスター化する副作用を持つ治療薬を盗んだ男・ロードは政府特使・セリアとエシラの護衛を努めるレジスタンスのリーダー・ラビットの親友だった。その仲間たちはモンスターされた兄を自ら葬ったマウス、妹を探すハッター、姉にも等しい人を探すプス。いよいよロードとの会談の前夜、彼らと本当の仲間になれたと思えたセリアとエシラは彼らに問うた。「親の犯してしまった罪は子もその責めを負うべきなのか。」と。

(8) 罪と罰

 「あなたたちは本当にクラモチ博士が罪を犯したと思うのかい?」
ラビットが問うとエシラが怒りに満ちた表情で声を荒げた。
「ええ!金と女にだらしなかった父ならやりかねないと思っているわ。限りなく黒に近い灰色だと。
父の所為で…私は全ての友達を失くした。
もう二度とアカデミーを訪ねることも出来ないし、友達は皆連絡が取れなくなったし、目の前の人がアカデミーの関係者ではないかと思っただけで恐ろしくて他人と関わることもできなくなったわ!
父のことは一生許さないし、絶対に父のために手を合わせて祈ることもない。」
「セリアもそう思うの?」
セリアはラビットの問いに静かに答えた。
「…わからない。というより、言葉は悪いかも知れないけれど、どうでもいいの。
父が無実であろうとなかろうと、何が変わる訳でもない。
父が罪を犯したからと言って去るような友達なら初めから本当の友達なんかじゃなかったと思うし。
ただ、仮に父が本当に罪を犯したとしても、それ故に私たちも責めを負うべきものなのか、と思うだけ。」

 「世の中にはいろんな人が居ますからねぇ。どいつもこいつも自分のことは棚に上げて人のあら捜しをする奴ばかりじゃないですか。
他人(ひと)に嫌われることを怖れなければいいんですよ。万人に好かれようなんて思わないことです。どのみちそんなことできっこないんですから。」
自分を曲げてまで人と群れるよりは自分を貫いて孤立する方がいい。そんな生き方をして来たハッターらしい意見だった。

 「誰に許されたいの?死んでしまった親?去って行った友達?見知らぬ他人たち?神様?それとも自分自身?
どんな時も自分だけは自分の味方でいなくちゃ。そうでなきゃ自分の居場所がなくなっちゃうよ?」
直感のみを信じ、自分の心の声に従って行動し、ありのままの自分を受け入れてくれる場所をやっと見つけられたプスは、『誰の許しも乞う必要はない。』と言いたかったのだろう。

 「許されなきゃだめなの?何故許してもらわなくてはならないの?だって、そもそも君たちが責められるべきものではないはずでしょ?
例え親がどんな罪を犯したとしても、その責めは子供に負わすべきじゃない。
皆理屈じゃそうだとわかってはいるけど、人の心というものはそう簡単には割り切れないものなんだろうけどね。
誰かの所為にしてその誰かを責めなきゃ気が治まらない。
落としどころが必要っていうことなんだろうけど、言ってみればそれは生贄、人身御供みたいなもんだよね。
そうして責められた人が亡くなってしまったらその身内を責めることで身代わりにしようとするんだ。」
自分の所為で兄を失ったのだから自分はその報いを受けてしかるべきだとと思っているマウスは、『許されるべきではない者が居るとしても、その罰を受けるべきは罪を犯した当人だけでいい。』と言いたかったのかも知れない。

 「…あなたたちの気持ちはわからなくはないけど、何をどう考えたって亡くなってしまった人が生き返る訳でもないし、起きてしまったことを元に戻すことは出来ないんだよ?
それよりも今からでも出来ることをしようよ。今何をしたらいいか、何をすべきなのか考えてみようよ。」
親友が罪を犯すのを事前に止められなかったことを悔やんでいるラビットは、そんな自分を姉妹に重ね合わせて、まるで自分自身に言い聞かせるかのようにそう言った。
『卑屈にならずに堂々としているべきだ。どうにもならない過去や未来のことを思い悩まず、今最善と思えることをすればいいし、もしそれが違っていても気づいた時に何度でもやり直せばいい。』
本当はラビット自身が心の中で誰かにそう言って貰いたいと無意識に願っていた。
「俺の知っているクラモチ博士は立派な学者だった。俺は個人的には博士を信じたいと思う。
もちろん博士も人間である以上野心や欲はあったろうし、完璧な人間なんてどこにもいないんだから弱いところや腹黒いところがあったとしたって当たり前だよ。
自分なりに精一杯懸命に生きて来て疑われ罪に問われて裁かれた上推定無罪のはずなのに世間から責められて、それでもきっと人間としての尊厳だけは失いたくなくて、自ら死を選ぶしかなかったんじゃないかな。
今なら例え本当に博士が罪を犯していたとしても俺は博士を許せる気がする。
人間は過ちを犯すものだ。時として酷い間違いや取り返しのつかない間違いを犯してしまうこともあるだろう。
『魔がさす』なんて言葉で片付けてはいけないかも知れないけれど、謝って済むことばかりではないかも知れないけれど、誰だっていつ自分もそんな風に間違いを犯すかも知れないというのに、神でもない普通の人間が罪を犯してしまった人を責めてもいいものだろうか。
犯してしまった罪は償うべきだろうけれど、他人が贖いを強要したり神に代わって罰したりしようとすべきものではないんじゃないか。
…こんな余命いくばくもない体になってみると、世の中の見方が変わるもんなんだよ。
俺たちは皆それぞれに未来に希望を持っていたし、大切な人も居たけど、それらの全てを失った今、人間として最後まで決して譲れないものは何かと考えて来て、それは人間としての誇りだと気付いたんだ。
だから俺たちは人類のためとか世界のためとかいうことじゃなくて、自分が人間としてなすべきことをしようとしているだけ。
あなたたちもそれでいいじゃないか。
罰だとか罪滅ぼしだとかそんな風に思わなくていんだよ。
あなたたちはたまたまウイルス抗体を持っているから選ばれてここへ来た。
俺たちはたまたま土地勘と戦闘能力を買われてあなたたちを護衛することになった。
あなたたちはウイルスと治療薬を回収すればいいし、俺たちはロードを倒してあいつの暴挙を止められればいい。
ただそれだけのことなんだよ。」

 夜更けまで語り合った後、ラビットたち4人は交代で見張りに立ちセリアとエシラは小屋の中で眠るうちいつしかしらじらと夜が明けて来て終に決戦の日の朝を迎えた。

 怪しげな集団に占拠され、モンスターが徘徊する町とは信じられないほど穏やかな朝だったが、それは恐らく嵐の前の凪の静けさ。
緊張のためか6人はどことなく固くなっていた。終に今日この馬鹿げた異常事態に終止符が打たれる。いや、この手で終わらせなくてはならない。

 準備を整えた6人は別荘地の留守居のために建てられた小屋を出て、この高台の中でも最も高い場所に位置するこの町最大の洋館を目指す。そこにはフ―テッド・ピープルの首領・ロードと名乗る男が待っているはずだ。
その男はかつてはセリアとエシラの父・クラモチ博士の研究室に所属し、ラビットの親友でもあり、NIVI事故で亡くなったラビットの妹の恋人でもあった男だ。

 ロードが居るその洋館に着くまでは不気味なほどに静かだった。
巡回するフ―テッド・ピープルもモンスターも居ない。
ロードから待機命令が下って皆それぞれに捕虜を監禁している洋館で息を潜めて会談の成り行きを見守っているのだろうか。

 洋館の外の門は開放されていて、一行が玄関前まで来るとドアが内側から開けられて幹部らしい男が彼らを出迎えた。
「お待ちしておりました。ロードが奥の部屋でお待ちです。どうぞ。」
そう言ってその男が先に立って廊下を進むのに従い、一行が広間の扉の前まで来ると男は立ち止まり、振り返って言った。
「自分一人だけであなたたちと話をしたいというロードの意向なので私たちは同席しません。中へどうぞ。」
男がドアを開け、一行が部屋の中に入るとドアは外から閉じられ、ガチャリと鍵を閉める音がした。

 「ようこそ。私はロード。君たちがセリアとエシラ、『人類の敵』と呼ばれたカルマ・クラモチ博士の娘か。
全く君たちの勇気ある行動は称賛に値するね。父と同じ抗体を持つ体だからと汚染された町にウイルスの回収に来たという訳だ。ご苦労なことだな。
汚い仕事は誰かにやらせ、もし失敗したとしても自分たちのリスクやダメージを最小限に留めるとは、いかにも政府のやりそうなことだ。」
椅子から立ち上がって一行を迎えた長身で痩せ型の青年は古めかしいフード付きの僧服に身を包み、黒紫色の髪と黒曜石のような哀しくて暗い瞳を持っていた。その言葉は今までのような機械で変えられた声ではなく、暗く沈んだ青年の肉声はどこか哀しげで投げやりな響きがあった。
「そして、本当に貴様が一緒だったとはな。ユアン。」
話し掛けられたラビットの顔色が変わった。
「やはりお前だったのか!ジュード!」
ユアンはラビットの実名であった。その名で彼を呼ぶのはロードがかつての彼の親友・ジュードであることの揺るぎない証だった。
「もうその名は捨てた。貴様の親友だったジュードは彼女と一緒に死んだんだ。今のオレはただの亡霊だ。
…クラモチ博士の娘との話し合いを打診してきたのは昔オレの親父の秘書だった男で今は特務機関のトップだ。
もちろんオレの正体も知っている。政府高官の私生児が主犯だなどと絶対に公には出来ないがな。
その時、ユアンが…貴様が一緒に来ると奴のメッセージには書かれていた。
だからこの話を受けた。貴様にだけはオレの真の目的を知らしめねばと思ったからだ。
言ってみれば、オレの遺言だよ。」
ロードは哀しそうな眼をしてラビットを見つめていた。
「ジュード、俺にはお前が何を言っているのかわからない…お前は一体何をしようとしているんだ。」
ラビットは目に涙を滲ませて悔しそうな顔で言った。

「これは壮大な無理心中なんだよ。ユアン。
実のところオレは『選ばれし者たちだけの新世界』なんてものには全く興味はない。
オレの目的はただ一つ。あわよくば全人類を道連れにした自害だ。
彼女はNIVI事故に巻き込まれて亡くなった。
しかしあれはただの事故じゃない。
政府が臭いものに蓋をするために仕組んだ狂言だ。
そして口封じのために職員や患者は皆殺しにされた。
もしもクラモチ博士が抗体を保持していなかったら彼だって殺されていた。
博士を生かしておかねばならんが野放しにしておくのは危険だからと全ての責任を博士に擦り付けた上で狂人と見せかける工作をして身柄を拘束した。
全ては政府のやったことだ。
オレは事故の後生前の彼女のことを調べていて真実を知った。
でも知り得たことを普通に訴えようとしたらオレは殺され、証拠は隠滅されて真相は闇から闇に葬られるのがオチだ。
だからオレは親父のIDを利用してウイルスと治療薬を盗み出し、インターネットで革命の話をでっち上げ若いエリートを煽った。
ことが大きくなればなるほど揉み消すのは難しくなるからな。
この館に居る幹部たちは皆NIVI事故の犠牲者所縁の者でオレの同志だが、末端の構成員は皆革命熱に浮かされた狂信者だ。自分たちは選ばれし者だと信じている。
オレは彼女の仇がとりたかっただけ。いや、本当はただ自分を殺したかっただけかも知れない。黙って一人で死ぬくらいなら政府に一矢報いてやろうと思っただけだ。
貴様がオレと刺し違える覚悟でここへ来るのはわかっていた。だから最期に貴様にだけはオレの真意を伝えたかった。」

 「ジュード。お前は馬鹿だ。こんなことをして妹が喜ぶとでも思うのか?
お前が妹の分まで生きて幸せにならなきゃ、あの世で妹が悲しんでいるとは思わないのか?」
じっとロードの言葉を聞いていたラビットは涙を流して問いかけた。
「ユアン。彼女はオレにとって闇の中に差し込む明るくて暖かい一条の陽の光だったんだよ。
彼女が居ない世界は暗くて冷たい墓場の中と同じだ。無味乾燥で何もかも全てが色を失った世界には何の意味もない。」
ロードの言葉にはまさに亡霊のように生気がなかった。

 「だからって!この町の人たちやお前の嘘に騙された若者たちの命を奪うことは許されないだろう!
何故死ぬなら自分一人で死なない?ここに居る俺の仲間たちの家族も殺されたり怪物に変えられたりしたんだぞ!
お前も恋人を失って辛かったろうが、だからってお前と同じような思いを他の人たちにもさせていいということにはならないだろう!」
ラビットは怒りを顕にした。
実際にマウスはモンスター化した兄を殺さねばならなかったし、プスの養父母も恐らく生きてはいまい。

 「皆早かれ遅かれ死ぬんだよ。ウイルスに感染したらほぼ確実に死ぬ。治療薬を使えば命は助かるが心を失う。
そもそもこの治療薬はウイルスから人を救うために作られたんじゃない。
兵士をわざとウイルスに感染させた上で治療薬を与えると戦闘能力が高いモンスターになるという軍事利用目的で開発されていたんだよ。
この町で起こったことが知れたら当然このことは隠しきれなくなる。
ウイルスと治療薬の秘密を全世界に知らしめるんだ。そのためには必要なことだったんだよ。」
ロードの答えを聞いたラビットは拳を固く握りしめて爆発しそうな思いを必死に抑えながら言った。
「…お前がしていることと政府のしたこととはどこが違うんだ?例え政府の秘密を暴く目的があったとはいえ、何の罪もない人たちを巻き込んで犠牲にしたことに違いはないだろう。」
「言うなっ!貴様に言われるまでもなくオレが非道なことをやっていることは十分承知している。もうオレは末期症状だ。痣は殆ど消えてしまった。まもなくオレは死ぬ。だが別にオレの命如きで償えるなどとは思っていないし、償うつもりもない。そして貴様がオレを断罪する必要もないんだ。ユアン。」

 突然焦げ臭いにおいが鼻を突き、パチパチと何かが爆ぜる音がした。
(火事だ!)
窓のないこの部屋からは見ることが出来ないがこの時既に町中が火の海だった。大勢の人や獣の悲鳴が聞こえる。
扉を開けようとするが、鍵が掛かったままだ。マウスが銃で鍵を狙い撃つが、扉は頑として開かない。
「無駄だ。この部屋は防犯のために非常時はロックされるように作られている。その防犯システムが作動してしまったのだろう。
中からはどうしたって開けることは出来ない仕組みだが、外の連中が気づいて解除してくれる望みは薄い。端末に応答がないから、恐らく彼らはもう死んでいるに違いない。どうせ貴様らももう長くはあるまいし、その二人も敵地に乗り込む以上覚悟くらいは出来ていたろう。潔く諦めろ。」
ロードは落ち着き払って静かにそう言った。
「そんなっ…!」
ラビットがそう言いかけた時、広間の天井がガラガラと崩れ、瓦礫と共に落ちて来た炎が一瞬のうちに床中に燃え広がり、広間全体が炎に包まれた。炎は町全体を赤く染め上げ、貴族の別荘地だった洋館も急な坂道を下った先の民家も何一つ残らず焼き尽くした火の勢いは夕暮れ時になってやっと治まり、先程までの炎に代わって今は夕陽が町の焼け跡を赤く染めていた。
黒焦げになった柱がところどころにぽつりと残されているが、他は全て瓦礫の山のみ。人も獣も怪物も動くものは何一つない死の町の残骸だけが風に吹かれていた。

 「…そうか。わかった。」
眼鏡を掛けた男は短い通話を終えて端末を耳から外して言った。
「全て終わりました。」
「うむ。ご苦労。綺麗にカタがついたようだな。」
ジュードの父が答えた。
「ええ、こちらの筋書き通りに。」
眼鏡の男は薄い笑みを浮かべて言った。

 「臨時ニュースをお伝えします。謎の集団、フ―テッド・ピープルに占拠されていた×××町で大規模な火災が発生し、家屋は全て全焼、生存者は居ないということです。原因は現在調査中ですが、この火災により主犯の通称ロードとフ―テッド・ピープル全員、捕虜となっていた町民全員に加えて、政府特使のセリア・クラモチ、エシラ・クラモチ両名及び現地ガイド兼ボディガードを努めていたレジスタンスの青年4人も死亡した模様です。政府筋によると×××町に蔓延していたCDウイルスは完全に死滅したので周囲に影響を及ぼす危険性は極めて低いとのことです。
繰り返します…。」
 TVのキャスターが読み上げるニュースを確認すると、高官はリモコンのスウィッチをオフにした。
「報告を聞こう。」
ちらりと視線を向けた先には件の眼鏡の男が立っている。
「彼らの手に渡ったウイルスとその不完全な治療薬とは別にオリジナルのウイルス及び完成品の治療薬は我々が厳重に保管しています。
主犯の男はご子息とは別人であるということにして裏付けも完璧に作り上げておきました。
スパイとして潜り込ませた放火実行犯の男には充分な報酬を与えこれから全くの別人として暮らせるよう手配済みです。
当分は監視をつけて泳がせますが、折を見て事故を装って処分した方が安全でしょう。
あの町は瓦礫を処理した後クラモチ姉妹と全町民の名を刻んだ慰霊碑を建造します。」
うんうんと頷きながら聞いていた高官が皮肉な笑顔で言った。
「これで禊は済んだということだな。騒ぎが治まれば皆じきにウイルスのことも事件のことも忘れてしまうだろう。
火事で絶滅したはずのウイルスとその抗体から作った兵士を最強の戦士に改造する薬があるなどと誰も思うまい。
何もかもが全て織り込み済みとはな。ジュードにNIVI事故で死んだ恋人が居たのをいいことに利用しようとは。ジュードもまさか苦労して自分で手に入れたつもりの情報は全部操作されていて、わざとウイルスを盗ませるように誘導されていたとは思わなかったろう。あの馬鹿息子も、クラモチ姉妹も、レジスタンスも、皆君の掌の上で踊らされていた訳だ。よくもまあ君の計画通りうまくことが運んだものだね。本当に君の仕事はいつも完璧だな。私は君を高く評価しているのだよ。」
「恐縮です。」
眼鏡の男は無表情のままフレームを指で押し上げながら言った。

 法で裁かれる罪、裁かれない罪。人として許される罪、許されない罪。誰が断罪するのか。誰が処罰するのか。
人は過ちを犯す。それを過ちと認識しているかどうかは別として、神に非ざる人は皆過ちを犯すものだ。
その過ちにより人は罪に問われ罰を受ける。

―本当に?―

 罰せられない罪は如何にして償う?贖いきれない罪は何を以て許される?
一死を以て償うのか、罰を逃れるために命を絶つのか。
償わずして逃げた者の罪は誰が負うべきなのか。
親の罪は子供の罪。子供の罪は親の罪。

あの日炎の中で理不尽に奪われた7つの若い命は何故失われねばならなかったのだろう。
彼らを騙しその命を奪った者たちの罪はいつ裁かれるのか。
騙す方が悪いのか、騙される方が悪いのか。

最後の審判の日に神の国に招かれるのは誰?
地獄の業火に焼かれ永遠に氷漬けとなるのは誰?

罪があり罰がある。
罪なき者にも罰が与えられ、罪を犯しても責めを免れる者もある。
この世では罪と罰が捻じれて絡み合う。そして皆が密かに心の中で呟く。
―疑わしきは罰せよ。

(おわり)

10月16日(水)のつぶやき その2

2013-10-17 01:20:03 | 日記

スレイヤーズにP4、ありゃりゃぎさん…最近のパチスロはどこへ行きたいんだろう…


だれでも簡単!Twitter自動つぶやき設定ができるサイト!AutoTweet(オートツイート)! autotweet.chatwho.net 定期的につぶやくbotやURLの宣伝にも使えます! 549819892


【定期】妖狐の森から来ました銀狐です。動物みたいな名前ですが、人間です。よろしくお願いします。


最後にきた患者タメ口で生意気。おめぇ年下だろうがよぉぉぉ。よそみんな閉まってる遅い時間に来るから在庫なくてもどうしようもねぇんだよ!すぐ欲しいとかわがまま言うならもっとはよ来やがれクソが。


あれでもおかんやで?ガキんちょの将来憂うたるわ。ろくな大人にならんで。


なめた患者多すぎ。みんな店側の本音知るべき。受付は感じ悪い患者が帰ったあと必ず悪口言ってます。やたら遅く来るやつも。営業スマイルだが内心激おこやから。


遙「見たことのないドリンクを見せてくれ!」

真琴「精一杯の思いを込めた未来へのドリンク!」

凛「俺とお前の差見せてやるよ!」

渚「渚とHave fun times!」

怜「これは僕の美しいドリンクです!」 pic.twitter.com/4Ey6m3aQb8

銀狐@作画崩壊さんがリツイート | 80 RT

ケータイかスマホか知らんが通話しながらレジ清算する基地外いた。投薬中も電話してるやつ時々居るけど同時にせなあかんほど忙しいか?電話後からかけ直すか通話終わってからレジや受付に来ることもできるやろ?頭悪いやつか忙しぶってるイキリ(ええかっこしぃ)としか思えんわ。


【定期】年上年下関係なくタメでOK。人見知りですが仲良くしてくれたら懐きます。フォローされたらほぼ100%フォロバしますが個別のリプはなかなか出来ないかも知れません。夜行性なので反応遅いかも知れませんがご容赦願います。



10月16日(水)のつぶやき その1

2013-10-17 01:20:02 | 日記

【定期】日付変わったね。今日が素敵な日になりますように。


今日書いた下書きの分は入力したから寝ますだにゃ。カンビンゴミもスタンバイしたし。


結局章分けする予定で次章冒頭の「ここまでのあらすじ」必死に考えたけど、たった2000字台は短いので連結して一気にエンディングまで持ってくことにしたし。


もう主題部分は澄んだから正味あとはどうでもいい感じなんだが、幕引きはきちんとしないとね。


そしてこの作品が終わったら爆弾投下。どっかーん。


【定期】今日も元気で行ってらっしゃい。気を付けてね。


【定期】若い男性の身体の造形ってどうしてこうも美しいのだろう。溜息が漏れるくらい綺麗だと思う。(イケメン限定)という変態大人腐女子。人見知りでコミュ障ですが仲良くして下さい。タメOK。個別リプ出来ないことが多いですがほぼ100%フォロバします。


【定期】ブログで自作小説不定期連載中。たまに落描きギャラリーも載せてます。妄想癖のある変態です。フォローされたらほぼ100%フォロバしますがなかなか個々のリプ出来なくて失礼しています。こんな奴でも許してくれる優しいフォロワーさんたちありがとう。


齢一万歳を超える金眼白毛の九尾の妖狐。世を忍ぶ仮の姿は薬師。異世界への旅へと誘う時空城の案内人・銀狐。中二病を拗らした妄想癖のある妖が嫌いではないと言って下さる方はどうか仲良くしてやって下さい。…という定期。


【女子力】

低・渚「炭酸おいしー!」

中・遙「炭酸、舌ぴりぴりするから嫌だ…」

高・真琴「苦手だけど…同じの飲みたいから、ちょっとだけくれない?」

皆無・怜「炭酸弱酸ですけどフェノールよりは強いからナトリウムフェノキシドからフェノール遊離させられるんじゃ……?」

銀狐@作画崩壊さんがリツイート | 33 RT

【“暴力二男”殺害の母親らに実刑判決】
【父親が暴力二男に耐えきれず、ひものようなもので殺す】

渚「“あばれかにおとこ”って読むのかな?」
怜「“ぼうりょくじなん”じゃないですか?」

銀狐@作画崩壊さんがリツイート | 30 RT

(信長クラスタのみなさん…聞こえますか……信長は男子校出身だそうです……もう一度いいます…信長は男子校出身だそうです………あんな可愛い子が男子校出身だそうです……………男子校出身だそうです…男子校出身だそうです…男子校出身だそうです…男子校出身だそうです…………)

銀狐@作画崩壊さんがリツイート | 322 RT

にぃにの合宿免許のローンの督促状きた


アラビア凛たその付けてる短刀、あれジャンビーアっていうらしいんだけど、今はイエメン地方とかでしか身に付けられてなくって意味は「友人や家族を守るため」らしい pic.twitter.com/j0TdDmRuDM

銀狐@作画崩壊さんがリツイート | 251 RT

この前freeのポスターのセルフラミネート若干しわになった時懲りたはずなのにまた新しい保険証カードラミネート失敗した。一年間このままだよ。何で今したんやろ?11月1日からのカードやのに。