仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

シコふんじゃった。

2021年09月04日 | ムービー
『シコふんじゃった。』(1992年/周防正行監督)を観た。
物語は、「数か月後に卒業を控えた教立大学4年生・山本秋平(本木雅弘)は、卒論の指導教員である穴山冬吉教授(柄本明)の研究室に呼び出されたものの教授の顔さえ知らず、川村夏子(清水美砂)の姿に見入るばかり。相撲部の顧問をしている穴山から、卒業に必要な単位がほしかったら大会が開催される1日だけ相撲部員になって試合に出ろと言われた秋平は、伯父のコネで就職も決まっていることから、背に腹は代えられないと、しぶしぶ了承するのだが・・・」という内容。
かつては強豪だったという教立大相撲部も、現在の部員は8年生の青木富夫(竹中直人)ただ1人で、5人制の3部リーグ戦に出場するために、最低3人を確保しなければならないという情けない状況だったが、全くの無経験者とはいえ田中豊作(田口浩正)、秋平の弟・春雄(宝井誠明)があっという間に入部する。
普段から部員の勧誘をしていれば何とかなってたのではないか・・・。
そう思える展開でもあったのだが、お調子者の秋平が加入したことで、どんよりとした相撲部の運が少し変わったのかもしれない。
青木はさすがに相撲のことには詳しいものの、極度の緊張から、試合になると下痢をしてしまい、入部以来一度も勝ったことがないという情けなさなのだが、4年間稽古部屋に住み込んでいる相撲大好き人間。
相撲での勝利もそうだが、彼の人生には何か足りないものがあったのだろう。
そして、それは秋平も一緒で、相撲部での経験の中でようやく知ることができたようだ。
少しばかり遅かったような気もするのだが、知らないままその後の人生を送るより価値がある回り道のようにも思える。
なかなか面白い作品だった。

うなぎ

2010年02月25日 | ムービー
『うなぎ』(1997年/今村昌平監督)を見た。
物語は、「1988(昭和63)年、妻・恵美子(寺田千穂)の不倫を密告する手紙を受け取った山下拓郎(役所広司)は、趣味の海釣りを早めに切り上げた夜、その現場に出くわす。逆上し、妻を何度も包丁で斬り付け、殺害してしまうのだった。8年後に仮出所した山下は、保護司・中島(常田富士男)の協力もあって、獄中で身に付けた資格を使い床屋を開業する。ある時、飼っているうなぎの餌を捕りに出かけ、藪の中で倒れている女・服部桂子(清水美砂)を見つけるものの、トラブルに巻き込まれたくないと思い・・・」という内容。
人間不信に陥り、うなぎにしか話しかけない男が主人公だが、初めて訪れた町であれほどすんなり地域に受け入れられば、社会復帰を果たすのも早いだろう。
もちろん本人の努力もあるが、運も左右するというわけだ。
また、仮出所中にはどんな些細なトラブルでもマイナスに働くのだろうから、いろいろなことに憶病になってしまう主人公の気持ちも解らないではないが、やはり見て見ないふりというのはマズイだろう。
(^_^;)
「どうせ誰も見ていないだろう・・・」等と考えてしまうと、きっと、その後に大きな影響を及ぼすことになる小さなヒビが心に入ってしまうのだ。
今村昌平監督はこの作品で、カンヌ映画祭において『楢山節考』(1983年)に続く2度目のパルム・ドールを受賞しとのことだが、確かにこれは面白い。
"事件が起きる瞬間の、その前もその後でさえも、時間はただただ淡々と流れていく"というのが、何か人の世の儚さを感じさせるのだった。
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