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フィガロの結婚/芸大2015

2015-10-19 | オペラ
フィガロの結婚/芸大2015

作曲:モーツァルト、指揮:ステーファノ・マストランジェロ
演出:直井研二、演奏:藝大フィルハーモニア
装置:川口直次、衣裳:西原梨恵
出演:アルマヴィーヴァ:青木海斗、ロジーナ:品綾野
   スザンナ:横森由衣、フィガロ:白石陽大
   ケルビーノ:山下裕賀、マルチェッリーナ:吉田貞美
   バルトロ:長谷川顯、バジリオ:川上晴央
   ドン・クルツィオ:持齋寛匡、バルバリーナ:藤井冴
   アントニオ:谷友博

始まりは白い壁の部屋が舞台装置になっていて、中盤には、この壁を半分無くして外の景色、緑深きヤシの木と紺の背景が見えるようにする。最後は全部取り除いて、室内だったところに庭風の植え込みを並べることで外の雰囲気を出していた。壁の白、外の紺、ヤシの緑と樹の黄色がかった茶の色のアンサンブルがスッキリととして気持ち良かった。演出は物語に忠実で、アリアや重唱を重視したもの。皆がリサイタル風にしっかりと歌を歌った。多重唱でも誰がどこを歌っているのかが良く分かるので、まるでボーカルスコアを舞台上に展開しているかのような演出だと感じた。たとえば、村娘の2人も前に出て来てしっかり歌ったので、これが実は魔笛の童子のような美しい重唱であることも良く分かった。

青木は上品な感じのバリトンだが、芝居ではスケベ爺の悪辣さを出していた。品は美しいクリアな声でロジーナのアリアにふさわしい。教会音楽のような、美しく清らかで優しいアリアになった。横森は元気良くハキハキしてスザンナらしいソプラノ。白石は迫力と安定感のあるしっかりしたバリトンで堂々と、手慣れた感じでフィガロを演じた。山下は低い声が美しいメゾ。しっかりした「恋とはどんなものかしら」を歌って大拍手だった。藤井のバルバリーナも元気が良く、アリアをしっかり強く歌った。川上は、ちょと鼻にかかったような声に特徴があり、それがバジリオの役にぴったりだった。芝居も堂々とコミカルに演じて印象に残るバジリオとなった。最後のアリアもしっかりと歌った。吉田の芝居も良かったが、最後の超絶的なアリアを気迫で歌い切った。谷のアントニオは存在感のある歌と芝居で、これはご馳走。

衣装は豪華で美しい。特にロジーナの衣装には複数のもがあって、これにはデザイナーの気合いが感じられた。

演奏については、序曲は上品な音に感じた。本編では歌とのアンサンブルを重視していた様に思う。

このオペラはフランス革命の数年前の作品なので、フランス革命を連想させる。舞台の白亜の屋敷の白や外の景色の紺がフランスの伝統的な色、トリコロールのうちの2色を連想させ、最後のフィナーレは革命の民衆への賛歌のようにも思えた。

15.10.03 芸大奏楽堂