二銭銅貨

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雨月物語

2006-10-18 | 邦画
雨月物語  ☆☆☆
1953.03.26 大映、白黒、普通サイズ
監督:溝口健二、脚本:川口松太郎、依田義賢、原作:川口松太郎
出演:京マチ子、森雅之、田中絹代、水戸光子、小沢栄

美しい着物。
やさしい物腰。
謙虚なこころずかい。
いとおしい気持ち。
淋しい別れ。

深い欲情。
見苦しい強欲。
奈落の絶望。
はちきれる歓喜。
狂おしい恋。

滑らかで曲線的なカメラの動き。
途切れず、連続的で、それでいて崩れない、
構図、人物配置、人々の動き、物の動き、カメラワーク。
落ち着いていて、そして緩み無く。よどみ無く。

ふくよかな京マチ子。とても幽霊には見えない。
魂から染み出る、妖艶で深い怨念は、
強烈に森雅之の肉体に食い込み、
それは銀幕を超えて、観客席にまで深く照射して、
こちらの精神まで破壊してしまうかのよう。

森雅之の苦悩、絶望、喜び、希望。
良く表現されて、物語全体を体で支えています。
田中絹代は健気な「宮木」。みんなを思うやさしい気持ち。
映画全体の優しさを田中絹代が代表しています。

小沢栄は調子のいい愚か者。
人間の愚劣さを一手に引き受けて表現しています。
水戸光子は硬い役。実直でまじめ。
きちんとした硬質な表現が物語りに、締まりを与えています。

役者たちの優れた表現、
バリエーションのある人物像・人生の深い表現は、
うまく調和して物語り全体に織り込まれ、
加えて、しっかりした美術、撮影、衣装、演出
がフィルムに刷り込まれてます。

人々の気持ち、思いは強くフィルムに定着されていて、
そのなかでも、
とりわけ、京マチ子の怨念は色濃く、深い。

古典の上田秋成作の「雨月物語」に想を得て、川口松太郎が書いた小説をもとにした映画。古典の9編の物語のうち、「蛇性の婬」「浅茅が宿」がベースとなっている。
06.10.08 恵比寿ガーデンシネマ
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