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林芙美子の詩発見

2009-11-13 | Weblog
林芙美子の詩発見
2009年9月6日(日)10:00 芙美子の未発表の詩見つかる(中国新聞)の記事から。
 <林芙美子の直筆の詩稿の全文>
風も吹くなり
雲も光るなり
生きてゐる幸福(しあわせ)は
波間の鷗(かもめ)のごとく
漂渺(ひょうびょう)とたゞよひ
生きてゐる幸福(こうふく)は
あなたも知つてゐる
私もよく知つてゐる
花のいのちはみじかくて
苦しきことのみ多かれど
風も吹くなり
雲も光るなり

林芙美子

(新聞記事では鴎「かもめ」の旧字体が印刷できず〓になっているが、おそらく鷗の形だと思う。ユニコードらしいので、字化けするかも知れない。)

良い詩だ。林芙美子らしい。「雲も光るなり」。こう言うちょっと思いつかない句が、それらしい。前向きで元気。めげない、くじけない、あきらめない。タフでチャレンジングな芙美子の気持ちが良く分かる。ぼうぼうと殺伐とした世間を渡って行く厳しさが良く伺える。厳しさが人生で、つらさが幸福だと言っている。登山好きが、登坂の厳しさつらさを楽しんでいるような様子です。

「風も吹くなり」は「私にも波乱があるわよ」って言う意味でしょうか。波乱とは恋愛の意味で。「雲も光るなり」は「私だって美しい時があるわよ」って言う意味でしょうか。雲は芙美子で、普段は鈍いけど、恋愛すると美しくなるとか。ちょっと、こういう居直った気分が最後の2行でしょうか。

林芙美子が色紙などに良く書いていたという「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」は、林芙美子原作の成瀬映画のラストにしばしば使われていて、森光子の放浪記でも使われている有名な句です。

青い空にくっきりとした桜、夜空にきらめく花火、その見せ場は一瞬です。人々はその一瞬の華々しさに惹かれて、大勢して見物に出かけて行きます。でも、大事なのは花の咲いていない時期や花火を作っている時期でしょう。桜の木が緑に覆われる時期、葉を散らした冬の時期、蕾の頃、花火師が精魂こめて花火の玉を製作している時期が本質です。もちろん華々しいその成果をも大事ですが、それまでの地道な部分の方がもっともっとはるかに大事です。実は、その部分こそが本当に楽しめる、本当に面白い時期なんだと、そんな印象を持ちます。「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」は表面的に読むとネガティブな感じのフレーズですが、林芙美子のキャッチコピーという意味では、絶対にポジティブな意味を持っているに違いないフレーズなのです。その事が今回の発見で良く確認できました。

これは赤毛のアンの訳で有名な村岡花子に贈られて、その自宅にあったとのことです。村岡花子がこの原稿を持っていたという事が面白い。村岡花子と林芙美子とは親交があったということです。村岡花子と言えば「赤毛のアン」の翻訳。アン・シャーリーと林芙美子とではだいぶ違うのですが、なぜか両方好きな私には、この両者には何か共通点があると感じてしまうのです。

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