二銭銅貨

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魔笛/新国立劇場(二期会)2015

2015-08-17 | オペラ
魔笛/新国立劇場(二期会)2015

作曲:モーツァルト 、指揮:デニス・ラッセル・デイヴィス
演出:宮本亜門、演奏:読売日本交響楽団
出演:
パミーナ:幸田浩子、タミーノ:鈴木准
夜の女王:森谷真理、ザラストロ:妻屋秀和
パパゲーノ:黒田博、パパゲーナ:九嶋香奈枝
侍女:日比野幸、磯地美樹 、石井藍
弁者:加賀清孝、モノスタトス:高橋淳

RPG世界をモチーフにした演出。大きな2枚の壁が90°に立てられて、それぞれが奥行き方向に2重になっている。壁のアチコチが窓になったり、一部分が上にあがったり、無くなったりする構造になっている。上にあがった部分や無くなった部分をどう始末しているのか、ちょっと気になった。シンプルそうに見える装置だったが、いろいろ工夫されているようだ。この壁と床に映像を投影して様々な情景を作り出す。自由自在に様々な場面を瞬間的に出せるのでMTV的なテンポの速い演出が可能になっている。最初に格子が投影されるので、それはあたかも3次元のデカルト座標系のようで面白かった。また、地形を格子で表現するような映像もあって、CGゲームっぽさを出していた。

この2重の衝立のせいであろうか、音の響きが良いように感じた。奥で歌う時と前で歌う時の音の大きさが全然違っていて、前面で歌う時にはすごく迫力があった。おそらく、2重の衝立の影響は大きかったのではないかと思う。

演出はかなりアグレッシブで運動量の多い演出だった。動きの多い中でも歌に崩れが無いような配慮はされていたようだが、歌手の皆さんも頑張っていて、歌への影響はあまりなかった。

森谷は全く安定したアリアで大拍手だった。声が美しい。鈴木は端正な感じのテノールで劇中ではお父さん役。幸田はお母さん役で、アリアは情感あふれる美しいものだった。子供達と一緒の重唱ではとてもお母さんな感じで、これに上手な演出も重なって大拍手だった。妻屋は重厚で安定したザラストロ。くずれが全く無い。黒田はいつも通りの声だが、役はピエロ的なコミカルな役。コミカルな芝居もうまい。上品なパパゲーノだったが面白かった。九嶋は元気良く、声も芝居もシャープな感じ。加賀はどっしりと落ち着いて劇中ではおじいさん。侍女の3重唱がとりわけ美しくアンサブルしていた。衣裳は胸を強調したコミカルなものだったが美しい衣裳だった。童子はボーイソプラノで上手だった。高橋の芝居はややシリアスな出だしだったが後半は臭い靴下をオケピに投げるなど、大活躍で客席に大受けしていた。全般に出番も多く良い芝居だった。声も良い。

演奏はゆっくりめな感じで、歌への配慮が感じられるアンサンブルの良い演奏だった。

15.07.19 東京文化会館