日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 藤原清則 Kiyonori Tanto

2017-06-12 | 短刀
短刀 藤原清則


短刀 藤原清則長禄元年二月日

 八寸強の短刀。重宝されてだいぶ身幅が減っているのが姿格好に現れている。地鉄は板目肌が流れ、地沸が付いて映りが立つ。研ぎ減りが影響してか肌立つ傾向にあるが、流れるような映りが立って、むしろ面白い景色となっている。刃文は浅い直刃湾れに吉井派らしい揃った互の目が交じり、所々に湯走りが掛かり、帽子もわずかに乱れて返る。先の太刀と同じ工だ。高い技術を保持している。




太刀 藤原清則 Kiyonori Tachi

2017-06-10 | 太刀
太刀 藤原清則


太刀 藤原清則享徳四年三月日

 これも室町中期の吉井派の作。永享の吉則より二十数年下がる。太刀銘ながら二尺一寸強の、鎬が高く仕立てられた片手打ちの造り込み。板目肌に流れるような肌が交じって良く詰み、総体は小板目風に感じられるほど。地沸が付き映りが立ち、細かな地景が網目のように現れている。刃文は見ての通り細直刃調の浅い湾れ刃だが、綺麗に揃った穏やかな互の目が交じっている。この点が吉井派の特質。浅く湾れ込んだ帽子は先小丸に返る。刃中には小足が入る程度だが、澄んで美しい。地鉄の良さがこの太刀の魅力だろう。

太刀 備前國吉井吉則 Yoshinori Tachi

2017-06-09 | 太刀
太刀 備前國吉井吉則


太刀 備前國吉井吉則應永五年六月日

 室町初期応永頃まで時代の上がる吉則。茎が、磨り上げられているとは言え古調で味わい深い。二尺一寸強、反り六分六厘。この頃から盛んに用いられるようになった、扱い易い片手打ちのスタイルだ。小杢、小板目を交えた地鉄は総体に良く詰んで地沸が付き細かな地景も交じり、映りも顕著。互の目の刃文は、時代の下がった吉則のような小模様の互の目ではないが、それでも高さと幅の揃った互の目を並べたように端正なところが窺える。誰が見ても間違えない、特質が良く現れた作で、しかも優れている。


短刀 備前國吉井吉則 Yoshinori Tanto

2017-06-07 | 短刀
短刀 備前國吉井吉則


短刀 備前國吉井吉則永享二年二月日

刃長八寸七分、元幅八分強。室町中期の短刀。鎌倉時代後期の長舩景光を想わせる、振袖茎に引き締まった姿が魅力だ。吉井派は、長舩と吉井川を挟んで対岸、即ち隣村に位置する吉井庄に栄えた流派。後に吉則は出雲に活動の場を移している。杢目を交えた板目鍛えの地鉄は良く詰んで微細な地沸で覆われ、濃淡に変化のある映りが明るく現れ、この所々に地景を伴う板目が穏やかに浮かび上がって気の流れを想わせる景色となっている。匂口の締まった焼刃は吉井派の特徴的小豆を並べたような綺麗に揃った構成で、鮮やかに足が入って帽子へと連なり、先は小丸に浅く返る。吉井川周辺の狭い地域に、作刀流派が分かれて活動している。おそらく同じ素材を用いているのであろう。ところが、同時代の長舩物とはずいぶん風合いが異なる。面白いところでもある。




短刀 長舩倫光 Tomomitsu Tanto

2017-06-05 | 短刀
短刀 長舩倫光


短刀 長舩倫光貞治三年

 いかにも南北朝中期の短刀。刀や脇差と同様に身幅が広く重ねが薄く、先反りが付いている。茎が幅広く短いのもこの時代の特徴だ。地鉄は良く詰んだ板目が穏やかな地景によって綺麗に立ち、凄みのある映りが現れ、総体に抑揚がある。この板目肌を蝉の羽根に擬えて蝉肌とも呼んでいる。刃文は浅い湾れに腰の開いた浅い互の目交じり。兼光を見るような出来。相州伝の影響を受けているとは言え、即ち沸出来ではあるが穏やかな出来であり、荒ぶるところがない。


短刀 長舩能光 Yoshimitsu Tanto

2017-06-03 | 短刀
短刀 長舩能光


短刀 長舩能光延徳二年

 能光と銘の斬られた作はあまり見ない。清光の子が祐光銘を再興しようと考えたように、主流である祐光、勝光、清光、祐定などの他に、このような多くの備前刀工がおり、高い技術を保持して主流派の陰の働きを為していたのである。六寸四分、重ね二分。地鉄は板目肌の小板目肌が交じり、地沸が付いて細かな地景が交じる。刃文は浅い湾れ刃。帽子も調子を同じくして丸く返り、長く焼き下がる。焼刃は沸匂が強く明るく、足などの働きは控えめに、わずかに二重刃風の変化が窺える。凄く優れた出来だと思う。

短刀 長舩法光 Norimitsu Tanto

2017-06-02 | 短刀
短刀 長舩法光


短刀 長舩法光永正二年

 六寸強の小ぶりな短刀。いかにも使い勝手が良さそうだ。実用を経て内反り風に身幅が減ってはいるが、本質がいい。だから格好がいい。緻密に詰んだ板目肌に小板目肌が組み合わさってしっとりとした感がある。刃文は互の目乱。ふくら辺りが乱れて先小丸に返り、長く焼き下がる。小沸に匂交じりの焼刃は明るく刃縁は穏やかにほつれる程度。強い乱や沸を付けず華やかさを抑えた、実用の武器だ。

短刀 長舩忠光 Tadamitsu Tanto

2017-06-01 | 短刀
短刀 長舩忠光


短刀 長舩忠光大永三年

 安心してみることができる、忠光の直刃だ。もちろん多少の研ぎ減りはあるが、本来細身で、刃長は七寸強。重ねが二分五厘あるから厚手の鎧通し。杢を交えた板目肌に微細な地沸が付き、映りが立ち、古風だ。刃文が、忠光の得意とする細直刃。破綻なく、無駄を一切捨て去った、鋭利な武器に他ならないがすごく美しい。