日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 備前國吉井吉則 Yoshinori Tanto

2017-06-07 | 短刀
短刀 備前國吉井吉則


短刀 備前國吉井吉則永享二年二月日

刃長八寸七分、元幅八分強。室町中期の短刀。鎌倉時代後期の長舩景光を想わせる、振袖茎に引き締まった姿が魅力だ。吉井派は、長舩と吉井川を挟んで対岸、即ち隣村に位置する吉井庄に栄えた流派。後に吉則は出雲に活動の場を移している。杢目を交えた板目鍛えの地鉄は良く詰んで微細な地沸で覆われ、濃淡に変化のある映りが明るく現れ、この所々に地景を伴う板目が穏やかに浮かび上がって気の流れを想わせる景色となっている。匂口の締まった焼刃は吉井派の特徴的小豆を並べたような綺麗に揃った構成で、鮮やかに足が入って帽子へと連なり、先は小丸に浅く返る。吉井川周辺の狭い地域に、作刀流派が分かれて活動している。おそらく同じ素材を用いているのであろう。ところが、同時代の長舩物とはずいぶん風合いが異なる。面白いところでもある。