日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 宝寿 Hoju Wakizashi

2017-06-29 | その他
脇差 宝寿

 
脇差 寶壽

 南北朝時代後期の寶壽在銘の平造脇差。我が島国の形状は、大陸に沿って弧状に伸びている。即ち、大陸からすれば北方でも南方でも同程度に渡航が可能な国。文化の渡来が九州や中国地方と限定するのはおかしなことで、東北地方にも刀造りの技術が渡来した。五ヶ伝をありがたがる意識の持ち主からすると、奥羽の鍛冶は地方鍛冶、田舎鍛冶といった評価を為されそうだが、この地域の作風の面白さや歴史的な背景を学ばねば、我が国の日本刀の文化を知ることにはならないだろう。現実に、現代刀工の頂点に立つ一人でもある月山貞利刀匠は、その古鍛法を伝えており、芸術にまでその美観を高めている。微妙に質の異なる鋼を織り鍛え合わせて肌立つ地鉄とした刀工でまず思い浮かぶのは則重と江戸初期の繁慶であろうが、その源流の一と言っていいだろうか、奥羽の古鍛冶の地鉄は斬れ味を追求した結果、躍動感のある板目肌やそれが揺れるような綾杉肌を特徴とし、折損せぬよう比較的幅の狭い焼刃を施した。本作は、そのような強く肌立つ一例。
 
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