日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 手掻 Tegai Katana

2010-07-05 | 
刀 手掻

刀 磨上無銘手掻



 直刃の魅力が充満した作。南北朝時代の大和国手掻(てがい)派の特徴が顕著に現われている。板目鍛えの地鉄が流れて柾がかり、肌目が地景で強く起ち、肌目は刃境を超えて刃中に至り、そのまま刃先にまで肌の様子が窺える。この肌目が刃中の、殊に刃縁の働きを生み出す要素となっている。刃文とは、焼刃の形を楽しむことではないことは度々申し上げている。直刃が単調であるとは、直刃の働き、焼刃の本質を知らない方の言葉。鍛え肌に沿って現われた地景が刃中では金線に変わる様子が良く分かるように、刃境を越えて黒く沈んだ光りを放つ稲妻が現われている。刃縁には稲妻だけでなく、縒り糸をほぐしたようなほつれ、喰い違い、淡く短い足状に広がる匂を切って流れる砂流し、地側にも打ちのけと呼ばれる同趣の働きがみられる。この繊細な線状の働きが織り成す様子こそ直刃の最大の魅力である。