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お楽しみはこれからだ❣️

本と映画とテレビと鉄道をこよなく愛するブログ

フィクションテロップ

2023年05月29日 | テレビドラマ
「フィクションテロップ」というのがある。

ドラマで最後に「ドラマの中で登場した人物、会社、その他あらゆるものはフィクションであり、実在するものではありません」。

ドラマに出て来る「警察」「会社」「住所」などは基本、実在しない。

「助監督」が実際にあるかどうかを調べて、架空の名前を付けるのであるが、昔は「電話帳」を使って、今は「インターネット」で調べる事が多い。

何故、実在の「会社」等の名前を使わないか?

それはドラマのストーリー上、「悪いイメージを与える人物が勤める会社」だったり、「事件で爆破されたり、殺人が起こったりする会社」だった場合・・・

実在する会社の「イメージが悪くなったり」、「その会社からクレームが来たり」する可能性があるからである。

「実在する住所」を使った場合、「ロケ地のイメージ」を悪くしたり、人気俳優が出ていると、連続ドラマの場合、「ファンがロケ地に集まり」、ロケの進行に支障が出たり、場合によってはロケそのものが出来なくなったりするから。

つまり、ロケ地の周辺住民から「そんなに人が集まるんやったら、迷惑やからロケには貸さない」と言われる恐れがあるからだ。連続ドラマで「レギュラーのロケ地」が使えなくなるのは致命的だ。

人気ドラマでは、この「ロケ地」に関する問い合わせが多い。特に「恋愛ドラマ」に関して、女性視聴者から。

うちの連続ドラマ「オンリーユー 愛されて」は湘南を舞台に、鈴木京香演じるトップモデルと大沢たかお演じる知的障害を持った青年が恋愛に落ちていくドラマ。

この時は電話やハガキで「ロケ地の問い合わせ」が本当にたくさん来た。

最近ではフジテレビの連続ドラマ「silent」。目黒蓮と川口春奈のラブストーリー。

ロケは小田急電鉄の協力を得て、小田急「世田谷代田駅」の周辺で行われた。

駅周辺は若い女性たちが写真を撮るスポットになっており、ドラマで撮影に使われた「ファミレス」は行列が出来るほどの人気になっていると聞いた。

最近のドラマに欠かせないのがスマホ。その画面がドラマの映像に映り込む事も多い。

これに関して、僕は苦い思い出がある。

あるドラマでスマホで電話するシーンが出てきた。「美術部」が用意してくれたスマホ。

「美術部」曰く、このスマホは長らく「持ち道具(俳優さんが手に持つもの)」用として使われており、普段は美術倉庫に電源を切って置かれているもの。

だから、電話番号を画面に映しても大丈夫だという。

その言葉に僕は安心して、電話番号が映った状態で放送した。

ところがである。

放送日翌日、ウチの局に、ある初老のおじさんから連絡があった。

「朝からスマホの呼び出し音が鳴り止まない。電話に出てみると、ドラマで見たという人たちからの電話なんです。どうにかして下さい」

僕はすぐにおじさんの御自宅に菓子折りを持って伺い、陳謝した。経緯を正直に伝えた。おじさんは納得してくれた。

数日後、おじさんに連絡を取ると、スマホの「イタズラ電話」は来なくなったという。ホッとする僕。

おじさんの電話番号が映ったカットは再放送を考えて、「電話番号の一部しか見えないカット」に差し替えた。

ドラマは「フィクション」と言いながら、実在する社会に対しての影響力はとても大きい。

その事を肝に銘じた出来事だった。

こうして、日々ドラマは作られていく。

素晴らしい感動するドラマの場合、「ロケ地巡り」も視聴者の楽しみで、「ロケ地本」も出版されている。

「ロケ地巡り」の際はくれぐれも節度を守って、一般の住人が住んでいる事も考えて行動して欲しいと思う。
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握られた手の力は強かった❣️

2023年05月26日 | テレビドラマ
ある連続ドラマをやった時の事である。僕はプロデューサー。

ゲストに今でも人気の女性タレント(仮にAさんとしておこう)に出てもらう事になった。

ドラマの収録前に海外での仕事があるという事で、ゲストに出てもらう回の「準備稿」の台本を渡し、「出演OK」の返事をもらっていた。

僕が会社を出て、市ヶ谷駅に向かっていると、Aさんのマネージャーから携帯に突然電話がかかって来た。

「決定稿」をAさんが読んで、この「役」では出られないと言い出しているとの事。

Aさんを説得して欲しいというのだ。

その時思ったのが、「最近、ちゃんと俳優・タレントをマネージメント出来るマネージャーが少なくなったなぁー」という事。

「本人に訊いて、御返事します」

結局、本人に訊くのならマネージャーは要らない。マネージャーが「YES」と言ったら、どんな事があっても俳優やタレントをそうさせるのが「真のマネージャー」だと思う。

しかし、Aさんのマネージャーは本人の言いなり。市ヶ谷で彼の車に乗せてもらい、Aさんの泊まっているホテルに着くまで、彼は芸能界のウワサ話しかしなかった。

ホテルで、チーフプロデューサーと待ち合わせる。

CPとマネージャーが、Aさんと僕、二人だけの話し合いに任せるというかなり無責任な事を言うので、腹が立ったが仕方が無い。

Aさんが部屋から降りて来て、僕と二人、ホテルの喫茶コーナーに座る。

「ワインでも飲みましょう」と笑顔を浮かべる彼女。

僕は「準備稿」から「決定稿」になって、彼女の「役」がどう変わったかを懸命に誠意を込めて説明した。

「これでは私の『役』が立っていない(目立っていない)」彼女は僕にそう言った。

ワインの味が全くしなかった。彼女のスタジオ収録は明日だ。彼女が出演OKしなければ、明日の収録は中止。

少し話をした後、「部屋に戻って、少し考えさせて」と彼女。

僕はCPとマネージャーに彼女がまだ「OKしていない事」を報告した。

辺りは静かで、もう夜になっていた。明日は午前9時からの収録だ。

CPが監督に電話をかけ、「明日のAさんの収録は中止。後日、代役を立てて撮る」と。

その直後、マネージャーにAさんから電話がかかって来た。

「僕に部屋まで来る様に」との事だった。どうも彼女、電話で知り合いのプロデューサーに相談していたみたいだとマネージャーは言った。

僕一人、彼女の部屋の前に立ち、ドアをノックした。

ドアが開いて、彼女が現れた。
「私、ドラマに出るわ。OKよ」

しかし、現場はバラしているので、時既に遅し。

その事を僕は告げる。彼女は僕を部屋に引き摺り込もうとする。部屋の中でもう一度じっくり話し合いたいと言うのだ。

僕は彼女が握って離さない手を引っこ抜いて、ホテルの廊下を一目散に走って逃げた。

ドラマを作っていて、最も怖い経験だった。
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スタジオが使えない連続ドラマの現状

2023年05月25日 | テレビドラマ
オールロケのドラマが増え続けている。

いちばんの理由は「予算」。ゴールデン・プライム帯に放送されるドラマに比べて、深夜のドラマの「予算」は1/4位だろうか?

1日借りて、機材費も含めれば、100万円を超えるスタジオを借りられる訳は無い。

そんな時、どうするかというと、都心から離れた千葉・茨城・神奈川などに、今は使っていない倉庫やホールを借りるのである。

そこに1クール常に出て来る全てのセットを建てっぱなしにする。そうすれば、「セットの建て替え費」が要らなくなるから。

倉庫やホール。夏は暑く、冬は寒い。

夏。そうした倉庫の中は灼熱地獄になる。冷房機器をレンタルし、倉庫を冷そうとするが、巨大な倉庫はなかなか冷えない。

本番の時は「冷房機器の音」がマイクに入ってしまうので、いちいち止めないといけないのだ。だから、余計に冷房が効かない。

さらに倉庫とスタジオの違うところは、倉庫の中まで飛行機や車のクラクションの音が響いて来て、それでNGとなる事も多い。

そんなドラマの「宣伝」の仕事をやっていて困るのは、使われていない倉庫やホールの場所がとても行きにくいところにあるという事。

例えば、つくばエクスプレスに乗って、「流山」まで行き、関東鉄道に乗り換え、最後は最寄り駅からタクシーに乗らないとたどり着けない場所に撮影用の「倉庫」があった事もあった。

そんな真夏の撮影、連日脂っこいロケ弁当だったが、一度だけ「製作部」の計らいで、ケイタリングのカレーライスが出た事があった。

お代わり自由。暑い最中だったが、このカレーライスは美味かった。現場に来ていた「制作デスク」の女性と二人でカレーライスを作っていき、僕は並んでいるキャストやスタッフに手渡した。

ここのロケではもう一つ問題が起こった。レギュラーで出ている犬が猛暑の為、かなりバテてしまったのである。スタジオ収録ととんでもなく「暑さ」が違う。

動物プロダクションの担当者と密に連絡を取り、本番直前まで「冷房の効いた動物プロダクションの車」に乗せておいて、「本番」の時のみ、犬を撮影現場に呼び込んだ。

そう言えば、ここの灼熱ロケに野際陽子さんが参加していた。何年前の事だろう。

「映像ソフト」がますます重要になっているこの時代、出来上がった「映像ソフト」で儲かる金額を予測して、現場の「製作費」に還元されるシステムがちゃんと確立したら、どれだけ良い事だろう。

今は「予算節約」の為に、台本を早めに先まで作って、なるべく短期間で撮影していく。その負担はキャスト・スタッフに重くのしかかっている。

「撮影条件」が少しでも良くなれば、「映像ソフト」の出来上がりも良くなると思うのだが・・・

いろんなドラマを観ている今の視聴者を侮ってはいけない。彼等は「映像ソフト」の隅々まで観ている。
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テレビドラマ撮影現場の「ロケ弁当」

2023年05月24日 | テレビドラマ
撮影現場で重要なのは「ロケ弁当」。「製作部」のいちばん下の「製作進行」が弁当の発注をする事が多い。撮影が押したり巻いたり(スケジュールが前後する事)するので、時には弁当業者への連絡も頻繁に取らなければならない事もある。

撮影に関わるキャスト・スタッフは一日現場から離れられない事も多い。

それゆえ、「ロケ弁当」の手配にはアタマを使う。

二種類用意して選択できる様にしたり、三食飽きない様に種類を変えたり。

若いスタッフは「量」が多くて「脂っこいもの」を好むだろうし、年配のキャストやスタッフは「あっさりしたもの」を好む。

東京はドラマ、映画、Vシネマ、AV等、撮影隊が多いので、撮影現場まで「ロケ弁当」を配達してくれる弁当業者も多い。それだけ、選択肢も多いし、配達してくれる地域も広い。

大阪で「朝の連続ドラマ」をやっていた時はこの弁当業者探しで大変苦労した。

当時、大阪で撮影していたのは、「NHK大阪」の「朝ドラ」。毎日放送の「昼帯ドラマ」、そして朝日放送の「部長刑事」、ウチの「朝ドラ」だけだった。

京都ロケの終わったある夜、APの僕と「製作部」で翌日のロケの打ち合わせをしていた。
深夜の打ち合わせで「製作部」も僕も疲労困憊。

明日のロケは昼まで京都で撮影して、その後、滋賀県の彦根まで移動する。

最初は「バレ飯」(食事休憩を1時間取って、キャスト・スタッフに各々お店で食事を摂ってもらい、領収書を集め、一定金額を支払う)も考えたが、ロケのスケジュールの「押し巻き」(スケジュールが前後する事)を考えると、「ロケ弁当」の方が安全だという結論になった。

連日、灼熱の京都でのロケは続き、毎日3食「ロケ弁当」だったのだが。

翌日、「技術スタッフ」は昼食の「ロケ弁当」数十個を捨てた。食べなかった。ある種の抵抗だったのかも知れない。

僕はもう一人の先輩APに連絡して、その事を報告した。何とかしなければならなかった。

先輩は彦根に先回りしてくれて、スタッフが泊まるホテルの屋上で「焼肉パーティー」の準備をしてくれ、到着したスタッフを慰労してくれた。

こんな事もあった。奈良県の橿原神宮前で連日ロケした時、ロケ地近くにキャスト・スタッフ大人数で泊まれるホテルが一軒しか無かった。

このホテルの朝食が洋食しか無かったのである。

まずは年配の俳優Yさんからクレームがついた。ちゃんとした「和食」の朝ごはんを食べさせて欲しいと。

スタッフからも同様のクレームが相次いで寄せられた。

ホテル側と交渉してみたが、「和食」を出す事は物理的に難しい。ホテルとして出来る精一杯の事は「おにぎり」を握る事。

それで、朝「おにぎり」を100個握ってもらった。1人当たり2個の計算。

しかし、100個のおにぎりに誰も見向きもせず、そのまま残ってしまった。他に解決策は見つからなかった。僕はキャスト・スタッフとホテルの間で板挟み状態になり続けた。

寒くて凍えそうな冬。俳優さんが「うどんの屋台」をスタジオやロケ地に差し入れてくれる事がある。たった一杯のうどんだけれど、これが身に沁みるほど美味しい。

そんな時、東京での撮影は何もかも揃っていて、イイなぁーと思う。

でも、無い無い尽くしだった
「朝の連続ドラマ」の現場も「ある種の飢餓感」故か、今となっては懐かしい想い出だ。

「人間」にとって、「食べる事」は本当に大切な事。
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「幕末青春グラフィティ 坂本竜馬」

2023年05月23日 | テレビドラマ
「幕末青春グラフィティ 坂本竜馬」(日本テレビ・1982)というスペシャルドラマがあった。

脚本・主演は坂本竜馬の事を尊敬してやまない武田鉄矢。

このドラマのもう一つの大きな特徴がドラマ全編にあの「ザ・ビートルズ」の曲をかけた事だ。

幕末の革命児・坂本竜馬と音楽界の革命児ザ・ビートルズのコラボレーションは凄まじかった。観ていて鳥肌が立った。

ザ・ビートルズあってのドラマだったが、それゆえ一度も再放送もDVD化(ソフト化)もされていない。

バラエティー番組は音楽が替わってもそんなに気にならない事が多いが、ドラマは音楽次第で全然別の作品になってしまう。

2000年前後、僕がプロデューサーを務めた連続ドラマでもスウェーデンやアイルランドの音楽家を使った事があった。

まだテレビ局そのものに「二次使用が大事だという概念」が薄く、「権利処理」の窓口は当時おじさんたった1人でやっていた。今はたくさんの人が関わっているが。

だから、あの頃の連続ドラマで再放送が出来ないものは多いのかも知れない。

「放送」で流す時はある取り決められた使用料を払えば良いが、ビデオ化・DVD化する場合、映像ソフトに「音楽」を「固定」する必要がある。これを「固定権」という。

このお金が「放送」で使用するよりもかなり高い。

映画のエンドロールで、「劇中歌」のタイトルが次々と出て来る事がある。「劇中歌」がお金を払ってその映画に「固定」されているという事だ。

「音楽」を「著作権フリーの曲」に差し替えたりする作業をする事もある。

本当に「OA」と同じ音楽が付いたDVDを保存したければ、「OA」を直接録画してDVDに残すしか手が無い。

「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ・1977〜1998)。僕の大好き番組だ。この番組を見て、テレビの仕事をやりたいと思った。

しかし、この番組、CSで一部が再放送された以外、地上波での再放送は無い。

他局なので、ここからは推測の範囲を出ないのだが、たくさん出ている参加者の「個人情報」の問題は大きいのでは無いだろうか?

「顔」も「個人情報」である。

今のバラエティー番組の街頭インタビューであれば、必ず「取材VTR」が「放送」以外に「二次使用」(DVD化などを含む)の許可も取っている。

インタビューされた人に書類を渡して、「個人情報(顔など)」使用許諾書を書いてもらうのである。

「アメリカ横断ウルトラクイズ」が放送された時代、後楽園球場や東京ドームに集まった何万人もの人々の「顔」を「放送」以外で使う許諾書を取っていたとは思えない。だから、DVD化なども出来ないのだろう。

大阪で「朝の連続ドラマ」をやっていた時代、ロケに行き、エキストラが突然必要になると、助監督の僕はロケ場所周辺にいる人々を拝み倒して出てもらった事もある。

しかし、今の時代、ドラマは「画像に映っている人全員」が俳優かエキストラである。

「顔」が「個人情報」。

DVD化や海外に販売するドラマは全ての権利処理が必要だ。

「インターネット」の台頭で将来を見据えると、「地上波放送」だけでは「テレビ局」もやっていけなくなって行くだろう。

「テレビドラマ」には「脚本家」「演出家」「音楽」「出演者」等、様々な「権利」が絡み合っている。

それを一本一本紐解いて行く部署が今、とても大切になって来ている。
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脚本家と女優

2023年05月22日 | テレビドラマ
大阪が舞台で出て来る連続ドラマをやった。僕はAPだった。

脚本家は巨匠のIさん。制作会社のプロデューサーKさんはIさんとは何本もヒット作を手掛けており、彼が「脚本の流れ」を仕切っていた。

僕はウチの局のプロデューサーUさんとIさんの御自宅にお邪魔し、テイクアウトの中華料理を御馳走になりながら、ドラマに関して何回か雑談をした。

原作の無いオリジナル。

「多摩スタジオ」のスタッフルームで原稿を待っていると、カタカタと音がして、Iさんから原稿が数枚単位で送られて来る。

Kプロデューサーは急いで生原稿を読み、脚本家のIさんに電話をかける。

「先生、面白いですねー!すごく感動してます。この先が本当に楽しみです!」

歯の浮いた表現で、脚本家を褒めちぎるばかり。問題点があったとしても、一切指摘しない。

脚本家Iさんから送って来た原稿はそのまんまFAXで台本印刷会社に転送され、「決定稿」になるのである。

つまり、「初稿」イコール「決定稿」、脚本家Iさんには「脚本直し」という概念が存在しなかった。それだけ巨匠という事なのか?

そんなある日、「大阪のお好み焼き屋」のシーンが出て来る事になった。下町の大阪のオッチャンの会話。もちろん、全て大阪弁のシーン。

Iさんから名指しで僕にそのシーンを書いて欲しいとのリクエストがあった。

僕はプレッシャーと大きな責任感から、自宅のワープロの前でうんうん唸りながら時間をかけてそのシーンを書き上げた。

僕の書いた原稿はIさんに送られ、僕は巨匠Iさんが「僕の書いた文章」をどんな風にアレンジして面白くしてくれているか楽しみにしていた。

カタカタFAXが鳴って、Iさんの原稿が来始めた。

僕の書いたところは・・・

Iさんは僕のワープロ原稿をそのまま原稿用紙に貼り付けていた。一字一句直しは無かった。

僕は「こんなんでイイのかよ!」と思った。「初稿」イコール「決定稿」の脚本家が。

このドラマではこんな事もあった。

ある日のスタジオ収録が午後8時前に終わった。

連日の超過密な収録が続いていたので、プロデューサー陣も僕も疲れが溜まっていた。

「今日は早く帰れる!」とプロデューサーもAPの僕もワクワク。

あとは主演女優のMさんがスタジオを出るのを見送るだけ。

しかし、他のキャストやスタッフが帰ってスタジオがガラガラになっても、Mさんはなかなか控室から出て来なかった。

控室の中で物音や声がするので、明日の衣裳合わせをしているのだろうと思っていたが、それにしても遅い。

最終的に何をしていたのかは分からなかったが、 Mさんが控室から出て来たのは午後11時半だった。収録が終わって、3時間半後!

何事も無かったかの様に彼女は車に向かい、我々プロデューサーも何事も無かったかの様に顔に作り笑いを浮かべ、彼女の車が視界から消えるまで見送った。

Mさんもベテランの女優さんだ。毎回、プロデューサーがお見送りするのは知っているはず。

この出来事を境に僕のMさんへの印象は劇的に変わった。

やはり、ドラマに出る側の人でも、彼ら彼女らの事を支えているスタッフがいる。

その事を常に忘れないで、「謙虚」に行動して欲しいと思ったのだった。
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ドラマプロデューサーのストレス発散方法

2023年05月17日 | テレビドラマ
ドラマのプロデューサーをやっている時のストレス発散方法。

「編集」や「MA(音楽等を入れる作業)」の待ち時間によく新宿歌舞伎町のサウナ「グリーンプラザ」に通った。

吉本興業会長・大崎洋さんの著書「居場所。」にも、毎日放送「4時ですよーだ」の合間を縫って、「お気に入りのサウナ」でストレスを晴らすシーンが出て来る。

「脚本打ち合わせ」「キャスティング」「撮影現場立ち会い」「編集などの撮影後の作業」、いろんなところにプロデューサーは顔を出さなければいけない。

そんな作業の合間に数時間の空きが出来る。新企画作成のアイデアの参考の為に、映画館で映画を観る事もあった。

当時、ウチの局は京王堀之内駅そばに「多摩スタジオ」を持っており、収録が早く終わった日はスタッフとスタジオからすぐの「韓国焼肉屋」へ行って、煽る様にマッコリを飲んでいた。

都心での仕事が終わると、1人で「新宿ゴールデン街」の馴染みのバーに行き、店長と2人で喋りながら、午前様になるまでお酒を飲んだ。

この習慣は「番組宣伝」の仕事に異動してからも抜けず、日々お酒に明け暮れていた。今思うと、アルコール依存症寸前まで行っていたのかも知れない。

買い物依存症にも陥りAmazonから毎日いろんなモノが届く様になっていた。

お酒・買い物以外では、ドラマの仕事が終わると長めの休暇をもらって、海外に旅に出た。若い時に日本から最も遠い、地球の反対側に行ってやろうと思って、南米・アフリカ・インドなどを周った。

2015年11月、積年の疲れが溜まったのか、大病で倒れ、断酒し、睡眠時間も十分取って、規則正しい生活を送るべく努力し始めた。

その甲斐もあって、ドラマのプロデューサーをやっていた時、最大99キロまで行っていた体重も今では78キロ。カラダも軽く、体調も良い。

あのまま、アルコールに依存する生活を送っていたら、今頃どんな風になっていたか?

考えるだけでも怖しい。

「ドラマの制作」「ドラマの宣伝」、普通の人より「かなり精神的に強い人」で無いと務まらないと思う。

「辛かったドラマの現場」、それは「ある意味での『戦争』」だったのかも。

当時のスタッフと久しぶりに会って話をしていると、「同じ釜の飯を食った仲間」として、何時間でも話が弾む。

これが「ドラマ作り」を止められない本当の理由かも知れない。
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連続ドラマ「凍りつく夏」

2023年04月27日 | テレビドラマ
午前9:08。東京支社、東京制作部のFAXが「ウィーン!」と起動する。

やがて、「カタカタカタ」とFAXは鳴り、ビデオリサーチから「関東」と「関西」の視聴率表が送られて来る。

他のプロデューサーはどうしていたのか分からないけど、ドラマをやっている時、毎週火曜日の朝、FAXの前で今か今かと待ち構えていた。ドキドキした。悪い予感しか無かった。

そんな時に限って、視聴率が悪い事が多いのである。そんなトラウマが僕にはある。

連続ドラマ「凍りつく夏」(1998年)の第1話の放送が終わった翌朝、僕は京王線に乗って通勤の途にあった。

座席に座って、朝の暖かくて優しい陽光に包まれていると、突然携帯電話が鳴った。

「良かったなぁー!」
大きくて明るい声が電話の向こうから聞こえて来た。「編成のドラマ担当」のI君からだった。

「凍りつく夏」の初回視聴率(世帯)が関東で16%を超えていたのだ。

会社に着くと、東京制作部長から、
「あの企画でよくあんなに良い視聴率が取れたね」
と変な褒められ方をした。

このドラマ、僕はチーフ・プロデューサーだった。撮影現場に顔を出すと、Kプロデューサーに言われた。

「CPとPが現場に一緒にいると、『俳優陣からの相談』とか『何か不測な事態』が起きた時、『CPに相談してみます』と言えないので、なるべく撮影現場には来ないで下さい。こちらで『本当に処理し切れそうも無い事』が起こったら連絡しますから」

確かにKプロデューサーの
言う事ももっともだ。

プロデューサー側は「2段階の体制」にしておいた方が良いに決まっている。

Kプロデューサーに現場を任せて、僕は子供たちを連れて、市民プールに泳ぎに行った。家族サービス。

しかし、これがなかなか心休まらないのである。

プールで子どもを遊ばせながらも、何度もロッカーに入っている携帯電話を見に行った。

僕にKプロデューサーから電話がかかって来る時は「最悪の事態」。「抜き差しならぬ状況」になっているという事だ。

プールで子どもを泳がせていても、気が気では無い。

結局、1クール、現場を仕切らせたら敏腕なKプロデューサーから僕に電話がかかって来る事は一度も無かった。

脚本家を入れて、3泊4日で日本テレビ系列の保養所に行き、ストーリー作りの合宿を綿密にやった渾身の企画は「編成」が行なう「グループインタビュー(一般の女性にドラマの企画書を読んでもらい、自由に意見を言ってもらう調査)」で合えなくボツになった。

「あと、2〜3つ、別の企画書を提出して下さい!」

調査に立ち会った編成部員がお気軽にそんな事を僕に言った。

腹が煮えたぎる思いがした。ドラマの企画を1つ作るのに、どれだけ僕たちプロデューサーは知恵を絞っているのか、彼女は全然分かっていなかった。

土日で会社の会議室に閉じこもり、合宿で作った企画にKプロデューサーの提案で「DV(家庭内暴力)」の要素を加えた。新しい企画書が出来た。

こうして出来上がったドラマが「凍りつく夏」。初回視聴率は関東16%(世帯)を軽く超えていた。

Kプロデューサーとは3回連続ドラマで一緒に仕事をした。

3回目のドラマの打ち上げパーティーの席上で、Kプロデューサーに、そのドラマの脚本を担当した鎌田敏夫さん(「男女7人夏物語」「ニューヨーク恋物語」大河ドラマ「武蔵MUSASHI」など)を紹介された。

僕が「Kプロデューサーとは3クール一緒に仕事をしているんです」と告げると、鎌田敏夫さんは「それは大変でしたね」と僕を慰めてくれた。

ドラマ作りの感性が素晴らしく、良いドラマを作る為にはとことん粘るKプロデューサー。

「視聴者が何を見たいか」「自分が何を作りたいか」が明確に分かっているからこそ、良いドラマが出来、視聴率も取れるのだろうと思う。
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「ストレス」と「電化製品」

2023年04月26日 | テレビドラマ
「1行ワープロ」というのをご存知だろうか?「ワープロの本当に初期」、CASIOから発売されたもの。

表示部分が「1行」しか無くて、印刷してみないとどんな文章になっているか、全体が分からない。

大阪で「朝の連続ドラマ」をやっていた40年近く前、4万円近くした「1行ワープロ」を僕は購入した。

「朝ドラ」では「助監督」を8ヶ月だけやったが、常に撮影現場にいなくてはならない「助監督」に僕は向いていなかった。

先輩ディレクターの「芝居の付け方」「映像の切り取り方」を身近に見て、ドラマの監督ではやっていけないとつくづく思っていた。

それゆえ、脚本やキャスティング等の作業をするプロデューサーを目指す事にし、長いAP生活が始まった。

APと言えども、なかなか撮影現場から離れる事は出来ない。

そこから、僕の「新しい電化製品が出たら購入する」という癖が始まったのだ。

「こんなもの、ホンマに使うんかいな」と悩みに悩んだ末、自分が納得する理由を何とか見つけて、買ったのが「1行ワープロ」。

今まで手書きして、俳優さんの事務所に送っていた台本の宛先をワープロで打ち、それをコピーして使う様になった。使用方法が見つかって良かったと思った。

「Windows 85」も売り出されてすぐ買った。いろいろ説明書を見て、試してみたが使い方が分からない。こんな時、僕は粘れないのである。すぐ放ったままにしてしまう。

東京に異動になり、実家に「Windows 85」を置いていったら、父が使い始めた。

ある年の3月、そんな父から僕に一通のメールが来た。

「メールを書いてみました。もし届いている様だったら、連絡下さい」と。イラスト入りの素敵なメールだった。

これが父から来た「ファーストメール」で「ラストメール」になった。父が3月末、脳梗塞で緊急搬送され、数回微かに意識を戻したが、1年半後に亡くなったからだ。

このメールは今でも僕のパソコンに大切に取ってある。父からの遺言。

東京でドラマのプロデューサーをしていた時代、まず買ったのが、SHARPの「ザウルス」という「手持ちのインターネット接続機器」。

インターネット黎明期の電化製品だ。

「メールアドレス」も「ホームページ」もよく分かっていないまま、「プロバイダー」の「nifty」に入会した。

知人からメールが来るととっても嬉しかった。名刺の裏にメールアドレスのハンコを押して、配った。

携帯電話も毎年替えた。プロデューサーをやっていると、外での電話のやり取りが異常に多い。時には長電話で携帯電話の本体が熱くなって来るほどだ。

1年に一度買い替えないと、バッテリーが持たない。

脚本打ち合わせ、撮影現場、編集、MA(音楽や効果音、ナレーションを入れる作業)など、プロデューサーは多忙を極める。

毎日、気が休まる日は無かった。携帯電話を買い替えるのも一種のストレス発散だっただろう。

2002年、佐藤浩市さん主演のドラマ「天国への階段」で沖縄・宮古島に行った。

このドラマは俳優さんのスケジュールの加減で、放送直前に撮影が全て終わるという変則な形を取っていた。

雨に降られる事も無く、撮影はロケ初日で無事クランクアップ。

翌日は雨予備日。キャスト・スタッフは自由行動になり、ゴルフに行く者、麻雀をする者。自由行動となった。

この日の朝9:08、東京支社のFAXにビデオリサーチから「天国への階段」第1回目の視聴率が送られて来る。

僕はしばらく携帯電話をONにしていたが、いつドラマの視聴率に関する電話が会社からかかって来るか耐えきれず、携帯をOFFにして、布団を被って寝てしまった。

夕方起きて、恐る恐る留守電を聞いてみたが、何も入っておらず、着信履歴も無い。

ストレスを解消する為に買った携帯電話が沖縄・宮古島にいる僕に大きなストレスをかけていたのである。

「いつでも捕まる」という事が本当にいい事か、その時以来、疑問に思っている。
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木下惠介・山田太一「3人家族」

2023年04月25日 | テレビドラマ
BS松竹東急で5月1日から月〜金で、企画・木下惠介、山田太一、脚本・山田太一、演出・木下惠介、川頭義郎の連続ドラマ「3人家族」が始まる。

あのスタジオジブリの鈴木敏夫社長が「ふぞろいの林檎たち」に引き継いて、夕刊紙に書く予定になっているドラマ。よくVTRが残っていたものだ。このスタッフの名前を聞いては観たくなる衝動に駆られる。

BS松竹東急は普通にBSのチャンネルを探していけば見つかる無料放送。日本全国どこでも見られる。

楽しみ楽しみ!

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撮影の現場とは?

2023年04月19日 | テレビドラマ

「スタッフ全員が垣根を越えて、全ての作業を手伝う」


「アメリカ横断ウルトラクイズ」の元・スタッフがそう言っていた。


クイズ会場のセッティング、本番、撤収。限られた少数精鋭のスタッフが助け合って、いろんな事を行わないと、アメリカ大陸での長期ロケはやっていけない。


大阪での「朝ドラ」の現場もそうだった。現場のプロデューサーである僕も率先して手伝う。


五十嵐いづみ主演の朝ドラ「華の宴」。


その日はロケが「押していた」(スケジュールが遅れる事)


全て「デイシーン(昼間のシーン)」なので、撮影の進行と太陽の沈むのが追っかけっこになっていた。


たくさん干してある「素麺」の前での芝居。そのシーンが終わった。「デイシーン」は移動して、あと1つ。


僕はロケ地の真ん中に立って大きな声で叫んでいた。


「次のシーンに必要なスタッフはすぐ移動を始めて下さい。僕たちでこの現場の跡片付けはしますから」


ロケ隊を出発させた。僕はその場に残って、撮影に使われた大量に「干された素麺」を元通りにし、入念に掃除も行った。


過酷な現場ではプロデューサーがお手本を率先して見せる事も大変大事。


その日のロケが終わり、奈良県の三輪から大阪の局に帰るまで、ロケバスに乗っているスタッフは全員爆睡し、完全に意識を失っていた。連日の撮影の疲れが出ているのだろう。


そのロケバスの中で、僕は目が冴えて起きていた。何故だか、スタッフ全員、愛おしく思えた。


「短縮移動メシ」でロケバスのスタッフ全員が慌ただしく、動くロケバスの車中で弁当を食べる様子は街を歩いている人が目撃したら、異様な風景に映るかも知れない。


しかし、どんなに辛くてもドラマのスタッフは「ドラマ作り」に真摯に向き合っているのである。


「朝ドラ」の時、ヒロインは大概、メイク控室に泊まっていた。朝から晩まで撮影が続き、ホテルに帰っていたのでは「台本を憶える時間」が無い。


衣裳・メイクさんは朝8時、俳優陣が入って来るまでにスタンバイする必要がある。終わっても俳優さんが帰るまでは居なければならない。メイクさんがヒロインとごろ寝して、夜を過ごす事も多かった。


美術さんも、翌日撮るセットが変わる場合、夜を徹してセットの建て直し。


セットが変われば、照明さんは照明器具を吊り変えなくてはならない。


撮影時間以外にも、いろんなセクションがいろんな動きをしているのだ。


だから撮影現場では、スタジオであれ、ロケであれ、「気が付いた人が動く事」が必須になる。


監督は現場の雰囲気を察しつつも、自分の欲しい芝居や映像にはとことん貪欲にこだわらなければならない。


監督の姿をキャスト・スタッフは必ず見ている。


細かい「気遣い」の上にドラマ作りは成り立っている。


先日観た「シン仮面ライダー」のメイキング番組。庵野秀明監督は俳優陣にこう言った。


「僕が君たちに指示を出して演出するくらいなら、僕はこの作品をアニメでやります。実写でやるからには、君たち俳優が考えて出て来た予想外のものを僕は掬い取りたい」


庵野監督はこの時、俳優陣に向かって激怒し、その場を立ち去った。


俳優たちが考えに考えて、殺陣師がアシストして出来た荒削りのアクション。ケガをするのも顧みない一回きりのアクション。


本番!


一回で奇跡的に庵野監督からOKが出た。


過去の『仮面ライダー』をどう打ち破るか?」

正直、庵野監督は悩み続けていた。それを俳優陣とスタッフが苦しみ抜いて出した答えだった。


監督、キャスト、スタッフ、三つ巴になって、それぞれが考え抜くからこそ、観た人に感動を与えるドラマや映画になるんだと思う。


それが面白くて、キャストやスタッフもまた過酷な撮影現場に戻って来るのだろう。


極めて人間的な。


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Netflix配信ドラマ専用スタジオ

2023年04月18日 | テレビドラマ
TBSNetflixが手を組んだ。TBS100%子会社「THE SEVEN」。Netflix配信ドラマの製作スタジオの運営とそのドラマのプロデュースを手掛ける会社だ。


今、東京都内・近郊にある既存のスタジオの数は配信ドラマの数が増えて来て、全く足りない。


そこで、「THE SEVEN」が「TBS緑山スタジオシティ」の敷地内に新たに巨大スタジオを建設するという。今秋稼働。


具体的な場所はTBSの番組「SASUKE」や「風雲!たけし城」の大掛かりな屋外セットが組まれていた空き地。その広さは「東京ドーム」一個分にあたるという。


僕もこの空き地を使った事がある。


連続ドラマ「オンリーユー 愛されて」(1996)のたくさんの雪が降る幻想的なシーン。


そして、連続ドラマ「永遠の仔」(2000)のアパートが火事になり、燃え上がるシーン。


どちらも「スノーマシーン」を使って大きな音が出たり、セットに火を点けて燃やしたり、大掛かりで危険を伴う撮影。民家の近くでは出来ない撮影の為、この空き地を借りたのだった。


この空き地にはかつて、「LAWSON」のセットが立っていた。24時間営業のコンビニを営業中に借りるのは大変難しい。だから、このセットでいろんなロケ隊がロケをしていた。


韓国では国が主導して、全世界配信向けのドラマを撮影できるスタジオを早くから作っている。


日本の連続ドラマの予算が1本数千万円のところ、韓国のドラマは17.5億円の予算がかかっている。スケールが違うのも納得できる。


Netflixは現在、配信ドラマを1本3億円で製作している。


配信ドラマ専用のスタジオが出来たら、全世界の人々が一流のエンタテインメントとして楽しめる連続ドラマを110億円で製作するという。


インターネットが出来て、地球上の何億人という人々を対象にするドラマが日本の今のドラマを淘汰していく事は間違い。


その為には、優れた脚本家、魅力ある俳優陣の育成も大事だと思う。


背筋に寒気を感じる程、TBSNetflixTHE SEVENのニュースは僕に衝撃を与えるものだった。


ただ、予算を膨大に膨らませて製作するエンタテインメントもいいが、日本人しか分からない感覚に訴えるドラマはこれからも必要だと痛切に思う。


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特集ドラマ 「犬神家の一族」

2023年04月15日 | テレビドラマ

4/22(土)前編、4/29(土)後編。横溝正史原作の特集ドラマ「犬神家の一族」がNHK BSプレミアムで21:00から放送される。

主役の金田一耕助に扮するのは吉岡秀隆。
演出は、朝の連続テレビ小説「エール」、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のチーフ・ディレクターを務めた吉田照幸。両方共、大好きなドラマだったので録画予約している。

楽しみ楽しみ!



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ドラマの「打ち上げ」

2023年04月14日 | テレビドラマ
このところの「コロナ禍」で開かれなかったドラマが大多数だと思うが、連続ドラマには「打ち上げ」というものがある。

撮影に8ヶ月かかり、放送が半年続く「朝ドラ」の場合、撮影半ばで「中打ち上げ」をやる事もあった。

「中打ち上げ」はスタジオの駐車場で、焼肉パーティーをやる事が多かった。

京都の映画のスタッフもいたので、京都で安い肉を調達して来てもらい、野菜などを買い足して、食材とした。

お酒類は、俳優さんの事務所やスタッフの所属している会社から頂いたビールなどを大放出。

どちらかというと、「スタッフ中心の慰労会」が目的だった。嬉しさのあまり興奮して花火を両耳に差して走り回る助監督の姿を今でも忘れない。

「打ち上げ」。まずは会場押さえ。

大阪でドラマをやっている時は「スタジオ近くのホテルの宴会場」か「局の一階にあるホール」でやっていた。

連日、早朝から深夜までスタジオやロケで撮影が続く連続ドラマ。かかるストレスはバラエティー番組の比ではない。

会場を押さえたら、各俳優事務所やスタッフの会社、脚本家、音楽の担当者、主題歌を歌った歌手等、漏れのない様に「打ち上げの招待状」を送る。

当日。

まずは「俳優陣」が座る席をどこにするかを決める。監督やプロデューサー、脚本家の席はその横。

あとは「各部署毎」に決めていく。会場は俳優さんでもスタッフでも自由に移動して、いろんな人と飲んだり食べたり出来るのが必須条件。ドラマ制作の過程にはいろんな人が関わっているので、「打ち上げ」で初対面という人もいるからだ。

東京はドラマや映画の「打ち上げ」が多いので、それ用に使える「専用の打ち上げパーティー会場」も多い。

食事はビュッフェスタイル。お酒も自分で取りに行く形式。費用は予算もあるのでグロスで決める。

始まると、まず最初は制作局長の挨拶。もちろん、事前に誰にお願いするか、プロデューサーが根回ししておく。

僕のプロデューサーデビュー作「八月のラブソング」(1996年)の時は僕が最初の挨拶をする事になった。

主演の葉月里緒奈さんはまだ会場に到着していなかったが、緒形拳さんは挨拶する僕の目の前に座っていた。

僕は緊張で心臓がバクバク!

そして話し始めた。

「緒形拳さんが演じられた高級中華料理店のオーナーシェフが料理を作るシーンで画面に『仙台のもやし業者の箱』が映っていたんです。そしたら先日、スタッフルームに大量のもやしが送られて来て、大変な目に遭いました」

緒形さんが笑ってくれた。
僕はホッとして挨拶を終える事が出来た。

チーフプロデューサーの乾杯の発声。一度歓談に入る。

次は俳優の皆さんの御挨拶。挨拶順も調整して決めておく。

そして、脚本家、監督、音楽、主題歌の歌手の挨拶。時には主題歌をギターひとつで歌ってくれる事もあった。贅沢な時間。聞き慣れたメロディーが心に響く。

最後はビンゴ大会。

ビンゴの賞品は俳優さんの事務所やスタッフの会社、テレビ局の関係した各部署から集める。

賞品のリストも「打ち上げ」が始まる前、「受付」で作る。

いちばん高額な賞品は主演の俳優さんから提供される事が多い。

「海外旅行の旅行券」だったり、「高級自転車」だったり、色々。

「朝ドラ」で石原プロの俳優Mさんと御一緒した際、聞いた話だが、石原プロの製作するドラマのいちばん高額の賞品は「車1台」だったそうだ。桁違い!

ビンゴ大会は、いちばん苦労した「撮影現場の若手スタッフ」にいい賞品が当たると皆んなで盛り上がれる。

「打ち上げ」が終わると、会場の出口で、事前に用意した「二次会」の案内チラシが配られる。

「二次会」に「俳優陣」が参加してもらえると、スタッフは大喜び。

大体、「二次会」までが、プロデューサーの仕切りだ。

8ヶ月間に及ぶ撮影をしていた「朝ドラ」のスタッフの場合、「五次会」「六次会」と朝まで飲み明かしたそうだ。

こうやってドラマは終わる。

キャスト・スタッフそれぞれが違う新しい撮影現場に行く。

「打ち上げ」はドラマのゴールでもあり、新たなスタートでもある。
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鶴橋康夫監督

2023年04月11日 | テレビドラマ
「ツルさんは冷たい心の持ち主ですね」

僕はタクシーの中でテレビドラマ界の重鎮で「賞取り演出家」の鶴橋康夫さん(ツルさんは愛称)に、酔っていた訳では無く、素面でそう言った。

ツルさんの「演出」は俳優が現場に着いた時から始まる。いや、それ以前、指しで俳優に飲みに誘われた時、決して断らない。連日俳優と飲みに行く。

俳優の話をよく聞いて、その人が何に興味があるかを敏感に感知し、そこを集中的に話のテーマの中心に置いて会話をする。

俳優は当然気持ち良くなり、鶴橋康夫監督の為なら精一杯演じようと心に決める。

撮影現場でもリハーサル、俳優に自由に動いて貰って、カメラの角度に合わない芝居が有れば、そこだけを修正する。

決して、俳優を自分の型にはめない。

かつて、ツルさんは浅丘ルリ子さんに2つの事を言ったそうだ。

浅丘さんが「演技」をつけようとしないツルさんに「演出」して欲しいと言った時、

「僕の『演出』はロケ場所を決めたところから始まっているんです」と答えたという。

そして、ツルさんは浅丘さんに「僕は4つの方向から2カメで撮ります。1つ目は『視聴者(浅丘さん)』の為に、2つ目は『相手役』の為に、3つ目は『監督』の為に、4つ目は『映像の神様』の為に」

つまり、1つの芝居で8パターンの映像を撮る。しかも、その映像は少しずつズームインし、変幻自在に変わって行くのである。

後は「編集」。じっくりと編集にかける時間を取り、NGカットも含めて、「映像を吟味」し、「映像のマイスター」になるのだ。

その為の「映像集め」の為なら何でもする。だから、俳優を乗せ、いちばん良い状態を作り出す。

その辺が、僕が冒頭に書いた「ツルさんの冷たさ」なのである。

自分の撮るドラマの為にはどんな事でもする。特に、「編集」は「人物を切り取る作業」だ。

「冷たさ」が無いとその作業は出来ない。そこがツルさんのディレクターとして、素晴らしいところなのだと思う。

ドラマ「永遠の仔」の際、原作に14歳の少女が全裸で砂浜を海に向かって走るシーンがあった。もちろん、本人、親、事務所には了解を取っている。

海岸には最小限のスタッフ。彼女の着替える小さな小屋。そして、外部の人が入ってこない様に警備を海岸の周りに付け、厳戒態勢の中、ロケを敢行。

海の中に入って、少女を狙っていたカメラマンが波でカメラを落としてしまった。そのカメラに残された「砂が舞う映像」を見て、ツルさんはそのシーン全体をOKにしたのだ。

「砂を舞う映像」は少女の走る映像に効果的に編集で入れ込まれ、放送ではとても感動するシーンになっていた。

ツルさんは「フグ料理」が大好きだ。大阪にドラマの会見で行った時、会見終わりでミナミの「フグ料理店」に行って、2人でたらふくフグを食べ、関空から東京に帰った事もあった。

ツルさんに誘われ、赤坂の「高級フグ料理店」で飲んでいた。

フグチリを食べ終わった頃、突然、襖が開いた。サプライズ!

そこに立っていたのは、日活の大女優・浅丘ルリ子さんだった。浅丘さんは、鶴橋康夫演出の連続ドラマ「新車の中の女」、数々の賞を取った「木曜ゴールデンドラマ」で主役を演じていた。

浅丘ルリ子さんは僕の真向かいに座り、七輪で焼いていたフグを僕の皿に取り分けてくれた。とっても恐縮した。

ツルさんがタバコを二箱買って来て欲しいというので、僕は使いに出た。

帰って来て、タバコを渡すと、七輪の陰から浅丘さんが千円札を四つに折り曲げて、僕の方に出して来る。

「少ないお金でも溜まると大きくなるから」とツルさんには聞こえない様に小声で僕に呟いた。

浅丘ルリ子さんの心遣いが有り難く嬉しかった。25年ほど前の話だ。

僕は、「寝たふりしてる男たち」(1995年・AP)、「永遠の仔」(2000年・プロデューサー)、「天国への階段」(2002年・チーフプロデューサー)と3本の連ドラで鶴橋康夫監督と一緒に仕事をした。

地方ロケに行くと、夕食の時、大広間でキャスト・スタッフ全員が集まり、「ド」「ミ」「ソ」のグループに分かれて、ツルさんの指揮で合唱した。

これはツルさんが敬愛する黒澤明監督がやっていたと聞いた。

鶴橋康夫監督の最新作「女系家族」がテレビ朝日で放送された。とても面白かった。

ツルさんは1940年生まれだから、今年で83歳になる。お酒の飲み過ぎか、手のひらが赤くなっている。膵臓が心配だ。

でも、今頃新作ドラマの脚本を書いているに違いない。それが僕には楽しみだ。
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