白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―窒素の隠れた側面―

2012年04月14日 | 肥料

こんな表題の話がアメリカの或る穀物サイトに載っていました。窒素はすべての生物にとって非常に大切なアミノ酸やタンパク質、核酸塩基等を構成する元素であり、地球の大気の約78%を占めている不活性ガスです。其の窒素を、私達の食糧となる作物が摂取できるようにするのには、反応性の窒素にして与えなくてはなりません。

 

―自然の営みの中の窒素循環ーWebイラストより

今から100年程前迄は、農民が収穫できる食糧は、より肥沃な土地を求めて移動したり、緑肥植物を育てたり、厩堆肥や人畜糞尿を施したりと、窒素を土壌に補給出来る能力次第であり、生産力は限定されていました。

それが今日では、空中窒素の固定と言う科学技術により、人工的に作り出された窒素肥料の登場で、農業生産は大変革を遂げ、その収穫量は何倍にも増大しました。そして今、その安価な化学窒素肥料の多投による影響が、私達の住む地球環境に暗い影を落としていると言う話です。

 

―汚染の深刻なチェサピーク湾の風景―

それは云うまでも無く、収穫量を増やす事に余りにも熱心な農業者が作物の吸収できる量を超えて、農地に化学肥料を投入する為であり、其の結果で発生した過剰窒素が齎した所産です。農地土壌の劣化から、気散する亜酸化窒素ガスによる地球温暖化、流亡する硝酸性窒素の地下水汚染、河川や湖沼、沿岸海域の冨栄養化等、自然環境に深刻な影響を及ぼしています。

 

―アメリカ東部海岸に位置するチェサピーク湾―Wikipediaより

この問題の解決には、先ず、その窒素とは?の原点から考えて行かなくは成りません。大気中の78%を占めている窒素は不活性ガスのN2で存在し、植物がそれを利用できる様にするには、地中の窒素固定バクテリアに頼るか、植物の利用可能な形の反応性窒素にしなくては成りません。

ドイツの化学者のハーバーとボッシュが、不活性窒素ガスからアンモニアを合成する方法を確立し、本来の目的は爆薬製造にあったと言われますが、そのアンモニアを原料として窒素肥料が開発され、自然からの限られた窒素を農地に補給する農業の時代に終わりを告げました。

 大規模な化学肥料の施用が始まったのは、安価に窒素肥料が製造できる方法が産業的に確立された第2次世界大戦以降と言いますが、そこで登場して来たのが、「緑の革命」と呼ばれる新しく育種され、高度な窒素肥料の投入で、飛躍的に収量が増大する穀物品種の導入による農業です。

 

―肥料窒素が加わった窒素循環イラストーWebイラストより

その結果、今日の人間社会は、安価な窒素肥料の広範囲な利用と新品種の導入によって可能となった、近代農業の高度な食料生産システムに頼る事となりました。しかし、この人工窒素肥料の製造には、高いコストが伴っていると言われ、N2をNH3に変換するには高い温度と高い圧力が必要であり、其の為の大量のエネルギーの投下が欠かせません。世界で年間に消費するエネルギーの約1%がアンモニア製造に使われ、其の多くが窒素肥料となると言います。

 

―アメリカのコーンフイールド風景―Web photosより

化学窒素肥料はアンモニアから製造されるのですが、植物が容易に摂取できる反応性窒素は、常に施された処には留まらず、自然の摂理に従って大気へ、地下水へと移動して離散して行きます。

土壌に肥料として施された窒素が、どのくらい作物に摂取され、時間と共にどのくらいが溶脱し、どれだけが土壌に残るのかを推測するのは大変難しいのですが、一般に作物による肥料窒素の吸収率は、施肥量の30~50%と言われています。

 

―アメリカのコーンフイールド風景―Web photosより

条件が良くても、土壌に施した窒素肥料の50%は摂取されずに何処かに消えると聞けば、何方も驚きますし、其の対策は無いのでしょうかと言います。

実は、対策があると言えば、過剰施肥をできるだけ避け、其の分の施肥量を減らすしか無いのです。

しかし、作物の種類や栽培ステージで異なる窒素の摂取量を、過不足無く適正管理するのは至難の業であり、窒素の施肥量を抑えれば、必ず収量減に繋がります。

 しかし、既にアメリカでは、1980年代から施肥量低減の考え方が提唱され、叫ばれたのが前にも申しましたが、「LISA」と言われるー“Less Input Sustainable Agriculture”―「低投入による持続可能な農業」のコンセプトです。

 

―肥料を散布するトラックターWeb Photosより

しかし、農業大国のアメリカ農民に、特別なインセンティブを与えずに、収量を犠牲しても土壌環境を守ると言うコンセプトを徹底させるのは無理のようでした。

農業専門家に「化学肥料や厩堆肥の使用量を同じに様に維持して行かなくても、同程度の収穫量は得られます」と言うと、大概の方は同意するのですが、そんな話に喜んで乗る農民は殆ど居ないのです。

農民にとっては、施肥量の増量は一種の保険であり、施肥量を減らして収量低下のリスクを取るよりは、少々施肥量を増やしても、確実に高い収量が得られる方を選びます。

 

―窒素肥料は土壌炭素率を下げると言う―ScienceNeswより

そこで挑戦となるのが、高収量を維持しながら一方で、流亡する窒素を最小にする作物への肥料の与え方を探す事です。それは単刀直入で良いのですが、窒素を効果的で安全に使う主流の農業者を探すのは厳しい事です。

簡単に言えば、それではインセンティブに乏しく、低い肥料コストに、汚染加害者の負担義務はありません。

 そこで次に考えられる事は、亜酸化窒素等の大気への排出を規制するような法制化ですが、既に多くの課題があり、遅々として進展しないと言います。又、研究機関は、発生する収穫減の補填費用よりも、農地への過剰に施肥される窒素の齎す発生費用の方が高価と認めています。しかし、実情は、穀物単価はあまりにも低く、それにも増して、窒素肥料はさらに安い事です。

 

―安価で手に入る化学肥料―

科学者達は、このような状態は長く続き出来ず、農業強化策では、やがて膨大な費用補填に行き着くと言います。そして一方では、穀物生産に携わる農業者への別な補償の方法があると言います。

それには、昔に還って、大規模な緑肥植物を育てる自然の窒素固定法による再現を提案する事が挙げられますが、その為には、現行の農業奨励構造を変えなくてはならないと言います。

 農業の高収量を支える政策は、最早続行が無理であり、農業者が化学肥料の窒素を節約する事で補償されるべきであり、有機窒素の利用による収量減少をも克服して行く長期に亘っての農業の実践が、そのゴールと言います。

 其の実現には、「政治が作用する意志」が必要であり、その政治を支える国民の窒素が齎す影響の深刻さを受け止める理解力があって、初めて実践農業を変えていく力となると結んでいます。

 日本の農業も多くの課題を抱え、変革を叫ばれて久しいのですが、政治を支える国民の意志の名のもとに、偏った「政治の作用」が働いて来たように思われます。日本の農業の将来も亦、皆さんの確かな農業の現実の理解に掛かっていると申せます。

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