白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―海浜香草 “浜防風” 受難!―

2019年11月14日 | グルメ

今年関東地方に上陸し、東北地方に抜けた風台風の15号と雨台風となった19号、風害による大規模停電と断水騒ぎを千葉県に起こした15号に続き、中部関東から東北地方に掛けて各地の中小河川のあちこちて氾濫する水害等、近年に無い甚大被害をもたらす結果となった19号、両台風に被災された多くの方々には深く同情し心より見舞い申し上げます。

扨て、拙宅の外房菜園での被害を申せて頂けば、海岸からわずか150メートルほどの距離にあって常日頃より海風害にさらされて、やっとの姿で生き残って4メーター程に伸びていた生垣の何本かのかなめもちレットロビン、根こそぎに倒されてしまい、囲うようにして育てていた何本かの大事にしていた温州ミカンは葉が一枚も残らず吹き飛ばされ、実付いた青蜜柑の幾つかを残してすっかり坊主姿になって居る始末、此の侭では生き残っても来春芽吹くどうか分かりません。

 

―海風に強い黄金マサキ 場所を選べば 理想的な防風垣根木となる!-

ところがそうした自然の脅威にも、敢然と立ち向かって持ち応える垣根木があり、それが土着の房州広葉マサキやトベラであります。

其の海風に耐える強さを知って植え付けたのが、隣家の裏庭との境にある房州黄金マサキであり、全くの無傷のどこ吹く台風害と言った姿であったのです。

その耐風力を誇る丈夫さこそ、植物が置かれた厳しい自然環境に適応する能力であり、其の大切な意味をこの度は、まざまざと見せつけられる結果になりました。

実は、予てよりそれを見込んで菜園全体を、やがては其の丈夫な房州黄金マサキで囲うように植え付ける準備をして、昨年から少しずつ、挿し木繁殖を始めていたのです。

唯、いくら育ちが早くても、菜園を吹き抜ける海風害を防ぐ程の高に育つには、まだまだ5-6年は掛かるのであり、其の間の菜園表土が飛ばされる海風を少しでも抑えられる間作植物は無いと探していたのが、実は表題の海浜山菜とも呼ばれる、知る人ぞ知る“浜防風” であります。因みにその名前の謂われは、海風に飛ばされる浜砂を防ぐ防風草であります。

 

―国指定天然記念物の太東海浜植物群落―Web画像より

その“浜防風”を育てるなら、実は当該地域は昔から九十九里浜南端の太東岬を境にしての様々な海浜植物の育つ適地であり、日本列島を北上する黒潮がもろに突き当たって立てる荒波は有名であり、その海に突き出た海蝕崖に打ち当たる白波の寄せる狭い砂浜は、ユニークな植物群が育つ特異な海浜地域でもあるのです。

そんな事からすぐ近くには、大正9年7月に日本で最初の国指定天然記念物に指定された 「太東海浜植物群落」があり、その当時は、広大な砂浜と安定した砂丘、砂丘背後にクロマツや常緑広葉樹からなる景観が海浜固有の特殊な生態系とともに評価されましたと現地の案内書にはあります。

それが今では、海岸が海蝕によって数十メールに亘って後退してしまい、当時5ヘクタールと言う地域も大幅に減少したと言いますが、それでも今も見られる海浜植物群が、トベラ、ヤブニッケイ、マルバグミ、テリハノイバラ、ハマヒルガオ、ハマエンドウ、浜防風、ラセイタソウ、ハマニガナ、コウボウムギ、ケカモノハシ等であり、海浜地特有の植物叢の観察ができるのです。

 

―日本の海岸に自生する 開花中の浜防風-Web画像より

其の中で、今般取り上げた“浜防風” 日本列島の海岸地帯には、昔から何処でも見かける事が出来た典型的な海浜野草であり、何故にその植物の受難と申すかと言いますと、実は多くの人達が其の存在を、昔から利用されて来た高尚な日本料理に付け合わせる香草と知るに至って根こそぎ掘り取って仕舞うようになり、たちまち海岸の自然繁殖地から姿が消え去って行く運命にあるからです。

其の理由を早く言えば、“浜防風” は食べて大変美味とされるめずらしい海浜香草であり、新葉を取って食べる為に、海岸近くに住む一部の方が摘み取るだけならまだしも、通常なら植物にとっては大変厳しい海浜の肥料分の乏しい土壌と海風と灼熱の太陽に晒される厳しい気象条件に適応した、過酷な環境下でも自然種子繁殖できる宿根草でありながら、それを殆どが営利目的で商業栽培に利用しようとする試みの動機で持ち去られるらしく、その多くが今や、自然破壊と相俟っての人災で繁殖地から消える運命と成って、受難の海浜植物となったと言う事です。

そんな自然で生き残っている植物を持ち去るとは、何と卑しい心の持ち主の多いのかと辟易するのですが、驚くなかれ、或る地域では、一部の自治体ですら、海岸に自生する海浜山菜の “浜防風”を、商業栽培に成功して市場出荷が実現すれば、自然の多く残る過疎地の地域振興の町おこしにも成るとして、採取しての試験栽培を奨励していると言う話が、ネット上にあったのには呆れるばかりで、開いた口が塞がりません。

 

―海浜山菜の定番料理 浜防風の酢味噌和えーWeb画像より

唯、此処で申し上げたいのは、“浜防風” はどのようにして自然繁殖する植物であるのか、簡単に商業栽培の対象作物になる要件を満たせるかであり、其そうした栽培についての明確な見通しもなく、唯、消え行く植物の希少価値を狙って商業栽培が成り立つとする考え方には、特定人の独りよがりならまだしも、何人かの人が集まって賛同し、寄って計って自然から掠め取って業に利用しようとする話では、失格人間の集まりではと言いたくなるからです。

それでか最近は、一部地域の海岸では、“浜防風” は著しく減っている絶滅危惧種のリスト入りが心配されている貴重な海浜野草とされ、人の手で一本ずつ、海岸の砂地に実生苗を植え付ける復活運動が大変盛んであります。自然環境を守って生物の生態系を保全する、今時の持続性を志向する方々に依る参加型の社会活動と言う事です。

それは真に好ましい話ですが、本来は日本古来からの海浜薬草である “浜防風” 元は中国から伝わった漢方薬草の「防風」に類似する日本の薬草であり、同じような薬効があると珍重されて、宿根草であるゴボウのような長い根を掘り取って乾燥し、煎じて飲む漢方薬が、風邪の発熱、頭痛、咳き、胃炎、関節痛、神経痛、喉鼻の乾燥に利くとされて来たのです。

又、料理の世界での食べ物としての古くからの利用法があり、江戸時代から食されていたようですが、因みに元禄10年(1697年)に刊行された宮崎安貞の「農業全書」にも野菜とされ、食べ方や栽培方法が記載されているとあります。

 

―浜防風の茎を3分割して水に落として錨状にして付け合せる!-Web画像より

其の浜防風の食べ方ですが、新芽を軽く茹でて酢味噌和えやてんぷらにするほかに、生食には刺身のツマに用いられ、魚の生臭みを消す、特有な香りと、ほのかな辛味があり、ツマとして食べて食欲を増進する効果が好まれると言うのです。

その刺身のツマに使用する際、葉柄を十字にいれると、くるくるっと丸まり、船の錨を連想する形になるところから、イカリボウフウとも呼ばれ、八百屋防風の名でケース入りの生鮮山菜として高級料理店向けに、今も高価で取引されている事から “浜防風” の商業栽培向けに利用しようと根こそぎ取り去る輩の、触手を動かす動機付けになったのも、其処に有ったのかも知れません。

 

―昔からの軟化栽培法で育て出荷されて来た浜防風―Web画像より

尚亦、セリ科の “浜防風” には良く似たボタン防風があり、又同じセリ科の八丈草と呼ばれる「明日葉」がありますが、こちらの方は既に知れ渡って食用栽培もされて居ります。それらに含まれる栄養成分は豊富なビタミン類やミネラル分であり、栄養成分的には “浜防風” とあまり変わらない筈と思われるのですが、確かな関係情報は見当たりません。

それにしても、外房菜園の間作に何とか利用できる作物にしたいと思った理由は、土壌条件が海生砂土であり、また生育環境的には海風に晒される厳しい風害を受ける場所に当菜園があるからに他ありません。

是非とも “浜防風” の自然に生えている姿を見つけて、種子を取って撒いて見たいと先だって探したのですが、其の受難の姿の面影すら、附近の海岸一帯では全く見つけることができませんでした。種子入手可能な明日葉やボタン防風なら、簡単に育てられるので出来たら附近で “浜防風” の姿を見つけ葉を取って、食べ比べする事がこれからの楽しみです。

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