白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

トマト品種-ブランデーワインの話

2012年05月02日 | トマト

アメリカのトマト園芸愛好家の中で、特に人気の高いエアールームトマトに 「ブランデーワイン」と呼ばれる品種があります。たぐい稀な芳醇のワインを思わせる香りの良さからか、伝説的な高い評価を得ているトマトです。

その特徴はと言えば、1果が450gを超える濃ピンク色の大果種であり、葉が「ジャガイモ」と同じような形であり、赤く熟した果実をスライスにすると、ビーフステーキのようにも見えるビーフステーキ種トマトであり、その香りと緻密な果肉と鮮やかな色彩が人気の高さの秘密かも知れません。

 

―見事な大きさのブランデーワインーWeb Photosより

ところが、このエアルームトマト、多くのトマト愛好家の手に渡ってから、個人が種子を取ったり、譲ったりした為に、結果として私的な「選別」による数多くの亜種系統が生まれたとも言われ、中には香りも品質も劣るものがあり、今では自分が育てて居る 「ブランデーワイン」が本物かどうか知るのも簡単ではないと言います。

 

―ブランデーワインの緻密な果肉、鮮やかな色―

更に事を複雑にしているのは、高い人気に触発されてか 「ブランデーワイン」の名の付いた品種がいろいろ売り出され、中には交雑や選別の不手際に依るのか、其の種子から変な果実が出てくる事もあると言います。

 その「ブランデーワイン」トマトの尤も確かな由来と言えば、全米の在来種、固定種の種子交換団体である「Seed Saver Exchange」の1982年の収集リストに載る過程で見つかったとあり、今は亡くなったオハイオ州のトマト愛好家であった老園芸家、ベン クイセンベリー氏が 「ドリス スダス ヒル」と言う名の女性から譲り受けたトマト品種と言います。

彼女の話では、80年間に亘って家族が維持して来たトマトと言う事ですが、彼女の出身地は分からず、そのトマトが何処から来たのは不明です。今日、種子市場で 「ブランデーワイン、スダス系」と呼ばれる品種は、そこから分かれたトマトだと言われています。

 

―エアルームトマト栽培愛好家のWeb Pageよりー

そこで考えられるのは、その「ブランデーワイン」種が、元は育種選別されて生まれた商業トマト品種がエアルーム種として永く家族間で保存されて来たのか、それとも何処か海外から持ち込まれたかです。

実は、1890年代の種子カタロクに、それらしきトマト品種の記事があったと言うのです。それが、先のブログで紹介したトマト品種「ヘンダーソン ピンク ポンデローサ」の生みの親であるピーターヘンダーソンが 「MIKADO(ミカド)」と言う名前で発表したトマトです。話題の「ブランデーワイン」種は、多分、其の系統種ではないかと、トマト愛好家である研究者は言うのです。

一方では、Johnson & Stokesと言う別な種子会社の1889年に発表したカタロクの中に「ブランデーワイン」と言うネーミングのトマトがあったと言います。その果実の色は、ピンク色から赤色のトマトであり、葉もポテトタイプではないように見えますが、今日で言う 「レッドブランデーワイン」と呼ばれる品種では無いかとも言います。

-1889年のトマト種子カタロクーWeb Photoesより

又、ピーターヘンダーソンは「ゴールデン ミカド」と言う品種を発表して居り、それが今日「イエローブランデーワイン」と呼ばれる品種では無いかとも先の研究者は言います。

 

―イエローブランデーワインーWeb Photoesより

そして、その辺の謎を解く 「隠れたブランデーワインの話」と言う記事を偶然、ペンシルベニア州の地方雑誌のオンラインページの中に見つけました。このトマトは、英国の或る伯爵の広大な農園で1886年に見つかった突然変異のピンクトマト種であり、前記のピーターヘンダーソンが「ミカド」の名前で発表したトマトがその親であるとあります。

それが、どのような経緯かは不明ですが、前記のJohnson & Stokesと言う別な種子会社にその種子が渡り、試験栽培とその鑑定評価を依頼した先から高い評価を受け、其の近くを流れる川の名前に因んで 「ブランデーワイン」と命名されたとあります。その「ブランデーワイン」、1920年代には、すっかりその姿を消したのですが、再び世に出てきたのが、1982年の「Seed Saver Exchange」のコレクションリストであったと書いています。

そして又、その「ブランデーワイン」に、黒トマトを掛けて1920年に作り出されたのが、ペンシルベニア州のChesterCountyのリマ豆の保存の提唱者でも良く知られいる歯医者さんの育種家であり、それが 「ブラックブランデーワイン」であるとも書いています。

 

Chester County CourthouseWikipediaより

それにしても「ブランデーワイン」の名の付くトマト品種は10数種にも発展し、正統品種の「ブランデーワイン、スダス系」以外にも、何種もの系統種が作られて、トマト栽培愛好家の間では、その違いをはっきり判別するのは大変難しいと言います。                                         

しかし、数多くの種類のトマトを自ら育てて、其のトマトの姿形や本当の味を楽しむ事を知ったアメリカのトマト栽培愛好家の話は、何とも羨ましくて頼もしい限りです。

 

―ブラックーブランデーワインーWeb Photoesより                                                                                                                                                 

それに比べると、日本のトマト品種は商業栽培用に絞られて、雨除け栽培が中心の施設園芸品種が主体であり、桃太郎シリーズトマトが市場を占有した事もあって、追従する他社品種も亦、すっかり同じ特色を追い駆ける形となり、果実がピンク色に色付いても、皮が堅くて輸送に強い、甘味志向のトマトばかりとなり、トマト本来の酸味や水々しい香りはすっかり消えて仕舞ったと申せます。

 

―トマト桃太郎―姿形が全く同じー

その結果でしょうか、品種のバラエテイーは益々狭くなり、栽培の容易なミニトマトは別ですが、一般のトマト栽培愛好家が育てられる日本の気候風土に適した露地栽培も可能な大型トマトは無くなって、珍しい輸入トマトの種子や苗が、アマチュア向けに登場するようになったようです。

しかし、前にもブログで申し上げましたが、氏素性の良く分からないエアルームトマト種子を、その特色や栽培法の情報もろくに無く、種子販売だけを始めるようでは、その定着はどう見ても無理と申せます。

 

―新プランター栽培のホーム桃太郎の収穫―                                                          

何故なら、アメリカのエアルームトマトの普及の裏側には、多くの熱烈なトマト栽培愛好家の努力と経験から生まれた卓越した識見と普及への熱意が隠されて居り、そうした背景や栽培技量もなしに、ブームにまねて輸入種子の普及を図りたいとはお粗末な話です。

 

ホーム桃太郎を収穫する孫娘―

しかし、既に日本でも 「ブランデーワイン」の人気に目を付けたのか「ブランデーワイン」のレッド、イエロー、ブラックが、種子通販で登場しています。其の品種の確かさは、知る由もありませんが、日本でも早く、そうした熱意を持ったトマト園芸愛好家が育ち、輸入トマト品種の中から、日本に向いた品種が選別されて、定着する事を願ってやみません。新プランター栽培なら、何方でもそれが出来るからです。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
種子を探しています。 (MS)
2021-06-17 09:42:39
はじめまして。かなり以前から拝見しておりました。
私も秋田の方からオークションで
種子をわけていただき、数年ほどは自家採取
していたのですが、自然遺失してしまいました。
いま、秋田の方はヤフオクに存在が確認できず、、
もしも、、種子をお分けいただけたならと、
勝手ながらお願いいたします。
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