白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―ニューポットポニックス 三つの要点―

2016年02月05日 | NPP

土壌は、その中に含まれる粘土分や有機腐植物が、ミミズなどの土壌昆虫等や微生物の働きによって作られるという団粒構造の間孔隙、その多くを持つ多孔質構造体である事が作物にとって望ましい姿であります。

其の土壌の多孔質構造は、其の中に根を伸ばす作物にとって大切な養水分の供給源であり、その保水性と相反する排水性が、根の呼吸に必要な通気性を促進するのであり、土壌の持つ間孔隙は、その生命を育む働きの大切さから、土の命とも謂われています。                                    

 

ガーデナーズ・ガーデン /初心者のための基礎講座より

ご存知のように、プランターやポットなどで用いられる市販の培養土等では、団粒構造の働きを持たせる為に、保水力に優れる粒状の赤玉土、腐葉土やピーモス等に加え、更に排水性が良くなるように粗い砂礫土等を配合した「園芸培養土」と呼ばれる、いろいろな配合土が売られて居ます。

しかし、そうして作られた配合土の団粒構造は、一般にプランターやポット栽培に用いると、度々の給散水等で崩れ易く、保水性と排水性のバランスを取るが難しくて、どうしてもどちらかに偏り勝ちになります。

保水性が良ければ通気性が悪くなって根腐りを起こし易くなり、排水性が良いと、忽ち乾いて給水の頻度が増える等、少ない用土量で育てるポット栽培では、特に水分管理が面倒な事になります。

それで容器野菜栽培では、栽培用土容積を大きくするしか無く、一定以上の保水量と通気性を確保する為に、先ずはプランターやポットの大きさを、育てる植物にあわせて決める事になるのです。

扨て、その土壌の植物に取って理想的な機能構造を概念的に表したのが、固相、気相、液相で示される土壌の三相構成であります。 そして、土壌の持つ粒度分布、間孔隙率、間孔隙径分布、土壌の保水性、排水性等の性質を示す、土壌に求められる物理的な性質がその第一の必要点に成って居ります。

 

―土壌の三相構成比―WebPhotoesより

土壌には亦、植物に必要な肥料成分を保持する性質を持つ、粘土や腐植微粒子の働きが欠かせません。合わせて土壌自体が保持する無機成分である、鉄、亜鉛、硼素、マンガン、銅、塩素、モリブデン、ニッケル等、植物に取って必須となるミネラル分の供給能が求められます。

それらの土壌に求められるのは、荷電物質の挙動を左右する土壌の水素イオン濃度、pHを一定の範囲に自立的に保つ緩衝能と呼ばれる機能であります。

 植物への円滑な肥料成分保持、供給能の指標となる土壌に求められる化学的な性質が、電気導伝率、水素イオン濃度、陽イオン交換容量等であり、土壌に求められる二つ目の必要点であります。

 

―土壌から摂取する栄養素―肥料協会イラストより

其の次に揚げられる土壌の作用としの大切な性質には、土壌微生物等、土壌に棲む生物群の活動と其処に栽培される作物との共生関係で、考慮されるべき土壌の働きであります。

それが、前述の土壌の物理性と化学性の要点に合わせて、よく謂われている土壌の持つ生物性であります。

 土壌生物の生態系が、作物にどのような作用を果たしているか良く分からないと言いますが、今から百年以上も前に、ドイツの研究者によって提唱された、植物根に接する極限られた土壌領域に棲む微生物と植物の共生関係を示す根圏作用、其の作用が土壌の重要な役割である事が明らかにされています。

 

―根圏作用の働き示すイメージイラストーWebPagesより

土壌に供される有機物質等の無機化に依る、肥料成分としての供給能、その物質循環の要となる土壌生物生態系の食物連鎖が、土壌の健全な機能を支えて居り、それが植物に取って大切な、土壌の本質的な役割を果たす微生物等の働きであります。そうした土壌環境を提供する土壌生物生態系を維持する性質が土壌の生物性であり、それが土壌の第三の要点となっています。 

  

―法定土壌改良材の能登ケイソウ土焼成粒―

以上に述べた土壌に求められる三つの要点、植物の土壌栽培の成果の鍵を握っているのであります。大袈裟な言い方になりますが、其の3つの要点が質的、量的にどの程度に充足できるかが家庭園芸栽培でも亦、その成績を左右する事は言うまでもありません。

その大切な要点を制約する、栽培用土容積や施肥給水条件等、極めて限られる環境下で行われる趣味のプランターやポットの家庭園芸では、如何にしてそれらに対処し、発生する問題を克服するかが課題であり、其の工夫から生まれたのが、小さな5号プラポットでも充分に育てられるNPP、ニューポットポニックスと名命した非土壌の養液肥料栽培であります。

それでは此処で、その大切な三つの土壌機能を代替出来るように構成して、植物栽培により効果的に作用するようにした、特殊な媒体を用いる新ポットポニックス栽培の媒体について、どんな特色があるか改めてお話させて頂きます。

そのニューポットポニックスと命名する元となった“ハイドロポニックス”、今から80年程前にアメリカのカルフォニア大学農業試験場にあって、研究者の一人のWilliam Frederick Gericke博士が開発して命名した、土壌を離れて土壌機能を代替出来るように構成した高効率の装置栽培法であります。

 

―ハイドロポニックスの独壇場は葉もの野菜栽培!-WebImagesより

そのハイドロポニックス、実は、土壌の持つ前述の三つの要点を超える、ダイナミック(動的)養水分給液法によって植物栽培を実現した装置栽培であり、言い換えれば、土壌の三つの機能を概ねキャンセルして成立する高効率な作物栽培法と言う事であります。

ニューポットポニックス栽培は、其のハイドロポニックスを参考にして、土壌に替えて作物への機能性の高い媒体を利用し、ポットサブイリゲーションに依るスタティック(静的)養水分底面給液方式で実現した極めて単純で簡易なハイドロポニックスの一種であります。

それでは此処で、土壌に替わる構成媒体の主構成々分となっている珪藻プランクトンの死骸が堆積して化石化した珪藻土、その中でも風化が進んで珪殻に含まれる特に粘土成分の多い性質を利用して、一定サイズに造粒して焼成したケイソウ土焼成粒材の物性を、土壌に求められる三つの要点に照らして説明致します。

 

―珪藻土焼成粒の細孔模式図―

その焼成粒、微細な珪殻の細孔が1次、2次、3次にわたる高度な通導性を持つ、独特の間孔隙分布を構成しています。
此の多孔質構造体、見て分かるように、土粒子で作られる団粒構造体とは全く言って良い程違った、元は生物であった珪藻が化石化して残した珪殻と混ざりあった、粘土成分の造粒焼結した多孔質体セラミックスであり、珪藻土粒を焼成した為に、全く崩れない硬質の特異な団粒組織体となっています。

その構造体、実は粒径約2mmのセラミックス粒であり、珪殻に明いた無数の連通細孔により、優れた排水性と一定細孔径がもたらす限られた保水性能の両方の性質を恒常的にあわせ持つ、他の土壌多孔質構造体には見られないユニークな浸潤性、高い不飽和透水性を有しています。

其の為に、此の粒材の本来の目的は、その物理的特長を利用する土壌の透排水性の改善資材であり、特定の土壌に混合して、その透水性を改善する 「地力増進法」で定められた 「法定土壌改良材」として利用されている特殊粒材であります。

その特異な保水能力の物理性に着目し、限られた容積のプランターやポット栽培等で、大型野菜まで栽培を可能する、園芸容器栽培用の媒体として利用する方法を考案にしたのが「新プランター栽培」であり、全く同じ原理でそれを応用したのが新ポットポニックス栽培であります。其のキーワードは、此の媒体の備える間孔隙径率であり、其の低保水エネルギーにあります。


 ―藻殻の電子顕微鏡写真―Wikipediaより

この粒材、もとは珪藻土と言いますから、土としてはどの様に分類されるのでしょうか。実は日本では無く、アメリカの試験機関で実施された検査資料からですが、そのデータは次の通りです。

粘土              0.00%                

シルト .002mm -.05mm   2.8%

砂   .05mm - 2.00mm   96.91%

礫   > 2.0mm         0.00%

となる 96.91%が.05mm - 2.00mm の単粒度の砂に分類され、其の飽和透水係数、乾燥密度、土粒子密度は下記の通りです。  

飽和透水係数 cm/秒 0.164

乾燥密度    g/cc 0.62

土粒子密度   g/cc 2.21

そして、其の水分保持量ですが、各張力下の毛管保水率、空隙率が下記の通りです。

張力       保水率    空隙率

10 CM      57.8%     14.3%

20 CM      38.5%     33.6%

30 CM      37.5%     34.7%

40 CM      37.0%     35.2%

この媒体は、特異な多孔質体の持つ優れた毛管保水力、加えて高度な通導性による媒体全体の養水分の浸潤により、用土容器栽培の半分以下の容積量でも、植物に高い根密度を形成させて高度な養水分の摂取効率を上げる働きがあると分かったのです。それは上記の張力と保水率の関係にあります。

其の鍵は、培地の空隙率が約72%もあり、其の空隙に占める養水分量が、プランター等栽培容器内で常に約35%前後に保つ事ができる事、その養水分の大部分が低い水分張力下で保持される事であり、それだけ植物は容易に養水分の吸収が出来るのであり又、媒体の保水分勾配が、植物にとって大変好ましい領域にある事です。 

言い換えれば、この媒体は35%前後の液相と気相、30%の固相を、常に維持する物理性を有して居て、其処に保持される養水分が植物にとって極めて摂取しやすいエネルギー状態にあると言う事です。当に土壌の物理的要点を満点でクリアーできる土壌に替わる媒体と言う事であります。

 

    ―ケイソウ土焼成粒の水分張力に相関する気相/液相率の示すグラフ―

そこで必要になるのは、植物の養水分摂取に備えて、媒体内に常に体積率35%の養水分をどうやって維持させるかの工夫であります。

そして思い付いたのが、栽培容器内媒体の底面部分を一定高さ迄、貯水して飽和養水分帯域(ウォーターテーブル)を作り、その底水面から毛管吸水させる方法、所謂、サブイリゲーション方式の毛管養水分給液法であります。

栽培容器内に、植物が根を張る不飽和養水分域と底面に貯液する飽和養水分域を形成させて、植物の養水分摂取で減少する根域の養水分を自然原理に従って、自律平衡的に毛管上昇して一定量が常に補給されるように構成した栽培法であります。

―底水面灌水法のイメージイラストー

言うまでも無く、其の栽培効果は、従来のプランター用土栽培と較べものに成らない程優れている事は栽培写真でご覧になってご理解できると思います。

このような給水原理、一般土壌の有する多孔質構造体を利用すれば、大なり小なり底面給水法の容器栽培での利用は可能であり、園芸草花では貯水皿を底面に設けてリボン吸い上げ専用プラポットが利用されるようになって久しいですし、一般の趣味の野菜園芸容器栽培でも、最近は毛管吸水方式が、いろいろと利用出来る用土野菜栽培容器を見掛けるようになりました。

その利用には実践面での肝腎な課題があり、特に日本の気候風土、利用する用土機能に加え、栽培技量次第であり、その成果には給水だけで解決できる問題では無いと知るべきです。

一方の趣味の簡易な毛管水耕ハイドロポニックスでは、変化する養液の組成管理の課題解決等を考慮しますと、其れなりの高い栽培効果を上げるのは容易では無く、お遊びの類を出ないと申し上げるのが妥当と思います。

 

    ―標準プランター3本仕立て大玉トマトの収穫―
その次の要点で課題となる考慮が必要なのは施肥量管理であります。言うなれば媒体の持つ化学性であり、前述の土壌の持つpHの安定した中性を保つ自立的な緩衝能の付与であります。

実はこの問題、土壌機能を離れた水耕栽培、ハイドロポニックスでは重要な管理課題であり、常に適性濃度と組成に均衡培養液を管理しなくてはならない養液栽培の特有の泣き所であります。

其の問題を解決するヒントとなったのは、土壌を構成する或る種の土壌粘土鉱物の添加であり、容易に其の機能が、スタティック(静的)養水分底面給液方式故に改善出来る事が分かったであります。

その上に土壌の本来備える根圏微生物を涵養する生物環境にも緩衝能に資する事にも気付きました。

その根圏微生物を涵養する此の媒体の持つ特性は、媒体の持つ3ミクロン以下の根毛も毛管水も容易に出入りが出来ない微細孔にある事も、ネット上の別情報で知ったのです。言い換えれば、その要件を、ケイソウ殻由来の微細孔は備えていると言う事で有ります。                               

これぞ、土壌の持つ生物性の働きであり、根から脱落する毛根類の排分泌物の清浄化を果たす、根圏微生物の作用が好ましい働きをするのであり、この栽培法が第3番目の要点をクリアーできる健全な根環境を維持する作用が、媒体自体の構造的な特性に備わって居たのを発見したのです。

 

―スナップエンドウの一本の根量と付着した根粒―

この土を超える機能は、自然が生んだ珪藻プランクトンの持つ珪殻細孔が作り出した多孔質体の不思議と申せますが、実はどんな珪藻土焼成セラミックス粒でも、その効果が同じとは行かない事も他の珪藻土焼成粒材との比較栽培実験で分かりました。其の媒体の特性の違いが、其処に育つ植物には分かるようです。

扨て、5号プラポットと自給液トレーと組み合わせとなるニューポットポニックスの次の課題と言えば、面倒な2液式の稀釈均衡培養液に替わって安価で容易に入手可能な市販液体肥料との比較栽培実験であり、栽培品目が多いので何から選んで始めるかが課題となります。

多品種のミックス栽培が可能なレタスミックスなどの、マイクログリーン、代表的なハーブ野菜の5種類程に絞って早速始める予定です。

 

―イタリアンパセリ-のマイクログリーンポットーWebPagesより

尚このブログ、今春から始める 「ハーブ野菜とマイクログリーンを育てるニュー新ポットポニックス」の話で紹介する栽培法の説明会の要旨に用意して見たのですが、理屈っぽい講釈であり、お読みになられた方々は充分にご理解頂けたでしょうか。ご感想、お問い合わせ、ご質問等ありましたらお聞かせお願い申し上げます。

必要なら加筆訂正して再掲させて頂きます。

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1 コメント

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珪藻土の入手先について (saga)
2020-01-17 18:32:36
はじめまして。NPPに挑戦しようと考えている者です。ご紹介の自動給水容器や液肥は準備できたのですが、イソライトの通販サイトが見つかりません。製造している会社から直接20kg単位で入手されているのでしょうか?楽天で1kgのお試し購入は見つけたのですが、割高ですので…。もしよろしければご教示頂ければ幸いです。
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