白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―美味しさとコクの品位を高める 香味小玉ネギ―

2019年07月25日 | シャロット

欧米には、其の低生産性が理由で20世紀の半ばには、すっかり市場から消えてしまった今日の玉ネギの元祖と言える分球玉ネギ品種がありますが、其の同類種でありながら伝統的な料理食材としての高い評価を受けて生き残り、其の幾つかの品種が今尚栽培続けられているのが、ご存知の方もおられるでしょうが、香味小玉ネギのシャロットであります。其の西洋種とは別の東洋種はアジア地域では古くから大きな需要に支えられて今も盛んに作られて居り、其の香味小玉ネギが、玉ネギの主力産地品目になって居ります。

其の日本での園芸作物としての繁殖に興味を持つようになって始めた、試行錯誤の外房菜園での東洋種シャロット栽培、当初の西洋種シャロットの試験栽培と合わせると、今年で早くも6年目を越します。

今年の東洋種シャロットの収穫量はおよそ60キロほどでしたが、収穫適期が一週間程遅れた事に加え、其の後の悪天候で乾燥熟成させての休眠処理に失敗し、発色が悪く腐敗球と一部の早期発芽球の発生で、多くを廃棄する始末となりました。

 

―今年収穫した天日乾燥中の香味紅小玉ネギの東洋種レッドシャロットー

実はその間も、香味小玉ネギのシャロットが海外で料理食材として定着している評価の実態を探るべく、西欧種や東洋種のシャロットの持つ香味効果とは何なのか、何故に琉球を始め、日本列島や朝鮮半島など極東アジアの一部には、其のシャロット栽培が伝わらず、同じアリウム族のニンニクと共存するシャロット食文化が日本には生まれなかったのか、そんな情報を求めて検索を色々とネット上からも続けて参りました。

それが今般は、日本の食品・栄養科学を専門とする研究者の著書との出会いがあって、味覚と嗜好の関する様々な知見を得る機会に恵まれて、どうやら其の辺の理解のヒントが得られたように思われます。

 其のシャロットの持つ香味効果を一言で申せば、近隣種ののニンニクの持つ 料理の「うま味」と「コク」を顕著に引き立てる香辛食材の持つ特性の一方で、含まれる含硫化合物のアリルメルカプタンの避け難い臭気を嫌ってか、ニンニクに替って料理の美味しさに 「品位」を高めて添えるほのかな香辛成分であり、其れが欧米でよく言われているシャロットの持ち味であると言う事のようです。

 

―ポットポニクスで1球から5号ポット一杯に分球したシャロットー

それでは、其のような作用がどのようにして働くのか、私見に基く想定ではありますが、其のような捉え方の得られた知見と共に美味しさと其のコクの品位についての知見を以下に述べさせて頂きます。

 日本では油脂や糖分に蛋白質のうま味成分が豊富に含まれている濃厚な味を、良く「コク」があると表現されます。ところが欧米では、その「コク」に相当する特定の言葉は無いと言い、ボデー感とか、リッチな厚みとか、言い現わすそうです。

そのコクの正体、高カロリーの油、血糖を維持する為の糖質、蛋白質となるアミノ酸のうま味から成る複合体であり、特定の食材で、全体の「コク」を捉える事は困難とされています。

「コク」は多くの種類の味わいが複合して、最早単独の味が識別できなくなった状態であり、酸味や甘味を強くし過ぎたりして、特定の味が突出すると、本来のコクは失われてしまうと言うのです。

 確かに油脂や糖、蛋白質のうまみ成分を多く含むコクの原型となる食材は多々あり、例えばアンコウの肝、カニ味噌、ウニ、明太子、バターや生クリーム、クリームチーズ、フォアグラ、イクラやキャビア、霜振り牛肉、ロースハムやベーコン、ナッツ類のアーモンドやクルミ等々多彩であります。

それらが、それぞれの国で培われた味覚や食嗜好の下で生まれる料理レシピに従って、それぞれの国や地域での利用食材によって作られる 「コク」の構成原型があり、其処から味覚と嗜好に応える美味しさの定まった品位が出来上がって、其れが各地の食文化となって伝えられて来たのでは無いでしょうか。

 

―コクとうま味の源泉食材のキャビア―Web Imagesより

唯、「コク」の持つ美味しさは、生理学的には生命維持の根源であり、「コク」の中心は、栄養素を摂取する動物としての重要な感覚であり、其処に含まれる豊富なアミノ酸、脂肪分、糖質は無条件で美味しくて、食しての快楽と満足感の得られる嗜好条件を備えている事が何よりも大切であると言われています。

しかしそれには、料理レシピに依って表現される「コク」の品位とも言われる 「コク」の表現型があり、含まれる栄養素の原型がもたらす「コク」から、料理の味覚表現で様々に洗練された原型の「コク」からそぎ落とされる「コク」の持つ品位ある美味しさがあり、それを追求する食文化が生まれる余地が、それぞれ何処にもあると言うのです。

 ユネスコの無形文化遺産に登録された日本料理の原点には、其の独特の味覚に応える 「コク」の表現型があり、それが日本料理には、その味覚に品位と節度を貴ぶ洗練された美味しさが見事に表現されていると言います。

一寸蛇足になりますが、其の点で今や日本の大衆食で人気の高いラーメンやカレーライス、一般に動物の肉や骨を長時間煮だしのうま味あり、油あり、野菜の甘味ありと、多種類の成分が誰にもはっきり分かるようにした、多種の「コク」成分が顕著に詰まっている分かり易い美味しさです。

しかし生理的欲求を充足させる、其の「コク」の原型表現の明らかな美味しさは確かに否めませんが、日本料理とその原点を異にする点で、大衆食への偏見では無く、日本食の特徴であるだしのうま味を大切にする品位と節度、其れとは何か相容れない大きな相違いがある事は確かなようであります。

 

―日本伝統食のだしの品位は香りです!ーWebImagesより

其れと言うのも動物性食品が、本来少なかった日本では、蛋白質の持つうま味の元となる、だしの味わいが欠かせなかったと言います。

昔から海産物が豊富に入手可能な地域では、魚貝類や海藻類が、だしストックとして利用されて来たのですが、日本食の中心食材は穀類と野菜類であり、それらの美味しさを演出できるのが、魚貝類や海藻類からのだしストックであり、伝統的な発酵調味料である味噌・醤油の調味効果であったのです。

 其の日本食のだし食文化、動物性食品から得られる直接的な味わいを、如何にして穀類や野菜類食材に浸透させて、それぞれの美味しさを引き出すかの知恵であり、誰もが闇付きになる食嗜好性を持つ油脂や糖類と同様に、うま味成分のだしでも亦、同じような嗜好性を生み出す働きがある事が分かって会得されたのが、日本特有のだし食文化と言うのです。

 実は、其の日本特有のだしに含まれる主な呈味成分は、グルタミン酸(こんぶなど)、イノシン酸(かつお節、煮干し)、グアニル酸(干ししいたけ、きのこ類)などであり、グルタミン酸はアミノ酸系、イノシン酸とグアニル酸は核酸系で、カツオだしのイノシン酸と昆布のグルタミン酸のうま味には数倍の相乗効果に有ると言うのですが、それだけではありません。

動物実験で明らかにされた結果では、含まれる組成分量以上に大切なのが、実はうま味成分の持つ、匂いの香り成分であり、其れが「だしにやみつき」となる、生体が執着する報酬効果であり、食嗜好と美味しさとは、表裏一体の関係に有る所以と言うのです。

其処には食文化が果たしている豊富な栄養素の象徴である「コク」があり、その呈味成分の品位で決まる美味しさの快感と嗜好性を支える食の香りが大切な要素なのです。それが食べた後の心地良い食べ物が、好きになる理由です。

 

―インドネシア民話にあるシャロットとガーリックの物語!-webimages

此処で話は一寸飛躍しますが、西洋食文化と東洋食文化で共通している香味小玉ネギの存在価値、其れは料理の美味しさの品位に貢献する呈味成分の持つ香りにあり、ニンニクの料理に果たす呈味成分の顕著な増幅作用に替わって、よりまろやかな香味効果を以って果たす、シャロットの呈味成分の品位向上効果が、其の持つ大切な役割ではないかと思います。

其の香味玉ネギのシャロット効果、言うなれば誰もが強く感じてしまう強烈な美味しさは、判り易い旨さではありますが、裏返せば直截すぎて、味覚の品位が欠けて仕舞います。

美味しさの品位は、味わう側の味覚にある修練を必要とする、旨味と香味の組み合わせが評価できる、それなりの力量があって其の真価が味わえる独自の味覚があると言えそうです。

其の理解のヒントは、どうやら日本食文化の「だしストック」の香味演出の中にある、香味吸い口に有るように思われてなりません。如何でしょうか!

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1 コメント

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Unknown (雑草うさぎ)
2023-07-06 11:22:25
初めまして!
シャロットの記事拝見させて頂きました。
大変勉強になり、コメント致しました。
最近ブログをアップロードされていらっしゃらないようですが、まだシャロットの栽培は続けられているのでしょうか?
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