白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―窒素の上手な使い方―

2012年04月24日 | 肥料

先のブログで、過剰な窒素肥料の投与による弊害についての話を紹介しましたが、「有機栽培」では、化学窒素肥料の使用を完全に排除しています。従って、空気中の窒素を固定する微生物を利用する緑肥植物や堆肥や有機肥料から無機化される窒素成分だけが、「有機栽培」では、許されると言う事になります。

 

―窒素固定する緑肥植物のれんげ草――筑波農場ブログより

植物に必要な無機元素には、窒素以外に多量に必要とするリン、カリ、マグネシュム カルシュウム、硫黄と微量要素と呼ばれる鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、銅、塩素、モリブデン、ニッケルがありますが、有機農法では、窒素以外のそれらの無機元素は、基本的には肥料として土壌へ添加する事が認められています。一寸不思議には思いませんか?

 

―植物に必要な14種類の必須無機要素―

さて、作物にとって大切なのは、それらの無機栄養素が適切な濃度と構成比で施肥される事であり、其の肥効の鍵を握るのが土壌の持つ保肥力であり、適切な土壌水分と間隙を維持する土壌の団粒構造と良く言われます。

一般の農地土壌では、含まれる腐植による保肥力の向上と土粒子の団粒化の促進の為に、毎年一定量の堆肥の施用が欠かせません。又堆肥からは肥料成分となる諸要素も合わせて添加されますが、堆肥は必ずしも多く施せば良いと言う事では無く、微量要素では、一定量を超えれば作物に取って有害ともなり、良質な堆肥の適正量の施用が大切です。

 

―土壌の理想的な三相分布―

先のブログでも触れましたが、適切な窒素成分の補完が不可欠な完熟堆肥の話のように、リンやカリ、亜鉛等、一部の肥料要素が高度に濃縮されれば、窒素成分とのバランスを欠き、不適切な堆肥施用と言う事にも成ります。

 

―典型的な窒素欠乏した葉の写真―

家庭菜園等では、多くの方が有機栽培志向もあって、堆肥や有機肥料を施したりしていますが、適正施肥量を、如何判断されるのでしょうか。          それに、無農薬栽培ですと、成長不良や窒素過多等が重なれば、病虫害に見舞われる事も多く、栽培品種にも依りますが、一般に市販の野菜並みの成果を期待するのは難しく、良質な収穫物は中々作れないのが実情です。                                                   その多くの場合が、窒素肥料の使い方に原因があるのですが、それを痩せ我慢してか、結果には拘らずと自己満足されている方も多いのでは無いでしょうか。

実は、其の厩堆肥の施用に必要とする窒素成分の補充に就いての話が、コロラド州立大学の公開講座の中に紹介されていました。

 

―コロラド州立大学―公開講座―

その結論から申し上げると、一般に言う炭素率、C/N比が基準であり、厩堆肥の施用に依って、窒素成分が無機化されて肥料効果を発揮できるかどうかは、その炭素と窒素の質量比にあり、其の境界が20対1であると言う事です。そこで重要になるのは、一般に厩堆肥に表示されている炭素率であり、それに基く窒素の補充です。

理論的には、炭素率が20を超える厩堆肥には、炭素率が20になるように窒素肥料を添加する必要があり、例えば、日本で公表されているウッドチップを堆肥化したバーク堆肥の施用で言えば、炭素率は35以下とあり、それに倣って添加の必要な窒素量を計算してみます。

     全国バーク堆肥工業会

 

―バーク堆肥工業会のHP写真―

バーク堆肥の乾物重量が70%とあるので、C/Nを20にするには、1袋30㎏のバーク堆肥に添加の必要な窒素量の計算は、30x0.7x1/35=0.6kg が含まれている窒素量であり、添加の必要な窒素量は、30x0.7x1/20=1.05-0.6­=0.45kg となります。 

 

    ―バーク堆肥―

これを、窒素含有量が46%の尿素で必要な窒素量を補充するには、0.46x1/0.45=1.02kgとなり、1袋30kgのバークを施用するに当たって、約1㎏以上の尿素を添加しないと、窒素飢餓が発生して生育が阻害される事になる計算です。

 もし、有機栽培だからと、必要な窒素量を菜種油粕で補充しようとすれば、一般に、菜種油粕に含まれる窒素量は、約5.2%と言われ、其の無機化率は概ね60%程度とされていますので、0.45kgの窒素の添加必要量を単純に計算すると、1/0.052x1/0.6x0.45=14.4㎏にも成ります。

 

―有機肥料の定番の菜種油粕―

前記のバーク堆肥、30㎏の施用で、菜種油粕で必要な窒素量を補充するとすれば、なんと14kgも必要となる計算です。

 農耕土壌が涵養するバイオマスの保全に、必要なエネルギー源となる炭素量を維持していくには、それに見合った窒素量の添加が必要であり、地力と言われる土壌微生物による有機窒素の保全には、それだけ余分な窒素の補充が、常に欠かせないと言う事です。

 

   ―良い土とは生きている土―

しかし、補足する窒素量のコストから、可能な限り経済的な窒素源を選択すべきであり、其の他にも考慮すべき重要な点は、厩堆肥は熟成度が大切であり、又有害な発生物質の添加の怖れがあると言います。

 具体的には、ウッドチップの堆肥化では、家畜糞や枝葉残滓物等の堆肥化に比べて長時間を要し、材料に依っては有害物質が堆肥化の過程で発生混入する。

下水処理汚泥等の微生物残滓では、有毒な重金属が濃縮されている怖れがあり、土壌添加には特に注意が必要である。

家畜糞尿堆肥では、土壌塩分濃度の上昇の怖れと雑草種子の添加等を招く場合があり、注意が必要と結んでいます。

 

―堆肥の無縁な新プランター栽培で収穫した夏野菜―

それに加えて、今の日本では、堆肥の施用は、「高濃度セシウム放射能汚染堆肥を土壌添加する怖れあり、注意!」と成りますが、窒素は作物栽培で中心となる尤も重要な肥料要素であり、C/N比20を目安に、適正な肥効を如何にコントロールするかで、穀物収量から野菜類での良し悪し、味や香りも決まります。

特に過剰な窒素肥料に弱いトマト栽培では、栽培土壌の窒素量と水分量の適否で、味に風味に収量迄が違ってきます。

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