白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―エアルームトマト人気の秘密―

2014年05月01日 | トマト

「エアルームトマト」 日本でもどんなトマトか一般の方に知られるようになり、その姿形が大小の様々であり、その色が亦、赤、ピンク、黄色、オレンジ、白、緑、褐色、バイカラー等、大変豊富で多彩である事が興味の対象になっているようです。

しかし、肝心な「エアルームトマト」の食味、日本とのトマト食文化の違いもあり、その持つ香り、酸味や甘味のバランス等、トマト特有の旨味を評価して選択できる段階には、未だとても至って居ないようです。

 

―Tomatofestのエアルームトマトのサイトマークー  

日本ではそんな多彩な 「エアルームトマト」の数ある品種の特徴を知り自ら育てて食べ比べして見たと言う方は、未だ殆ど居ないでしょうから当然の事かも知れません。

それ以上に、トマトにはデターミネイト種の加工用のブッシュトマトや趣味栽培に向くドワーフ(矮性)種等があり、大部分を占める一般種のトマト、インデターミネイト種との基本的な違いさえ良く理解されて居ない様ですから、まだまだ本格的な食味評価が出来る段階以前にあると言う事でしょう。

 

―エアルームトマトイメージーより

さて、そんな「エアルームトマト」が日本で見かけるようになった発端は、欧米、とりわけアメリカでの 「エアルームトマト」の高い人気に眼を付けて、その品種の違いや特徴等、良く調べもせずに新しいビズネスチャンスになるとばかりに種を日本に持ち込んで、種子販売を始めた事に有ったように見受けます。

 

―エアルームトマトイメージーより

「所変われば品変わる」の喩え通り、欧米とのトマト食文化が違う日本、その栽培の歴史も浅い日本のトマト園芸、その種を輸入するならば先ず、其の違いを知る事が肝心であり、作って見なければ中々判らず、評価するにはそれなりの時間が必要な筈です。

珍しさや珍奇さを求めて跳び付く園芸好事家が相手の商売と言うなら、それもよろしいかも知れませんが、園芸農家に種を持ち込んで 多様な「エアルームトマト」の一部を作らせて、珍しい変わったトマトとして販売させるような試み、中には 「世界のトマトの宝石箱」と称して、色とりどりのトマトを詰め合わせた高価な産直宅配もあり、目新しさだけを売り物にして、何も判らなくても買う人さえ居れば商売になるとする、真似もの文化さながらの 「エアルームトマト」の捉え方、一寸情けない想いがして呆れて仕舞います。

 

ー旬の食の宅急便サイトーより

欧米の長いトマト栽培の歴史の中で、各地で代々伝えられて残って来た「エアルームトマト」 其の各々の来歴や特徴を知る事が一番大切であり、トマトを買って頂けるお客様には、その食味の違いや特徴を伝えて理解を得て売るのが本来の姿です。順を追っての正しい評価失くしては直ぐに飽きれられて仕舞い、受け入れや定着等、覚束ない結果に終わって居るようです。

海外での「エアルームトマト」栽培が、人気を集めている事が一般に分かって来たのは大変結構な事ですが、其の動機の多くは店頭に並ぶ市販トマトに満足できず、味に優れる昔のトマトを一般家庭でのキッチンガーデンで、自ら育てて食する事に在ったのであり、何事もその理解には、その経緯、背景となる歴史を知る事が必要です。アメリカでの「エアルームトマト」の人気、何処に其の出発点があったのか興味が沸いて、その情報をネット上で追って見ました。

其処で得られた情報ですが、皆さんの「エアルームトマト」のご理解にいくばくかお役に立てば思い、ほんの一部で申し訳ありませんが一寸披露させて頂きます。

 

―エアルームトマトイメージーより

其の前に、自身の事でまたまた大変恐縮ですが、生来の園芸好きは思えば父親譲りで有り、先のブログでも申しましたが、亡父が昭和29年に開校した分校の名前に因んで記念樹にする梅の苗木の購入に、産地で有った埼玉県の安行までの買い出しに同行したのが始まりであり、花梅にこって数十種の梅を集めて鉢仕立てしたり、庭に植え込んだりして、今残っているのが16種17本の庭の梅の木です。

一方、トマト栽培にのめり込む動機となったのは、1985年の筑波科学万博で見た、13,000個のトマトが成ったと言う水気耕栽培トマト、これをプランター仕立てで何とか実現したいとの想いから、定年後の趣味の課題として始めたのが新プランタートマト栽培法の考案です。

 

―「科学万博一つくば85」でのトマトー

そして亦 「エアルームトマト」に興味を持った動機と言えば、新プランター栽培での日本の個性に乏しいF1種トマトの栽培に物足らず、種子の自家採種が出来る日本の固定種トマト 「ポンデローサ」と「世界一」の新プランター栽培を始めた事がきっかけで、既に一部の輸入エアルームトマト種子が日本でも売り出され、種子の入手が容易に出来る事を知って、品種選びの為にその情報をネット上で追って調べ出したのが始まりです。

 

-新プランター栽培のトマト、世界一です!-

扨て、其の「エアルールーム」と言う言葉、家宝種と訳されて居りますが、この用語を最初に使ったのは、ニューハンプシャー大学のWilliam Hepler教授であり、その承諾を得てこの用語を最初に用いたのは、全米の種子保存交換団体、SSEの創立者の1人である、Kent Whealy氏であり、1981年での発表会の事であったと書かれています。

 

―TomatoFest Logomark-

それでは、全米屈指のエアルームトマトの種子のコレクターであり、600種以上のエアルームトマト種子を生産販売している園芸家、Gary Ibsens氏が、その“TomatoFest”のサイトの中で語る 「エアルールームトマト」の大切さについての話、その内容を抄訳で先ず紹介させて頂きます。 

 ―過去40年間に、私たちは、多くの家族経営の農場と共にそれを支えて来た沢山のエアルーム種を失って来ました。それは何百年も生き残って来た多くのエアルーム種の遺伝子が失われ、商業目的で魅力的な特性を持たせる為に育種された、数の限られるハイブリットトマト種子に取って替わってしまったと言う事であります。

 ―其の過程では、家族経営農家が育ててきた多くの典型的な食用作物の所有権とその農場も亦、私たちは失ったと言う事であり、そして、今尚、我々を支えて来た貴重なその遺伝子の多様性が、危険を知らせる加速度的な速さで失われつつあると言う事です。

 ―エアルーム品種は遺伝的にはユニークであり、その持つ先天的な特異性は、病虫害の抵抗性や、特定の栽培条件、気象への適応性への進化であり、そうした遺伝子の多様性の減少は亦、本来の病虫害の抵抗性を失って、将来の食糧生産を極端な危険に曝す事になり、それが今、遺伝子浸蝕と呼ばれる所以です。

―植物採種家で著名で有った故Jack Harlan博士は、イリノイ大学の植物遺伝学の教授であった当時に書いた著書 「人間と古典作物」の中で 「これらの作物資源は、我々人間の間で、想像を絶するような壊滅的な飢餓を齎す位置にあり、大変現実的な意味で、人類の将来はそれらの食材に頼っているが、今やその豊富さと枯渇の幅はどんどん狭まっている。公衆はそれに気付かず、無関心で居る。我々はそれを事前に聞いて現実となる災害を待つべきか? 聞くだけでは既に遅すぎる。」と書いています。

―これは、我々園芸栽培家次第であり、責任ある大地の番人である我々が、エアルーム品種を通じて、その遺伝子の多様性を確実に支え守って行く事に掛かっています。

 

Mr.Gary Ibsens, TmatoFest-

以上ですが、それが何を意味するかと申せば、エアルーム種は世界中の国から集まったアメリカの農業者が作り上げた自然交配の貴重な種子であり、人類にとっては大切な作物遺伝子の宝庫であると言う事です。

商業目的本位のF1種子に安易に切り替えて、貴重なエアルーム種を駆逐して仕舞う事は遺伝子の多様性を失う事であり、だからこそF1種子が「遺伝子浸蝕」と問題にされているのであり、アメリカの遺伝子組み換え作物に対する反動でもあるのです。

 

―Buy Seeds, 遺伝子を保全する!-

世界中から集まった多民族の新世界のアメリカ、其の祖先が持ち込んだエアルーム種子も亦、多彩な事は当然です。日本のような小さな島国で、昔から作られて来たと言う地域名で呼ばれる伝統野菜と同じような感覚で捉えるなら違います。其の来歴は基より、種類の規模も違えば食文化の違いもあり、其の価値観、評価の観点、全くと言って良い程違うと申せます。

 それでは、今アメリカで人気が上昇中のエアルームトマト、其の定義につて一寸お話致します。エアルームトマト、F1と呼ばれる交雑種とは異なり、自然交配(オープンポリネーション)種であり、通常の栽培条件の下では、採取した種子は親と全く同じ性質を持ち、其の遺伝形質が安定しています。

其の分類のカテゴリー、作出年代で100年以上、或いは50年以上、又は1945年の世界第二次大戦後の大量のF1種の出現を境とするなど諸説があって意見が分れています。

 

We're gonna' need a bigger basket....

又、ファミリーエアルーム、コマーシャルエアルーム、ミステリーエアルーム、クリエイテッドエアルームの4つにも分類されると言います。

其のそれぞれの来歴、その歴史に関心があって育てるとか、その品種の幅広い系統を追って育てるとか、其の種子を毎年採種続ける為に育てるとか、最近のトマトに無い風味や旨味を求めて育てるとか、其の関心は人によって其々違い、エアルームトマトで一番大切なのは、目的に合わせての品種の選び方であり、地域毎に異なる其の品種の栽培経験情報が、見てみるとトマトネットフォーラムでの最大の関心事になっています。

其の背景には、何と言ってもアメリカ人の世界で群を抜く、トマト好きの国民性があるようです。さもなければ、こんな膨大な数のトマト品種の発掘等、起こり得ません。

 

Life is Just a Bowl of Cherries

輸入エアルームトマト、色や形が違うから育てて見たいと興味を持つのは当然ですが、先にも申し上げた様に、日本にも 「ポンデローサ」や「世界一」等、立派なエアルームトマトが有りますし、種を取って毎年育てる事も出来ますし、固定種のミニトマトなら、何種もあるのです。

其の関心が持てないのは、日本のトマトの園芸情報の少なさ、魅力を感じさせる感性に訴えるような秘めたロマンに欠ける事、その豊かな個性の主張が日本のトマトには無い事にあるようです。上掲のトマト写真の下の英文の意味、噛みしめて下さい。それがエアルームトマト人気の秘密です。

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