MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

文明崩壊

2006-11-15 | 雑記
しばらく間があいてしまいました。
掲題の本を読みました。
(ジャレド・ダイアモンド、草思社)

古代からの文明の興亡を、環境と開発の観点から考察して、現代世界の行く末まで幅広い視点で論じている、非常に面白い本です。
具体的には、イースター島や太平洋の諸島、グリーンランドのバイキング入植地の滅亡などを題材に、環境資源の枯渇、他集団との交易への依存・その断絶による資源流通の停止、敵対集団の存在など様々な滅亡の要因を分析しています。
訳本の割に文章が平易で分かりやすく、読んでいて飽きないところが長所です。

特に印象的だったのが、イースター島をはじめとする太平洋諸島の社会の興亡。
「南の島」と言うと平和で豊かに暮らす楽園、と想起してしまいますが、実際にはこの2000年の間に、無人で資源が豊かだったそれらの島々にポリネシアから次々に移民が行われ、やがて彼等が環境を破壊し資源を枯渇させ、ついには共食いまでして滅びていった、とのこと。
もちろん人が生き延びた島も多くありますが、基本的にその環境や植生は人々が入植する前の本当の手付かずの自然とは似ても似つかないものになっている場合が多々ある、というのは新鮮な衝撃でした。

文中にもありますが、こうした滅亡していく社会の「最後の独り」になる、というのはどんな感じなんでしょうね。
一人静かに、他の全員が死に絶えた海岸の村跡で、静寂と共にただ飢えをしのぎ、やがて年老いて死んでいく。
未来を描いたSF小説でありがちなシチュエーションのようですが、過去の歴史の中でそういう状況は絶えず起こっていたということのようですね。

現代文明、あるいは西洋文明の登場を待つまでも無く、数千年の歴史の中で絶えず人間が生きるための環境破壊は行われてきた、というのは、ともすると

-環境破壊は現代的なライフスタイルが元凶だ
-だから、皆が昔のようなスタイルで生活すれば問題は解決するんだ

といった、浅い理解をくつがえします。
(もちろん、現代的なライフスタイルが破壊の程度を大きくしているのは事実ですが)
人間が生活圏を構築することはほぼイコール何らかの形で環境に影響を与えることで、そのために集団が死滅することはこれまでにままあったこと、
かつそれは動物でも同じこと
(例えば閉鎖された島で異常繁殖した動物は、餌資源の増加速度が自らの増加速度を超えない限り、全て食い尽くしていずれ死滅する)
ということは、環境破壊がある意味で生物の宿命であるとさえ言えそうです。

この1500年位の歴史をとっただけでも、結構世界中でいろんな社会の滅亡があるものなんですね。


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