MBAで教える「交渉術」

MBA留学先での「交渉」の授業内容を配信。といっても最近はもっぱら刺激を受けた本やMBAについて。

<11-1>キーワード(3):Options

2005-05-02 | 第二部:交渉ってどう考えたらいいの?
前回はキーワードとしてBATNA(交渉の外にある代替案)を説明しました。
今回は交渉をまとめる際に非常に重要な役割を果たす、Options(合意案)について考えてみたいと思います。

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交渉をまとめようとすると、ある程度のところで最終的な合意案を相談する必要があります。
「落とし所」が明確になっていないと、まとまるものもまとめられないわけです。
合意案はふつう複数が提案され、そのどれで合意するかが話し合われるので、英語ではOptionsと複数形で表現されるわけです。

このOptionsは交渉内容に応じて様々な形をとります。
例えば価格交渉であれば「一個XX円」、企業の合併交渉であれば「合併する」といった合意案が一番シンプルな形と言えるでしょう。
ただし、現実には合意案はもう少し複雑な条件つきの内容になることが多いようです。
価格の例で言えば、「一個XX円、ただし今後二年間毎月最低Y個購入すること」といったものです。

Optionsを分析的に考えるためには、いくつかのサブキーワードが役に立ちます。
具体的に考えるため、次の例を見てみましょう。


<例3>

Eさんは友人のFさんから使い古しのノートパソコンを安く譲ってもらおうと話を持掛けました。
同型の中古品を店で買うと12万円なので、それに近い値段としてEさんは一式セット10万円で買おうと提案します。
ところがFさんは11万円でないと売らないと言います。
というのも、別の友人が10万円で売ってほしいと先に言ってきており、同じ値段ではそちらに売らざるを得ないからだと言うのです。


ここでEさんのBATNAは何でしょうか。
Fさんとの売買交渉が成立しなければ、おそらく「店で12万円払ってパソコンを買う」ことでしょう。
一方FさんのBATNAは、「別の友人に10万円でパソコンを売る」だと思われます。
単純な価格交渉の場合、このBATNAの価格を「Walk-away」または「Resistance point」と言います。
それ以上買い手にとって高くなるなら「交渉を止めて歩き去っていく」あるいは「何が何でも抵抗する」価格ということです。
売り手にとっても同様に、それ以上安くなるなら「歩み去」ったり「抵抗」する価格、になります。
このケースで言うと、買い手(Eさん)のWalk-awayは12万円(を超える値段)、売り手(Fさん)のWalk-awayは10万円(を下回る値段)です。
このWalk-away(Resistance point)の範囲外の価格で妥協するくらいなら、BATNAを選んだ方が特になるからです。

見方を変えると、互いのWalk-awayの間にある範囲なら、合意できる余地が必ずあると言えます。
このケースで言えば10~12万円の範囲なら、お互い歩み去るよりその値段で売買した方が得になるからです。
この二つのWalk-awayの間の範囲(合意可能な範囲)を、ZOPA (Zone of Possible Agreement)と呼びます。
交渉とは、ZOPAの範囲内でいかに自分に有利なOptions(単純な価格交渉の場合、価格)で話をまとめるか、が勝負になるのです。

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