吹奏楽部はアイドル

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　定期演奏会が終り感動と興奮に包まれながら幕が下りた客席で吹奏楽部への想いをアンケートに書きつづる。そしておもむろに腰を上げホール出口に向かうとドア係の女子生徒がさわやかな笑顔で
「ありがとうございました」
と声を掛けてくれる。アンケート用紙を手にひらひらさせながら受付に近付くと
「きゃーっ」
という女子生徒の歓声が聞こえる。学校によっては出口のところで部員が両側にずらりと並んで観客を見送っていたり、ホワイエでお友達と部員が歓談しているのだ。大熱演で前髪や吹奏楽部のＴシャツは汗で体に張り付きその余韻をとどめ、そこだけ気温が２度高い。女子中高生が知人から花束をもらってぴょんぴょん飛び跳ね大喜びでお友達とコンパクトデジカメで写真を撮っている姿はとてもかわいい。中には感きわまってぼろぼろと涙を流し抱きあってわんわん泣いている女子もいる。

　30m離れたステージ上にいる吹奏楽部員たちはアイドルのように輝いている。そんな部員たちを間近に見ることのできるこの瞬間が好きだ。終演後ホワイエに出て歓談する部員たちを見ているとステージ上で真剣な顔をして演奏していたのとは別人のようにきゃぴきゃぴしている。やはり部員たちもアイドルではなく普通の中学生・高校生なんだなと思う。このギャップがたまらない。

　出演者とこの様に間近に接することができるのが吹奏楽部定期演奏会の魅力だ。AKB48のようにメジャーなアイドル歌手のコンサートでアイドル本人が終演後ファンの前に姿を現すことなんてありえない。きっとアイドル歌手というものは隔離されて遠くに拝むものなのだろう。
　しかし私のアイドルである吹奏楽部の場合、ステージで演奏する姿を客席から双眼鏡で見ていたあこがれの部員が終演後のホール出口に現れて手を延ばせばつかめる距離にいる！　これはファンにとってうれしいかぎりだ。いきなり知らない人から握手を求められたら純情な女子高生は引いてしまうだろうからやらないけれど、部員一人ひとりと握手して感想を述べたいとすら思う。そんなもどかしい想いを仲介してくれるのがアンケートである。

　感想を書く欄を裏面まで真っ黒に埋め尽くすくらいいろいろと書きたいのにいざ書こうとすると短い時間にまとめなくてはいけないから終演時の興奮もあいまってなかなか筆がはかどらず感じたことを存分に書くことができない。家に帰って鑑賞レポートを書きながら
「あぁ、あのこともアンケートに書いておけばよかった」
と思い出して悔やむこともあるけれど、アンケートは筆者から吹奏楽部へのラブレターである。

【注】写真は本文の内容と無関係。



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