ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

パリを歩けば(7)~途中下車ぶらり旅、パリで見つけたアフリカとの出会い

2015-06-03 07:30:15 | アフリカ紀行
シリーズ「パリを歩けば」第二幕。本日完結編です。

(前号までのあらすじ)
パリを訪問したンボテ、さっそくタクシーでカメルーン人ドライバーとの小さな出会いを経験する(第一話)。そしてパリのアフリカを求め、久々にChâteau Rougeを訪問。しばしのプチ・アフリカを楽しんだ(第二話)。帰り道で通りかかったモンマルトルの丘では、ギニア人のリフティングパフォーマーとの出会いが。(第三話)パリで見つけた小さな出会いは続く。



パリでの短い滞在を忙しく終えたンボテ。今回は大荷物、空港に向かう帰りも、泣く泣くお財布には痛いタクシーを利用した。再びアフリカとの再会を期待して、、、

まだ明るさの残る午後8時に常宿に戻ると、予約したタクシーがすでに横付けされていた。古ぼけた小さなホテルのレセプションで重たい荷物を受け取り、タクシーに積み込もうとすると、そこにはブーブー(アフリカの民族衣装)風の赤いドレスを身にまとい、丸メガネをかけた気品ある黒人のおばさまが笑顔でンボテを迎えてくれた。



マダム「ボンソワール、ムッシュ。どちらまでのご利用で?」

ンボテ「ロワシー・シャルル・ド・ゴール、2Eまでお願いします。」

マダム「かしこまり。」

あまり耳にしないフランス語の訛りだ。かといってフランスの風でもない。マダカスカル?タヒチ?

マダム「んー、シートをスライドさせるためのノブ、どこだったかしら、、、。ここじゃないし、、、」

メガネを釣り上げながら車内を見回す運転手。まだ運転には慣れていない風だ。というより、どう見ても運転手の風ではない。大丈夫?おばさま?

マダム「あー、シートノブ、あったわ。ここだったのね。それでは出発するざ~ます。」

まさに、ざーます調の話し方だ笑。どう見ても生粋の運転手ではない。

ンボテ「きょうはマダムのタクシーに乗れて光栄です。もう長くパリにいるの?」

マダム「もう25年になるわ。子供たちもここで育てたの。」

ンボテ「そうなんですか~。その前はお国にいらしたの?失礼だけどマダム、アフリカのご出身ではないですよね?」

マダム「あら、よくわかったわね。そうね、アフリカとも言えるかもしれないけど。私はハイチ出身なの。」

ハイチ。中米・カリブ海に浮かぶ島国。ンボテはカリブのアフリカと呼んでいる。そして、こちらの記事で述べたとおり、その昔、ハイチに連れて行かれた奴隷の多くは西アフリカのベナンからなのである。

ンボテ「どうりであまり耳にしないなまりだと。ぼくはアフリカを生業としているけれども、ハイチはいつも仲間だと思ってます。」

マダム「それはうれしいわ。私たちの国はどうしてこうなってしまったのかしら。」

ンボテ「自分は日本から来たんだけど、ハイチの地震のことはいつも頭から離れなかった。知人にも、何人もハイチに向かった人がいる。」

マダム「うれしいわ。私たちの国を救って。今のハイチに必要なのはお金じゃないの。」

クルマは古い町並みをヨロヨロと進む。

「お金がいくらあったって、今のハイチはきっとよくはならないわ。でも、気持ちが救ってくれるのよ。私たちは見捨てられていないって。」


ンボテ「マダムは運転手のお仕事、もう長いんですか?」

マダム「ついこのあいだまで、運転手なんかじゃなかったわ。」

ンボテ「お差し支えなければ、何をされてたのか、伺ってもいいですか?」

マダム「学校。ついこのあいだまで、学校で働いていたのよ。」

ンボテ「ええ~?そうなんですか~。マダム、どう見てもそう見えます。」

マダム「わたしにも5人の子供がいるの。いろいろあるけどまったなし、仕事は選べないわ。パリの道はすぐ覚えたけど、運転も車も、得意ではないわ。」


クルマはいつしかハイウェーを快走していた。慣れない目つきでサイドミラーに目をやりながら、マダムは続けた。

「パリで生きるのは大変なの。表の世界にいつまでもいられればいいけど、いつはじき出されるか、隣り合わせなの。」

ンボテ「ポルトープランスには帰っているの?」

マダム「ええ、毎年帰るわ。家族や親戚や、みんなと過ごすの。自分を取り戻す時間だわ。でもね、今はなかなか帰れないわ。そうね、金銭的なこともあるけど、体裁の問題もあるの。みんな、わたしの分け前を待ってるのよ。」

その後、沈黙の時が車内を包み、タクシーはシャルル・ド・ゴール空港に到着した。

ンボテ「マダム、いいお話を伺いました。またタクシーの中で出会えることを期待しています。」

マダム「次は学校でお会いしたいわ。」

ンボテ「そうでしたね。またお会いしましょう、マダム!」


短いながらもたくさんのアフリカとの出会いがあったフランスの二日間。機内に映るパリの夜景は、どこか甘く、でもどこかほろ苦かった。

(おわり)

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2 コメント

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Unknown (らすた)
2015-06-03 23:00:15
モノクロ映画のワンシーンのようなシリーズでした。
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Re: (ンボテ)
2015-06-04 07:47:21
ラスタさん、コメントありがとうございます!まさにンボテの心の中ではモノトーンの思い出として焼きついています。パリではいつもそんなアフリカとの出会いが待っています。
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