ひさびさの連続朝ドラ「パリを歩けば」シリーズ。今回は新編をお届けします。
アフリカからの帰路、フランスでの会議に出席するため、パリに降り立った。到着したのは日曜の朝。北緯50度の遅い朝は春とはいえまだ冷たい空気に包まれていた。
今日は荷物が多い。もったいないけど、タクシーを使おう。別の楽しみもあるし、、、
別の楽しみ??
そう。小さな出会い。
シャルル・ド・ゴール空港は朝の到着ラッシュを迎えていた。タクシーレーンに向かうとそこにはすでに長い列出来ていた。そしてンボテの番が来ると、、、思ったとおり。アフリカ出身と思われるドライバーがそこにいた。そう、小さな出会い。
スーツケースを入れようとリアゲートトを除く。そこに見えるサックシノワと異様な臭い。間違いない。彼はアフリカ人だ。そしてこの雰囲気からすれば中部アフリカの出身に違いない。
車に乗り込み、行き先を告げると、タクシーは無造作に走り始めた。
ンボテ「運転手さん、個人的な質問で恐縮だか、お国どちらで?」
運転手「俺のことか?なんか興味あるのか?」
あれ?まずいこと聞いちゃったかな?
ンボテ「スミマセン~、実は自分、アフリカ好きで。いまもアフリカからついたところなんです。」
運転手の表情が一転、明るくなった。「そうか、アフリカからか。それを早くいってくれ。おれはカメルーン出身なんだ。」
ンボテ「そうなんですか。私も何度か訪れました。とても個性豊かでキレイなところですよね。」
運転手「そりゃあそうだ。海もあるし、山もある。森も、水も、石油も、ガスも、全部だ。食べ物もうまい。」
ンボテ「バトン・マニョック!」
(白いものがバトン・マニョック)
運転手「なんだ、アジア人がそんなことも知ってるのか。驚いた。ああ、そうだ、マニョック。あれはうまい。・・・しかしそのふるさとも、残念ながら今ではダメな国だ。」
ンボテ「ダメって、どういうこと?」
運転手「国は豊かな自然があり、人々は能力がある。でも政府はそれを生かそうとしていない。国民のために使おうとは思っちゃいないよ。仕事もなければ、おかしなことばかりだ。」
ンボテ「運転手さんはこちらに来てもう長いの?」
運転手「20年になる。でも親も兄弟もカメルーンに置いたままだ。」
ンボテ「カメルーンのどちらのご出身?
」
運転手「西の地域。自分はバミレケなんだ。」
(※部族の名前、結束力や影響力が強く、不遇の歴史をもってきた。)
ンボテ「そうなんですね。歴史の中で耳にしています。ふるさとも、家族も、カメルーンの味も、愛おしいことでしょう。」
運転手「そうだな、いまでは残された親戚ともなかなか会うことができない。あ、でもカメルーンの味は大丈夫だ。それこそバトン・マニョックだってパリで手に入る。」
ンボテ「バトン・マニョックも??パリで一番のバトン・マニョックはどこで手に入りますか?」
運転手「もちろんChâteau Rouge(※シャトー・ルージュ)だ。」
ンボテ「Château Rouge! 」
話が盛り上がったところでタクシーは目的地に到着した。
ンボテ「Merci, Mon père. Bonne journée!(お父さん、ありがとう。よい1日を!)」
運転手「Mon fils, pareillement.(ムスコよ、あなたもいい1日を。)」
Château Rouge。そういえばしばらく足を運んでいない。今日は日曜の朝。書類仕事の合間に、プティ・アフリカとの出会いに、シャトー・ルージュに行ってみるか。次の小さな出会いに、心ときめくンボテであった。
(つづく)
アフリカからの帰路、フランスでの会議に出席するため、パリに降り立った。到着したのは日曜の朝。北緯50度の遅い朝は春とはいえまだ冷たい空気に包まれていた。
今日は荷物が多い。もったいないけど、タクシーを使おう。別の楽しみもあるし、、、
別の楽しみ??
そう。小さな出会い。
シャルル・ド・ゴール空港は朝の到着ラッシュを迎えていた。タクシーレーンに向かうとそこにはすでに長い列出来ていた。そしてンボテの番が来ると、、、思ったとおり。アフリカ出身と思われるドライバーがそこにいた。そう、小さな出会い。
スーツケースを入れようとリアゲートトを除く。そこに見えるサックシノワと異様な臭い。間違いない。彼はアフリカ人だ。そしてこの雰囲気からすれば中部アフリカの出身に違いない。
車に乗り込み、行き先を告げると、タクシーは無造作に走り始めた。
ンボテ「運転手さん、個人的な質問で恐縮だか、お国どちらで?」
運転手「俺のことか?なんか興味あるのか?」
あれ?まずいこと聞いちゃったかな?
ンボテ「スミマセン~、実は自分、アフリカ好きで。いまもアフリカからついたところなんです。」
運転手の表情が一転、明るくなった。「そうか、アフリカからか。それを早くいってくれ。おれはカメルーン出身なんだ。」
ンボテ「そうなんですか。私も何度か訪れました。とても個性豊かでキレイなところですよね。」
運転手「そりゃあそうだ。海もあるし、山もある。森も、水も、石油も、ガスも、全部だ。食べ物もうまい。」
ンボテ「バトン・マニョック!」
(白いものがバトン・マニョック)
運転手「なんだ、アジア人がそんなことも知ってるのか。驚いた。ああ、そうだ、マニョック。あれはうまい。・・・しかしそのふるさとも、残念ながら今ではダメな国だ。」
ンボテ「ダメって、どういうこと?」
運転手「国は豊かな自然があり、人々は能力がある。でも政府はそれを生かそうとしていない。国民のために使おうとは思っちゃいないよ。仕事もなければ、おかしなことばかりだ。」
ンボテ「運転手さんはこちらに来てもう長いの?」
運転手「20年になる。でも親も兄弟もカメルーンに置いたままだ。」
ンボテ「カメルーンのどちらのご出身?
」
運転手「西の地域。自分はバミレケなんだ。」
(※部族の名前、結束力や影響力が強く、不遇の歴史をもってきた。)
ンボテ「そうなんですね。歴史の中で耳にしています。ふるさとも、家族も、カメルーンの味も、愛おしいことでしょう。」
運転手「そうだな、いまでは残された親戚ともなかなか会うことができない。あ、でもカメルーンの味は大丈夫だ。それこそバトン・マニョックだってパリで手に入る。」
ンボテ「バトン・マニョックも??パリで一番のバトン・マニョックはどこで手に入りますか?」
運転手「もちろんChâteau Rouge(※シャトー・ルージュ)だ。」
ンボテ「Château Rouge! 」
話が盛り上がったところでタクシーは目的地に到着した。
ンボテ「Merci, Mon père. Bonne journée!(お父さん、ありがとう。よい1日を!)」
運転手「Mon fils, pareillement.(ムスコよ、あなたもいい1日を。)」
Château Rouge。そういえばしばらく足を運んでいない。今日は日曜の朝。書類仕事の合間に、プティ・アフリカとの出会いに、シャトー・ルージュに行ってみるか。次の小さな出会いに、心ときめくンボテであった。
(つづく)