9日土曜日、たんまり残った残務処理のため、朝からオフィスに出勤。いつものようにフランス国際ラジオ放送（RFI）をつけっぱなしにしながらお仕事をしていると、繰り返される、年代モノのマイク演説。この手のものにンボテは敏感だ。
（ウフェ・ボワニ大統領、RFIウェブサイトより。）
いわく。
レストラン「エトワール・ドゥ・スッドゥ」。1946年に党が発足したゆかりの地、小さなレストラン。取り囲むように約12,000人が見守る中、ファンファーレが鳴った。
「 70年、人間なら賢人となるべき年だ。わが党に合流し、ともに結党した兄弟たちとともに、先人の基礎をしっかり引き継いで行くことが、再び災禍を繰り返さないための道なのである。」と元大統領のコナン・ベディエ党首。
そう、この日アフリカで最も古い政党とされるコートジボワール民主党（Parti démocratique de Côte d'Ivoire: PDCI）が生誕70周年を迎えたのだった。
設立から実に70年、PDCIは植民地からの解放と独立。そして新生コートジボワール国家の建設のため、幾多の闘争を経てきた。そして今日、政権与党の一部を担うも、再びそのエネルギーを取り戻すための葛藤が繰り広げられる。
PDCIが誕生したのは1946年。のちに初代大統領、カリスマ的な存在となるフェリックス・ウフェ・ボワニーが、アフリカ民主会議（RDA）の場において設立した。当初、フランス共産党に傾倒するが、1950年に民主・社会主義抵抗連合（Union démocratique et socialiste de la résistance: UDSR)との連帯にに方向転換する。
象徴するのが1956年、フランソワ・ミッテランのRDAにおけるメッセージだ。「ご存じだろうか。もう何年にもわたり、私が議長を務めるUDSRはRDAの友人なのである。党の主催者とは個人的なつながり、友好関係、博愛を育んできた。」
1960年にコートジボワールは独立を勝ち取り、ボワニは初代大統領となった。一党制の中、栄華を誇るが、ほどなく行き詰まりに突き当たる。
1990年、冷戦構造崩壊の中、アフリカは複数政党制の導入に翻弄される。当時85歳で現職だったボワニ大統領は党の「ルネサンス」を訴えた。「党幹部は気づいている。わが党にはまったなしの断固たる改革が必要だ。」
1993年にボワニ大統領、つまりPDCI党首が逝去すると、コートジボワールは次第に権力闘争の時代を迎えていく。PDCIのアンリ・コナン・ベディエは、選挙により、差しあたりボワニの地位を継ぎ、大統領となった。当時現大統領のアラサン・ワタラとは政敵であった。
1999年のクリスマスイブ、ベディエはロベール・ゲイ将軍らのクーデターにより、フランスに亡命。混乱のなかで2000年にバグボ大統領が選挙で選出されると、PDCIは初めて下野を経験することになる。ベディエは2001年に帰国し、PDCI党首を再び務めるが、その後も2000年代には国家分断と混乱、和平プロセスが続く。
そして2010年10月、国際社会の圧力と監視のもと、バグボ大統領は選択の余地なく選挙実施が余儀なくされた。その結果、ベディエは第3位となり、PDCIの政権与党としての夢は再び費える。しかしベディエは事前の取り決めに基づき、ウーフェ主義民主平和勢力（RHDP）の名の下、アラサン・ワタラ候補の共和連合（RDR）を支援。ワタラ大統領が勝利した。
その後、バグボ大統領も当選を主張。二人の大統領が地位を主張する中、コートジボワールは2011年4月に向かって、選挙後危機と呼ばれる内戦が進行していく。
内戦が軍事的に収束したのち、2011年5月にワタラ大統領が就任。選挙協力により首相の地位が正式にPDCIに与えられる。そしてワタラ政権にはボワニ体制で豊富な経験を有するPDCIの実力派閣僚が名を連ねた。現首相のダニエル・カブラル・ダンカンをはじめ、危機からのV字回復、ワタラ政権への高い評価はPDCIによって支えられているともいえる。
ちなみにPDCIに対する選挙協力のもう一つの見返りは、アビジャンに建設された「第三の橋」。アンリ・コナン・ベディエ橋と名付けられた。
しかしPDCIの中には不協和音も生じてきた。特に2011年末の国民議会選挙。中選挙区総取り方式の選挙で、PDCIは大きく議席を失った。そして2015年の大統領選挙で独自候補を擁立しないのか、という疑念が党内にもはびこった。軟弱地盤の上で、9月のRDRとの統合も議論されつつある。党内には「PDCIの終焉」と危惧する声もある。
PDCIから見たコートジボワール史。政局は2011年の選挙後危機の状態で「冷凍保存」された状態だ。そして2020年に解凍されることになろう。アフリカで最も歴史ある政党、将来はいかに？葛藤は続く。
（おわり）
（ウフェ・ボワニ大統領、RFIウェブサイトより。）
いわく。
レストラン「エトワール・ドゥ・スッドゥ」。1946年に党が発足したゆかりの地、小さなレストラン。取り囲むように約12,000人が見守る中、ファンファーレが鳴った。
「 70年、人間なら賢人となるべき年だ。わが党に合流し、ともに結党した兄弟たちとともに、先人の基礎をしっかり引き継いで行くことが、再び災禍を繰り返さないための道なのである。」と元大統領のコナン・ベディエ党首。
そう、この日アフリカで最も古い政党とされるコートジボワール民主党（Parti démocratique de Côte d'Ivoire: PDCI）が生誕70周年を迎えたのだった。
設立から実に70年、PDCIは植民地からの解放と独立。そして新生コートジボワール国家の建設のため、幾多の闘争を経てきた。そして今日、政権与党の一部を担うも、再びそのエネルギーを取り戻すための葛藤が繰り広げられる。
PDCIが誕生したのは1946年。のちに初代大統領、カリスマ的な存在となるフェリックス・ウフェ・ボワニーが、アフリカ民主会議（RDA）の場において設立した。当初、フランス共産党に傾倒するが、1950年に民主・社会主義抵抗連合（Union démocratique et socialiste de la résistance: UDSR)との連帯にに方向転換する。
象徴するのが1956年、フランソワ・ミッテランのRDAにおけるメッセージだ。「ご存じだろうか。もう何年にもわたり、私が議長を務めるUDSRはRDAの友人なのである。党の主催者とは個人的なつながり、友好関係、博愛を育んできた。」
1960年にコートジボワールは独立を勝ち取り、ボワニは初代大統領となった。一党制の中、栄華を誇るが、ほどなく行き詰まりに突き当たる。
1990年、冷戦構造崩壊の中、アフリカは複数政党制の導入に翻弄される。当時85歳で現職だったボワニ大統領は党の「ルネサンス」を訴えた。「党幹部は気づいている。わが党にはまったなしの断固たる改革が必要だ。」
1993年にボワニ大統領、つまりPDCI党首が逝去すると、コートジボワールは次第に権力闘争の時代を迎えていく。PDCIのアンリ・コナン・ベディエは、選挙により、差しあたりボワニの地位を継ぎ、大統領となった。当時現大統領のアラサン・ワタラとは政敵であった。
1999年のクリスマスイブ、ベディエはロベール・ゲイ将軍らのクーデターにより、フランスに亡命。混乱のなかで2000年にバグボ大統領が選挙で選出されると、PDCIは初めて下野を経験することになる。ベディエは2001年に帰国し、PDCI党首を再び務めるが、その後も2000年代には国家分断と混乱、和平プロセスが続く。
そして2010年10月、国際社会の圧力と監視のもと、バグボ大統領は選択の余地なく選挙実施が余儀なくされた。その結果、ベディエは第3位となり、PDCIの政権与党としての夢は再び費える。しかしベディエは事前の取り決めに基づき、ウーフェ主義民主平和勢力（RHDP）の名の下、アラサン・ワタラ候補の共和連合（RDR）を支援。ワタラ大統領が勝利した。
その後、バグボ大統領も当選を主張。二人の大統領が地位を主張する中、コートジボワールは2011年4月に向かって、選挙後危機と呼ばれる内戦が進行していく。
内戦が軍事的に収束したのち、2011年5月にワタラ大統領が就任。選挙協力により首相の地位が正式にPDCIに与えられる。そしてワタラ政権にはボワニ体制で豊富な経験を有するPDCIの実力派閣僚が名を連ねた。現首相のダニエル・カブラル・ダンカンをはじめ、危機からのV字回復、ワタラ政権への高い評価はPDCIによって支えられているともいえる。
ちなみにPDCIに対する選挙協力のもう一つの見返りは、アビジャンに建設された「第三の橋」。アンリ・コナン・ベディエ橋と名付けられた。
しかしPDCIの中には不協和音も生じてきた。特に2011年末の国民議会選挙。中選挙区総取り方式の選挙で、PDCIは大きく議席を失った。そして2015年の大統領選挙で独自候補を擁立しないのか、という疑念が党内にもはびこった。軟弱地盤の上で、9月のRDRとの統合も議論されつつある。党内には「PDCIの終焉」と危惧する声もある。
PDCIから見たコートジボワール史。政局は2011年の選挙後危機の状態で「冷凍保存」された状態だ。そして2020年に解凍されることになろう。アフリカで最も歴史ある政党、将来はいかに？葛藤は続く。
（おわり）
