〈『新作能マクベス』が手元にも届きました。10年間の研究と実演の成果ですね!〉
つい先日、夜間の授業中に電話が入っていた。後で確認すると大城先生だ。作家の鋭い先見性に驚いたのは氏が『英語のマクベス能』についてお話したかったことである。シェイクスピアの作品がすでに何作かお能の形態で上演されている。日本語に翻訳されたシェイクスピア能があり、また英語の台詞によるシェイクスピア能もある。そのシェイクスピア能のプロジェクトに係わっている鈴木雅恵先生から送られた書籍とDVDをご覧になって意識を刺激された先生はそれを誰かとお話したかったのだろう。それでこちらに電話がきたということのようだった。
ちょうど西洋比較演劇研究会の会長で、イプセンの研究者として第一線で活躍されている毛利三彌先生から『辺野古』への行き方がわからない、というメールが来ていて来沖予定だったので、大城先生の疑問やテーマに沿って東西演劇についてお話する場を設けたいと先生をお誘いしたら、了承された。沖縄の作家で西欧を取り込んだ感性を作品の中に折り込ませた作品は少ないのだろうか?視点が違うが、お能や歌舞伎、近現代日本演劇について英語でお話をし、かつ演出(実演)でイプセン劇を世界に発信する毛利先生である。
人形の家のノラを中心に「二人のノラ」をお能形式の舞台でノルウェーと日本で上演もされている。それゆえに大城先生はとても興味深くご自分の新作能のお話もされた。かの玉三郎が主役の「聞得大君誕生」のお話なども。お能と歌舞伎の位相の違いなども話題に上った。
沖縄芸能に携わる芸能者がどれだけ反面鏡としての西洋を取り込んでいるかというと、高齢の大城先生の右に立つ方がほとんどいない、という状況?は寂しい沖縄である。
21世紀、東西演劇の諸相〈止揚へ〉、琉球弧の可能性のテーマで国立劇場沖縄を軸に、「伝統と現代&東西演劇」のシンポジウムでも企画してみたいものだがー。
「新作組踊」も「新作能マクベス」のような多言語で映像化できたらいいね。国立劇場おきなわも是非この大城先生を感動させた研究書(DVD付き)を買い求めて欲しい。拓かれ深められていく舞台芸術ですね。