志情(しなさき)の海へ

琉球弧の潮風に吹かれこの地を掘ると世界と繋がるに違いない。世界は劇場、この島も心も劇場!貴方も私も劇場の主人公!

那覇市文化芸術劇場「なはーと」企画制作グループ長、林立騎(はやしたつき)さん~?

2023-01-18 02:56:19 | 沖縄演劇
昨今、「なはーと」小劇場で現代演劇公演の後、よくアフタートークがなされている。その時、決まって司会者として舞台上に登場している気になる男性が林立騎さんである。この間見慣れなかったこの人物は一体何者?と思ってネットで調べてみた。
 去年の復帰50年記念現代沖縄演劇三公演のときのアフタートークも、また「人類館」の公演のアフタートークでもなぜか林さんが司会で舞台上に登場していた。なぜ?と興味を持っていた。

アフタートークの司会としての林さんのトークはなかなか知的で、いいセンスだと感じた。こんな理知的に細やかに語れる演劇人が沖縄にいたのか、と関心を持ったのだが、生粋のウチナーンチュではなかった。今回偶然林さんの名前で検索してみて公にされたデータを拝見して納得した。ドラマトゥルクとしてドイツでも経験を積んだ方だったのだ。なるほどだった。劇場空間だけではなくアートや音楽も含め総合的な文化創造発信の空間・場としてのなはーとを企画運営している敏腕なドラマトゥルクである。

県内で林さんのような優れた企画制作を継続してやっている人材は、宜野座村のガラマンホールの企画制作主任の小越友也よりほかに見いだせない。現在この優れた小越さんが今だに「がらまんホール委託管理責任者」として、この間の数々のグローバルなアーティストを招聘して公演を続けてきた実績を鑑みるに、もっとふさわしいステイタスを宜野座村は与えるべきではないかと思うのだが~。いわばガラマンホールの芸術監督の役割である。あるいはアートマネージャー(多様な文化芸術活動を支え、新しい表現行為を引き出す存在) 、企画制作主任になるだろうか。林さんのようなドラマトゥルク
(舞台芸術を進化/深化させる者)の責務である。林さんが生粋のウチナーンチュでないように、小越さんも琉球大学を卒業してウチナー婿になった他府県人だ。

どうも成功した沖縄の舞台公演のプロデューサーはACOの下山久さんを筆頭に、他府県から来沖した方々が目立っている。観客のキャパが少ない割に、民俗芸能、伝統芸能、そして現代演劇やバレーを含めたダンス、声楽、クラシック、ジャズ、ロック、レゲーなどを含めコンサートなどが多い沖縄である。沖縄芸大のアートマネージメント養成の質が問われるのだろう。そのためには狭い沖縄内だけではなく、中央のパフォーミング界や欧米、近隣の韓国、中国、台湾、フィリッピン、シンガポール、インドなどのアジア諸国のパフォーミングの現場とのリンクが求められる。

香港の演劇人は新作を香港で公演したらすぐにカナダやアメリカ英国などへ飛んでいって公演するのだと、以前香港の著名な劇作家兼演出家のダニーユン(ダニー ユンとは? 意味や使い方 - コトバンク)さんの舞台を香港で観てわかったのだけれど、世界の演劇人を沖縄に呼び込む、あるいは沖縄の現代演劇を、伝統芸能を世界に発信していく底力をさらに力強い形態に持っていくのは、下山さんの沖縄での経験をもっと共有する必要があるのかもしれない。国際的なパフォーミング・アーツの組織とのリンクももっと必要に違いない。あるいは、以前真喜志康忠氏が話していたけれど、真に沖縄の芸能やパフォーミングが優れていたらこちらから飛んでいかなくても、彼方からやってくるはずだという持論が思い出される。

あるいは世界を股にかける韓国の超人気のノンバーバルミュージカル NANTA(ナンタ) のプロデュースのノーハウを学ぶことも必要かもしれない。勝連の肝高の阿麻和利は、すでにその波に乗っているとも言えそうだ~。

林さんが「なはーと」で実践している様々な企画は次の世代にバトンタッチされていくのだろうけれど、大学のアート・マネジメントもまた林さんや小超さんの経験が生かされる分野である。

いまや総合芸術は、美術、音楽、演劇、映像を包摂してカレイドスコープ。文化庁は沖縄固有のパフォーミング・アーツへの応援を惜しまない体制にある。どう活かしていくか、世界を俯瞰した複眼の視点で沖縄の肝心満載の作品や舞台がどんどん、想像の翼を広げ創造され、世界の平和な輪に貢献してほしい。生涯現役で多様に表現者として、繋がり合う世界でありたい。良く生きるとは良く演じることだという名言がある。障害があっても、表現できる。ベッドに寝ていても歌える空間には笑みがこぼれる。生きる喜び、感動がはじける芸術の力は尊い。老人は集団自決を、ではなく、老人の感性を知恵を経験を活かしていく社会でありたい。

故蜷川幸雄さんが2006年に50歳以上の団員からなる「さいたまゴールド・シアター」を立ち上げたことが思い出される。

林立騎さんのProfile:
1982年新潟県栃尾市生まれ。2019年よりドイツ・フランクフルトの公立劇場キュンストラーハウス・ムーゾントゥルム企画学芸員(ドラマトゥルク)。翻訳者、演劇研究者。訳書にエルフリーデ・イェリネク『光のない。』(白水社、第5回小田島雄志翻訳戯曲賞)、ハンス=ティース・レーマンとマティアス・ペースとの共編著に『Die Evakuierung des Theaters』(Berlin Alexander Verlag)、翻訳にレーマン「ポストドラマ演劇はいかに政治的か?」、ベルト・ノイマン「ノイズ」等。2005年より高山明の演劇ユニットPort Bに、2014年より相馬千秋のNPO法人芸術公社に参加。2012-14年アーツカウンシル東京調査員(伝統芸能分野)、2014-19年東京都港区文化芸術サポート事業評価員、2014-17年東京藝術大学「geidaiRAM」ディレクター、2017-19年ロームシアター京都リサーチャー、2017-19年沖縄県文化振興会プログラムオフィサー。現在那覇文化芸術劇場なはーと企画制作グループ長 。

★以下のサイトはリンクはできないようです。直にPerforming Arts Network Japanで検索してみてください。林さんのこの間の芸術活動の実績がインタビュー形式で公開されています。Presenter Interview (2021)です。

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