４月から「国立劇場おきなわ」の芸術監督として嘉数道彦さんからバトンタッチする金城さん、大きな期待を背負った33 歳です。34 歳かな?
思いがけない電話があり、急遽新報ホールに、浦添のバークレーから向かいました。間に合って良かったです。
会場はほぼ満杯で、琉球新報社の芸術・芸能文化を支える新報アートルネサンスのバックアップがいい集客になったのでしょうか。
古典と雑踊りの独演。軽みと、丁寧さを感じたのだが、内から湧き出る情感、身体と精神が凌ぎあうハットさせられるモメント、には出会えませんでした。例えば新垣悟さんの女踊りにはハットさせられた事があります。
可愛いらしさが、勝っていました。佐辺良和さん、宮城茂雄さん、新垣悟さん、大湾三瑠 さんから滲んでくるものがないのですね。何が足りないのだろうか。表情が一面的なのだろうか、などと思いながら、観ていました。雑踊りの独演は、踊りをよく選択しなければです。玉城盛義創作の江佐節はいい雑踊りですね。男性舞踊家数人で踊る舞台を見たいものです。
玉城流扇寿会家元、谷田嘉子、金城美枝子さんの期待の深さが感じられます。4歳から舞踊に取り組んだ若い才能が、若くして花開いたのですね。
第二部で、地謡のみなさんの古典音楽斉唱がありました。松竹梅です。
太い声音が印象的でした。個人的には上間克美さんや中村逸夫さんの声音に魅了されたことがあります。人間国宝の照喜名朝一さんや西江喜春さんの声音（声質）は仲風とか述懐とか、すごいですね。
金城真次さんの所属に「琉球歌劇保存会」が書かれていないけれど、略歴の中には最後に2020年、沖縄県指定無形文化財「琉球歌劇」保持者認定 と記されています。30代で保持者です。おそらく日本の伝統芸能の中ではじめてでしょうか。県の文化財課に32 歳の伝承者を保持者に推薦した当時の歌劇保存会会長・吉田妙子さん、副会長・久高将吉さん、同じく副会長・平良進さんは、『歌劇保存会』の停滞状況に、このままでは国の無形文化財指定に一歩も踏み出せないと腹を括ったのでしょうか。しかし、4歳から舞踊を始めたとは言え、40歳になるまで待っても良かったと思います。
3、４歳から舞台に立って30年継続して舞踊や他の芸に邁進すると「琉球歌劇保存会」の保持者になれる規約になったようです。この間記載されていた40歳以上の規約を取っ払ったようですが、実際どうでしょう。
沖縄県は各伝統芸能団体からの推薦をそのまま審議することなく、認定するのだという事がわかりました。事務的に処理をしていることになります。そこで審議はないのですね。あるとしたらどんな審議でしょうか。この結果が沖縄の文化行政だということです。これでいいのかな？「沖縄芝居研究会」（代表伊良波さゆきさん？）のパートナーとして精力的に歌劇公演に頑張っているのは素敵ですが～。
金城さんが出演した舞踊や組踊、そして琉球歌劇の数々のスナップが並べられています。つまり32歳で歌劇保存会の保持者になるには十分すぎる実績を提示しているようです。ご本人も、自信と自覚をお持ちですね。新報社も応援です。
写真を見て思ったは、舞踊を見て思った事と重なりました。同じ表情に見えます。役柄によってメイクもイメージも雰囲気も変わるはずですが、金城真次さんはどちらかというと童顔で、愛らしい美少年です。その表情も、そこを抜けきっていない風情に見えます。そこは金城さんの長所であると同時に、身体性のもつ負の部分にもなっているようです。
例えば、雑踊の「浜千鳥」など愛らしい少女の雰囲気で、素の軽やかさでいいのですが、地に足が着いていないような、不安定さをかもしているのです。なぜだろう。たとえば乙姫劇団の団長だった上間郁子が雑踊りを独演したあの軽やかな重みを出しようがありません。雑踊りをソロ（単独）で踊るのはかなりの経験を踏まないと、安定感がないのかもしれませんね。数人で踊るなら別ですが～。
「花風」は別格です。古典女踊りが独演になったのは、「花風」の後だと見ています。
以上、一応観た舞台について備忘録としてUPしておきます。もちろんこの印象は個人的なもので、中には高く金城真次さんの芸の質を評価する方もいるでしょう。30代の金城さんが「琉球舞踊保持者」になるには後20年必要かと思います。歌劇の保持者になるにも、少なくとも後10年見たかったです。
沖縄芝居（琉球史劇や琉球歌劇）が危機的な状況にあるという事かもしれませんね。50代から70代の伝承者を大事にし、活かすことのできない『保存会』の問題も逆照射しているのかもしれません。
以下は琉球新報芸能担当記者の記事です。
写真は嘘をつかないでしょうか。金城さんの踊りはどこか自信なさげに見えます。かせかけは良かったですね。
