志情(しなさき)の海へ

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難渋する結婚ーー沖縄・沖縄系作家たちの移民小説  仲程昌徳

2011-01-18 22:37:02 | 表象文化/表象文化研究会
博士課程後期の授業の一つで仲程先生のご指導を受けている。氏の凄さがわかる。膨大な資料を逍遥され多くの書物に研究の成果(実のり)をすでにまとめられている方である。琉球大名誉教授。寡黙に見える方だが、そのご研究の視線の鋭さ、原民喜の研究をされ、小田切秀雄の教えを受けた氏はまた仲宗根政善氏の教えを受けられている。この授業の中で仲程氏は二つのご自分の論稿をご紹介してくださった。作品を見る視点、切り込む術を教えてくださったのである。

【「ひめゆりの塔を巡る人々の手記」を読む】と【難渋する結婚】である。どう作品を読み込むか、分析するかその方法論のあり方を教えていただいた。そして昨日は【難渋する結婚】である。その論文の冒頭、イントロでは山之口獏の[結婚」の詩や、【思弁の苑】、そして自伝作品【ぼくの半世記】を取り上げる。山之口獏がいかに結婚したがっていたかを読み解く。獏が多感で恋多き少年だったことが自伝からわかるが、仲程は彼が東京に出る事によって[結婚」願望の詩が多く書かれた、それは東京に移動することによって結婚が地元沖縄にいるより難しかったからだと、書く。それが導入であり、獏よりもさらに沖縄を離れた人たちの結婚の難渋さについて例えばジョン・シロタの「レイラニのハイビスカス」「ラッキー・カム・ハワイ」を次に取り上げる。

結婚の視点からヤスイチとレイラニの結婚を見ていくのだが、カナカへの沖縄人の差別意識、また広島系を中心とする日本人からの差別構図を浮き彫りにする。また「ラッキー・カム・ハワイ」でもグスダ家の結婚問題が大きなテーマである。移民にとって結婚が生易しいものではなかったことが明らかになる。真珠湾攻撃という時勢の動きも笑劇のように描いているが、ジョン・シロタが最も切実に描いたのは結婚にともなう人間と人間の関係性だという仲程の指摘は納得がいく。

さらにハワイの耕地労働者たちについて書かれた小説「ジャガス」を取り上げる。そして永井荷風の「アメリカ物語」、女がいないなかで女を巡るトラブルは駆け落ちなど、さまざまな物語を生み出したことが推測できる。

ハワイにおいて沖縄人は日本人扱いされなかった。太平洋戦争に至る前にすでにアメリカはハワイの沖縄人や日本人について、社会学的調査をやっていたのである。それを心理的にうまく両者を離反させるよう仕組んだ。仲程氏の論はさらに外間勝実の作品、比嘉太郎編著『移民に生きる』も取り上げる。そして『ハワイ夜話』も。写真花嫁の問題の哀歓が語られる。「ラッキー・カム・ハワイ」のツルのように娘キミコの相手はウチナーンチュであれば十分だったのである。

移民にとって結婚は難渋な問題だった。それを沖縄・沖縄系作家は多く書いた。恋愛・結婚相手がハワイアンや白人になったのはジョン・シロタの「レイラニのハイビスカス」や「ラッキー・カム・ハワイ」からである。それ以前、移民における沖縄(系)人にとって結婚は、結婚のことで頭が一杯であった獏以上に頭を悩まさざるを得なかった。

循環してこの論稿は終わっている。見事である。多くの作品を取り上げ、所定のテーマを浮き彫りにしている。
ああ、わたしもこんなに道筋のしっかりした論稿を書きたいものだ!仲程昌徳先生どうもありがとうございます!あなたとの出会いは今後、わたしの人生の中でとても貴重なものになるにちがいありません。

今年は資料収集に専念しよう!そして課題テーマをまとめること!やれやれ、逃げられませんよ!

<1月18日のオオゴマダラのさなぎ>

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