なりとろ日誌

なりとろの『考え』を色々書いていきます。 更新はクダクダです。

牧冬吉

2010年02月03日 18時39分00秒 | 
『とっぴー!』

なりとろの声が、まだ薄暗い早朝の町に響き渡った。

顔色は無く、引きつった表情は切迫した状況を物語っていた。


帽子が脱げているのにも知らず、すれ違う人の怪訝な表情にも全く気付かず、たた、行方のわからなくなった愛犬の姿を捜し、走り回った。


今来た道を戻り、今日も歩くはずだった散歩道を追い掛けるように走り、それでもとっぴーの歩いた痕跡、影を見つけだすことは出来なかった。



『コノママ、アノコハカエッテコナイノデハ…』



よからぬ想像も頭をもたげだしてきた。

そんな事、あってはならない、あってたまるか!


弱気な気持ちを打ち消そうと、わざと声に出してみる。

だけど、とっぴーが見つからない現実は、なりとろに重くのしかかっていた。




探し始めて5分も経った時、少し冷静にならなければいけない事に気付く。
見つからないまま5分が過ぎた焦りも勿論あるが、このままやみくもに走り回っているだけでは見つからない気がしたのだ。


とりあえず、一度家に帰ろう。
傍らに抱き抱えているジョイが居ては自由がきかないし、家に帰れば自転車で効率よく広い範囲を探せる。

そう決めてすぐに、なりとろは家に向かって走りだした。


家が見える角を曲がると、予期せぬ光景が目に飛び込んできた。


玄関先でクンクン臭いを嗅いでいる白い影……。


間違いない!間違えるものか!
あれはとっぴーだ!!


4キロちょっとの、ホワイト&ブラウンの毛色の、お尻を触ると噛む、ウンコは世界一臭い、間違いなくとっぴーだ!


絶対に牧冬吉では有り得ない!



『とっぴー!!』



捜し回った時に叫んでいた声に負けないくらいの大きな声で、なりとろはとっぴーを呼んだ。

そして抱きつき、大きな感動の瞬間に、噛まれた。



本気噛みじゃないのに、なりとろは痛みを感じずにはいられなかった。

とっぴーを失わなかった安堵より、危険にさらしてしまった後悔、反省のほうが大きかったから………。
コメント (3)
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